文/小林弘幸
「人生100年時代」に向け、ビジネスパーソンの健康への関心が急速に高まっています。しかし、医療や健康に関する情報は玉石混淆。例えば、朝食を食べる、食べない。炭水化物を抜く、抜かない。まったく正反対の行動にもかかわらず、どちらも医者たちが正解を主張し合っています。なかなか医者に相談できない多忙な人は、どうしたらいいのでしょうか? 働き盛りのビジネスパーソンから寄せられた相談に対する「小林式処方箋」は、誰もが簡単に実行できるものばかり。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説します。
【小林式処方箋】買い換える。
カバンの整理=コンディションを整える
「あれ、どこだっけ?」とカバンをごそごそやる。誰しも、そんな経験があるのではないでしょうか。
でも実は、「カバンの中を探す」という些細な行為が、自分の自律神経を大いに乱しているとしたら、どうでしょう?
実際、焦った瞬間、交感神経は跳ね上がり、血流が悪くなります。集中力も低下し、その後のパフォーマンスも期待できません。
大事なクライアントとの打ち合わせの席で、「あれがない!」と慌て、結果見つかったものの、その後の打ち合わせがうまくいかなかった……。
こうした経験、ありますよね? そう、うまくいかなかったのは、交感神経のせいだったのです。
あるいは、タクシーでクライアントの会社に向かった際、降りる時に財布からお金やカードをすぐに取り出せずにもたもたしてしまい、上司を待たせたりして焦ってしまった。
思い出してみてください。こんな日も、その後の仕事のパフォーマンスに支障をきたしていたはずです。
このような事態を未然に防ぐためにも、日頃からカバンの中身を整理するほかありません。その手順は次のようにしてみてください。
1.カバンの中身を全部出す
2.必要なものと必要のないものにわける
3.必要のないものは処分する
4.必要なものは、用途ごとにポーチなどに小分けにし、すぐに取り出しやすい状態にしてカバンにしまう
こうした手順で、今すぐにでもカバンを整理してください。いかに必要のないものをカバンの中に押し込んでいたか、驚くかもしれませんね。
整理できていないカバンや財布を使っている時点で、自律神経から見れば、スタートラインに立てていなかったのです。マイナスからのスタートを強いられているわけですから、仕事がうまくいくはずがありません。
カバンの整理=コンディションを整える、ということなのです。ビジネスパーソンの基本中の基本と言ってもいいかもしれません。
ビジネスツールは目的意識を持って選ぶ
問題は、「いくら整理してもうまくいかない」時です。
多くの場合、その人に問題があるというよりは、カバンや財布に問題があると考えたほうがいいでしょう。そもそも、使いやすいカバンを使っているのか。まずはここをきちんと確認すべきです。
「自分はなぜこのカバンを使っているのか」ということをきちんと言葉にしてみるのがいいでしょう。
仕事のどんな場面で必要なのか。最低限、何を入れないといけないのか。優先すべき条件は何か。大きさ、深さ、ポケットの数や位置……。
こうしたことを把握した上で、あなたはカバンを購入したでしょうか。値段やデザイン、ブランドで、カバンを選んでいないでしょうか。
カバンや財布は、ビジネスパーソンにとっては大事な仕事道具です。職人が、道具にこだわりを持つのと同じように、「使いやすさ」「使う目的」という観点から、ベストのカバンを選ばなければなりません。
もし、現在そうでないなら、すぐに買い換える。これが仕事でベストパフォーマンスを発揮するための秘訣です。
選ぶ際は、「他の人に説明できるか」ということを意識するとうまくいくでしょう。
「私はこういう理由で、このカバンを選びました」
と言えるかどうか。あなたの中の目的意識が明確かどうか、ということを自分に問うてみてください。ここの軸が自分の中にしっかりあるならば、きっとうまくいきます。
目的意識を持つことは、他の持ちもの選びにも応用できます。
ペンケース、メガネケース、携帯カバー、名刺入れ、財布……。身の回りの品々は、最適化されていくことでしょう。
例えば私は、「カバンの中から探しやすいこと&取り出しやすいこと」を財布の第一条件としているので、黄色い財布を使っています。すぐに探し出せるので、「見つからない!」というストレスがありません。
持ちものが最適化され、あらゆる場面での動きが快適になれば、つまらないストレスからは解放されるでしょう。
そうすれば、確実にあなたの自律神経は整います。結果として、仕事へのモチベーションや集中力もアップするのです。
『不摂生でも病気にならない人の習慣』
小林弘幸 著
小学館
定価 924 円(本体840 円 + 税)
発売中
文/小林弘幸
順天堂大学医学部教授。スポーツ庁参与。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。また、日本で初めて便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」でもある。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説した『不摂生でも病気にならない人の習慣』(小学館)が好評発売中。