【私のお気に入り~第108回】
京都『草喰 なかひがし』
京都の北部、花背(はなせ)出身の中東久雄さんが、銀閣寺近くで開いている『草喰 なかひがし』は、野菜や山菜を愛おしく調理することで知られています。
2月は根菜の季節ですが、野を歩くと、すでに野菜が芽吹き始めているそうで、その芽を摘んで料理に「早春」を添えています。若い野菜のみで作ったスープは、出汁がなくても野菜の甘みが滋味として伝わってきます。
ポン酢の泡で覆われたひと品は、泡の下には鯉のお造りが野菜と一緒に「春」をのぞかせています。まるで、雪間の春をお楽しみください、といった感じです。まだ厳寒の2月ですが、土の中はすでに春がやってきているのですね。
そんな『草喰 なかひがし』の名物のひとつに、めざしとごはんがあります。「メインディッシュでございます」と言って、炭火で炙っためざしと炊き立ての土鍋御飯が供されます。
それまでの料理に出てきた葱があまりにも香り高く、甘みにあふれていたので、ご主人にねだって、その葱を今一度、炭火で焼いていただきました。炭火で焼いた葱を御飯の上にのせ、フリーズドライの粉末醤油を振りかけていただきました。この「葱御飯」の、上手いの、なんの!
食事の最後は、3週間ほど前に作られた水出しコーヒー。まるでシェリーを注ぐような手さばきで、小ぶりなグラスにコーヒーを注いでくださいます。このコーヒーの後味がよく、『草喰 なかひがし』の料理を見事に締めくくってくれます。
住所/京都市左京区浄土寺石橋町32-3
電話/075-752-3500
営業時間/12:00~13:00(L.O.13:00)、18:00~19:00(L.O.19:00)
定休日/月曜日 ※月末の火曜日も定休日