パンはワインの最高の友。そのままでも充分つまみになるが、ひと手間かけた具をパンにのせる“ブルスケッタ”に仕上げると、さらなるおいしさに出会えること、間違いなしだ。

「パンは5mm厚さが鉄則。具は旨みと塩味を効かせ、たっぷりのせます」
●教える人 西野文也さん(『チェスト』店主)

「パンがあればワインは飲める」といわれるのは、パンの風味がワインの複雑味によく合うからだ。ならば、パンにプラスαをすれば、さらなるおいしさに出会えるのでは? 話題のパン店『チェスト』の店主であり、パン飲み文化の立役者でもある西野文也さんに、ワインが2倍楽しくなるパンつまみを教わると、「パンの存在感を薄めることが重要」と、思いがけない言葉が出た。
「パンは5mm厚さに。それ以上だと主食になり、おなかがふくれてワインが進まなくなります」
つまみは軽やかに仕上げるのが基本。合わせる具に酸味や旨み、塩気でアクセントをつけるのが西野さんのスタイルだ。一口でかみ切れるのも信条で、白魚はねっとりするまで混ぜ、菜の花はクタクタになるまで煮る。レバーは至福の口どけで、煮込みはトロトロの柔らかさだ。パンにのせ、気軽に手でつまんでワインを一口。心と体がやわらぐ、晩酌の始まりだ。

●チェスト
住所:東京都江東区平野1-11-12
電話:なし
営業時間:12時〜18時
定休日:水曜、木曜
“パンつまみ”に使うパン
バゲットやフォカッチャ、カンパーニュなど好みのものでOK。5mm厚さに切り、具をのせる前にカリッと焼くと小麦の香りと風味が立つ。

【菜の花のクタクタ煮】
菜の花のほのかな苦みとチーズの旨みが、小麦の香ばしさと見事に融合。スパークリングワインが進む、春のつまみだ。
●材料(3個分)
バゲット(5mm厚さに切る) 3枚
菜の花 200g
★水 400ml
★バゲット 20g
★塩 6g
パルメザンチーズ(すりおろす)・黒胡椒(粗挽き)・エクストラバージンオリーブオイル 各適量
●つくり方
1.菜の花は根元の硬い部分を切り落とし、フライパンに入れる。★の材料を加えて蓋(ふた)をし、強火にかける。煮立ったら菜の花の上下を返して中火にし、蓋をして5分間煮る。蓋を外し、木ベラなどで菜の花と★の材料のバゲットをつぶしながら約10分間煮詰める。
2.バゲットはオーブントースターで表面をカリッと焼き、1を等分にのせる。パルメザンチーズと黒胡椒をふり、オリーブオイルを回しかける。
【白魚とレモン】
ねっとりした白魚がレモンの酸味で軽やかに。にんにくと胡麻の風味が味に奥行きをつくっている。
●材料(3個分)
バゲット(5mm厚さに切る) 3枚
白魚(しらうお・刺身用) 80g
レモン 1/2個
にんにく 1/2片
塩 ひとつまみ(1g)
白胡麻・黒胡椒(粗挽き)・エクストラバージンオリーブオイル 各適量
●つくり方
1.ボウルに白魚と塩を入れ、粘りが出るまでスプーンでぐるぐると混ぜる。レモンは皮を薄くそぎ、身はくし形に切る。※白魚は部分的につぶし、食感の違いを出す。
2.バゲットはオーブントースターで表面をカリッと焼き、片面ににんにくの切り口をすり込んで香りを移す。1の白魚を等分にのせ、レモンの皮を散らす。白胡麻と黒胡椒をふってオリーブオイルをかけ、レモンの身を添える。食べるときにたっぷり絞る。
【レバーパテ】
口当たりが滑らかなレバーは、一口食べて虜になる甘じょっぱさ。ココアパウダーの苦みが心地いいアクセント。

