文/鈴木拓也
家族の一員である大切な愛猫。
キャットフードばかりでなく、時には手作り食も食べさせたいと思うのが、飼い主の人情というもの。
ただ、試しに作ってみても、まったく口にしてくれなかったり、栄養的に問題がないか不安になるなど、悩みは尽きない。
そんな悩みを持つ方におすすめしたいのが、書籍『獣医師が考案した長生き猫ごはん 安心・簡単・作り置きOK!』(世界文化社)だ。
本書は2人の獣医師が、ゼロから始める人、やってみたけど挫折した人たちに向けて書いた猫ごはんの入門書。基本的な話から猫の栄養管理、そしてレシピと内容は豊富。その一端を紹介しよう。
3段階で慣らしていく
猫は、食べ慣れたものを好み、食についてはあまり冒険をしない。そのため、いきなり手作り食を与えても、無視されることが多い。
このハードルを越えるために、著者がすすめているのが「HOP・STEP・JUMP方式」だ。
これは、3段階に分けて、徐々に手作り食のウェイトを高めるというやり方。最初のHOPでは、「いつものフードに肉、魚の量(かさ)を決め、野菜、炭水化物を足していく」。分量的には、ほんの少量。つまり、トッピング程度から始めて様子を見る。同時にこの段階では、肉と魚のどちらが好きか、どんな野菜なら好むかなど、嗜好を見極めていく。
感触をつかんだら、市販のキャットフードを減らし、手作り食を増やす。これがSTEPの段階となる。
それを経てJUMPでは、ほぼ手作り食へと移行。そして、メニューのバリエーションも増やしていく。
HOPで1週間、STEPで1週間とあるが、これは目安。猫の様子に応じて、期間は延ばしてもかまわない。
手作り食を与え始めてもいいのは、STEPから。多くのレシピの土台となる、基本食の作り方は以下のとおり。
1. 野菜と水(180~200ml)を鍋に入れる。
2. 野菜が煮えたら、ご飯を加える。ご飯が指で簡単につぶれるまで煮込む。
3. 肉や魚を加えて、煮えたら、冷まして完成。
1食ずつにフリーザーバッグに小分けし、冷めたら冷凍庫に保存する(1週間で使い切る)。また、にこごりにすることもできる。寒天4~6gを水で溶かし、2分沸騰させたら粗熱を取り、具が均等になるように整える。この場合は冷蔵保存とし、2~3日で使い切るように。
冬に最適な鶏肉レシピ
本書には、薬膳の考えを取り入れた季節に合わせたレシピ集もある。
今の寒い時期にぴったりなのが、鶏肉を使った以下のレシピ。体重3kgの成猫で1日分(2食)となる。
【材料】
・鶏もも肉:90g
・鶏ハツ:10g
・にんじん:10g
・かぶ:10g
・かぶの葉:10g
・ご飯:5g
・亜麻仁油(オリーブオイルで代用可):小さじ1
作り方は、前節で紹介した基本の手順に沿うが、ご飯、かぶ、にんじんを入れてから、かぶの葉を加える。その後、肉類を加えて最後に亜麻仁油をかけて完成という手順。
飼い主とシェアする「おすそわけ」レシピも
飼い主が食べている食事を分け与える、いわゆる「おすそわけ」のレシピもいくつか収載されている。
その1つが水炊き鍋。
【材料(1人+1匹分)】
・鶏もも肉:150g
・水菜:1束
・にんじん:1/4本
・しめじ:1/4袋
・白菜:1枚
・豆腐:1/4丁
・だし汁:適量
【作り方】
1 具材を鍋に入れ、煮込む。水菜は火が通りやすいため、最後に入れる。
2 ニャンコ分を取り出し、細かく刻む。飼い主はポン酢しょうゆやごまだれで食べる。
おすそわけを与えるのは、あくまでも「たまに」の頻度にとどめておく。毎日これだけでは、栄養が不足してしまうからだ。飼い主とのコミュニケーションが目的である点、肝に銘じておこう。
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著者は、飼い主が気をつけるべき3カ条を唱えており、その1つが「食べなくてもがっかりしない!」。食材の切り方や容器など、ちょっとの違いが食べる食べないの境目となるそうで、この匙加減はいささか難しいかもしれない。ただ、「なぜ今まで手作りにしなかったのかと後悔」(本書の体験者談)との言葉に象徴されるように、気長にやってみる価値はある。その手引きとして、本書はとても役立つはずである。
【今日の愛猫の健康に良い1冊】
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)で配信している。