【ひと皿の歳時記~第120回】
滋賀・長浜市余呉町『徳山鮓』の熊鍋
日本最古の「すし」は琵琶湖周辺近江の「鮒ずし」です。ごはんの上に魚をのせ、時間をかけて発酵させた保存食品です。
この伝統を受け継ぐのが、滋賀県の最北部、琵琶湖の北端に位置する長浜市余呉(よご)の『徳山鮓』(とくやまずし)です。余呉は小さな余呉湖を擁しており、『徳山鮓』はこの余呉湖のほとりにあります。四季に応じて、山菜、鮎、鰻などを美味しく調理してくれる宿付きの料理店です。
12月、1月、2月のジビエの季節には、鹿、猪、熊がいただけます。中でも、熊肉を出汁にそっとくぐらすだけでいただく「熊鍋」は想像を絶する美味しさです。
見た目は脂身だらけですが、鍋の中でしゃぶしゃぶにして、刻んだ葱と一緒にいただきます。赤身はベルベット、脂身はシルクのような舌触りで、その品の良いこと! 口の中で瞬時に跡形もなく消えてしまいます。
この熊肉をいただくと、刺しの入った霜降りの牛肉は人間に媚びを売っているように思えてなりません。そもそも熊の肉質が良いのか、その熊を仕留めたマタギ(猟師)の腕が良いのか、味わうだけの私にはよくわかりませんが、『徳山鮓』で味わう「熊鍋」は、自分史上最高の食肉と言っても過言ではありません。
このほか、余呉湖で釣れるワカサギのてんぷら、森のジビエのテリーヌ、鹿の刺身なども登場します。
上写真の「さばの熟(な)れずし」はトマトソースとチーズのカッチョカヴァーロを添えるというアイデアが実を結んで、熟れずしの味わい深さを一層引き立てていました。次は夏に訪ねて、大鰻をいただこうと思っています。
店舗情報
店名 | 『徳山鮓』(とくやまずし) |
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住所 | 滋賀県長浜市余呉町川並1408 |
TEL | 0749-86-4045 |
営業時間 | 昼12:00~14:30、夜18:00~21:00 ※予約制 |
定休日 | 不定休 |
URL | http://www.zb.ztv.ne.jp/tokuyamazushi/ |