●材料(つくりやすい分量)
鶏レバー(ハツ付き) 1㎏
玉ねぎ 2個(500g)
★バター(食塩不使用) 200g
★レーズン 200g
★アンチョビペースト 20g
塩 適量
赤ワイン 100ml
オリーブオイル 適量
バゲット(5mm厚さ) 3枚
ココアパウダー 適量
●つくり方
1.玉ねぎは繊維に沿って薄切りにする。レバーはハツを切り離して分ける。レバーは一口大に切り、ハツは二等分にして血の塊を取り除く。レバーとハツに塩10g(レバーの重量の1%)を両面に振る。
2.フライパンにオリーブオイルひと回しを注いで中火にかけ、玉ねぎを入れる。塩ひとつまみを加えて焼きつけるように炒め、全体が色づいてトロッとするまで火を通して取り出す。
3.2と同じフライパンにオリーブオイル少々を加えて中火にかけ、1のハツを並べ入れる。両面をこんがりと焼いたら端によせ、空いた部分にレバーを並べ入れる。焼き色がついたら上下を返し、全体を混ぜながら赤い部分がなくなるまで炒める。赤ワインを注ぎ、アルコール分と水分をとばしながら軽く煮る。
4.フードプロセッサーに2の玉ねぎと3のレバー、★の材料を入れ、つやが出てねっとりするまで撹拌する。保存容器に移し、粗熱が取れたら冷蔵庫で3時間以上なじませる。
※冷蔵庫で約4日間保存可。つくりたてはレバーのフレッシュ感が楽しめ、1日置くと塩味がなじんでまろやかになる。
5.バゲットをトースターで軽く焼く。4のパテを適量塗り、ココアパウダーをふる。
ポイント
玉ねぎの焼き色はまだら状態でOK。焦げた部分も旨みになる。

レバーとハツは焼きすぎるとパサつくので、両面に焼き色をつけたらワインの蒸気で中まで火を通す。

【豚スペアリブの煮込み】
トロトロに煮込まれた豚肉は、濃厚な旨みに野菜の甘みが溶け込み、驚くほどあとを引く。肉汁がしみたパンが、またおいしい! 赤ワインを呼ぶ、食べごたえ満点のつまみだ。

●材料(つくりやすい分量)
豚スペアリブ 500g
【ソフリット】にんじん・セロリ・玉ねぎ 各80g
【ソフリット】にんにく 1片
ローズマリー(生) 1本
赤ワイン 約250ml
塩 適量
小麦粉 適量
オリーブオイル 適量
カンパーニュ(またはフォカッチャ/5mm厚さ) 1枚
黒胡椒(粗挽き)・パルメザンチーズ・エクストラバージンオリーブオイル 各適量
イタリアンパセリ(粗く刻む) 1本
●つくり方
1.ソフリット(香味野菜を炒めた旨みの素)をつくる。にんじん、セロリ、玉ねぎはみじん切りにする。 ※フードプロセッサーを使用してもOK。その場合は、それぞれ一口大に切り、にんじんから順に少しずつみじん切りにして取り出す。
2.鍋にオリーブオイルを底が覆われるくらい注ぎ、にんにくを入れて中火にかける。にんにくが色づいて香りが立ったら1の野菜を加え、水分がとんでねっとりするまで、じっくり炒める。
3.スペアリブの全体に塩10g(肉の重量の2%)を均一にふり、小麦粉を薄くまぶす。
4.フライパンにオリーブオイル適量とローズマリーを入れ、強めの中火にかける。3の身側を下にして並べ入れ、こんがりと焼き色がついたら上下を返し、全面に焼き色をつける。2の鍋に加え、肉にソフリットをからめながらさらに焼きつける。
5.スペアリブを焼いたフライパンに赤ワインを注ぎ、肉の焦げをヘラでこそぐ。中火に約1分間かけ、アルコール分をとばす。4の鍋に加え、ひと煮立ちさせたら弱火にして、約3時間煮込む。身から骨を外し、軽くほぐす。 ※煮込みは3〜4日間冷蔵保存可。パスタソースとしてもおいしい。
6.カンパーニュをトースターで軽く焼き、二等分にする。5を適量、パンにのせる。黒胡椒とすりおろしたパルメザンチーズをかけ、イタリアンパセリをのせてオリーブオイルをかける。
ポイント
スペアリブに小麦粉をはたいて焼くと、肉の旨みを閉じ込めることができ、香ばしく仕上がる。焼き色がつくまでしっかり焼き、味に深みを出すこと。

取材・文/石出和香子 撮影/木村 拓
※この記事は『サライ』本誌2026年3月号より転載しました。












