晴天の尾瀬 水芭蕉と至仏山

「群馬といえば温泉や山」というイメージをお持ちの方も多いでしょう。しかし実は、群馬県は関東有数の日本酒の産地でもあります。尾瀬の雪解け水が育む清らかな仕込み水、冬の厳しい寒暖差、そして個性豊かな酒蔵。スパークリング日本酒の先駆けとして世界に名を知らしめた銘柄から、思わず二度見するユニークなラベルのお酒、幻と呼ばれるレアな一本まで、群馬の日本酒の世界は驚くほど多彩です。

文/山内祐治

群馬の日本酒と酒蔵は、関東有数の産地を支える水と風土が造り出す

群馬県は、関東でも有数の日本酒の産地です。群馬県酒造組合の公式HPでは24の蔵元が掲載されており、北関東の主要な日本酒産地の一つです。

その魅力の根底にあるのは、やはり「水」からくるイメージではないでしょうか。尾瀬や周辺の山々からの雪解け水が仕込み水として活用され、利根川・渡良瀬川といった豊かな水系につながっています。米どころとしての顔も持ち、さらに冬の寒暖差が大きいため、酒造りに理想的な環境が整っています。

2021年1月22日、GI(地理的表示)「利根沼田」が国税庁長官の指定を受けました。利根沼田地域は、古沼田湖由来の砂礫・泥礫層を通った軟水と、寒冷な気候が酒質の個性として整理されています。全国的に見ても先進的な取り組みで、群馬の日本酒に新たな付加価値をもたらしています。

日本酒「尾瀬の雪どけ」は、初心者にも愛されるみずみずしい一本

尾瀬の雪どけ」は、龍神酒造が手がける銘柄です。その名前が示す通り、雪解け水の清らかさをそのまま体現したような、非常に繊細で美しいお酒です。

特徴は、カプロン酸エチルと呼ばれるリンゴや洋梨系のフルーティな香りのお酒が目立つラインナップです。みずみずしく、ほんのり甘く、果実感と華やかさが絶妙に調和しています。うす濁りのお酒にも力を入れており、全体的に柔らかくやや甘口のものが多いため、日本酒を初めて飲む方や、甘みのある日本酒が好きな方にも特におすすめです。

季節限定で発売される「ロゼの雪どけ」は、酵母由来のピンク色の見た目も華やかで、日本酒の新しい楽しみ方を提案してくれる注目の一本です。プレゼントにもたいへん喜ばれるでしょう。

群馬の日本酒「水芭蕉」は国際舞台でも提供された、スパークリング日本酒の雄

水芭蕉」は、川場村の永井酒造が醸す銘柄で、群馬を代表する酒蔵のひとつです。「水芭蕉」と「谷川岳」の2ブランドを展開していますが、なかでも広く知られているのが「水芭蕉」です。

最大の見どころは、瓶内二次発酵によるスパークリング日本酒「MIZUBASHO PURE(ピュア)」です。シャンパーニュと同じ製法で、デゴルジュマン(澱引き)まで丁寧に行う本格的な一本。贈答品や記念の席に選ばれることも多く、特別な日にぴったりのお酒です。2023年の「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」の乾杯酒に選定された実績もあり、世界的に評価されているのも頷けます。酒蔵では定期的に音楽会が開かれ、新たにテイスティングルームも設置されるなど、文化発信の場としても注目されています。そしてガス感のあるお酒の陰に隠れがちですが、貴醸酒も非常にピュアで美味しいので、ぜひ飲み比べてみてください。

「MIZUBASHO PURE」(永井酒造)

群馬の日本酒「macho」は、筋骨隆々のラベルが目印。インパクト抜群の一本

macho」は、「大盃(タイハイ)」というお酒を造る牧野酒造が手がける個性的な銘柄です。ラベルには筋骨隆々とした男性キャラクターが漫画タッチで描かれており、その見た目のインパクトから“マッチョボトル”として話題を集めています。

名前の通り、ボリューム感があってしっかりとした味わいが特徴です。男気あふれる飲みごたえを楽しみたい方にはぴったりです。個性的なラベルデザインはギフトとしても面白いですし、日本酒好きへの贈り物に選ぶのもいいでしょう。見かけたら迷わず手に取ってほしい一本です。

群馬の日本酒で高級・プレミアムを楽もう

群馬にはプレミアムな日本酒も揃っています。まず挙げたいのが、永井酒造の前述した「MIZUBASHO PURE(ピュア)」。シャンパーニュ製法によるスパークリング日本酒で、贈答品や特別な記念日に選ばれることの多い逸品です。

さらに注目していただきたいのが、「礼比(ライヒ)」です。永井酒造が製造、SAKE HUNDREDがプロデュースするこの銘柄は、氷温長期熟成、フレンチオーク樽熟成、累乗仕込みが特徴で、公式情報では、2010年醸造、16年熟成、アルコール分16.3%、日本酒度-46、500mlとされており、贅を尽くした製法で生まれます。

2010年醸造、16年熟成。SAKE HUNDRED「礼比 500ml」16万5000円(送料別)
https://jp.sake100.com/products/raihi

ほかに、GI「利根沼田」認定酒の中にも、永井酒造をはじめとして群馬県産米「雪ほたか」を使った高付加価値の銘柄が揃っています。特別な席や贈り物に、群馬のプレミアム日本酒という選択は、きっと相手の記憶に残るはずです。

群馬の日本酒でレアな銘柄を探す

群馬には、まだまだ知られざる個性派銘柄がたくさんあります。

なかでもぜひ注目してほしいのが土田酒造です。永井酒造のすぐそばに位置し、陸稲(りくとう)の米やインディカ米を使用してお酒を仕込むなど、ほかでは味わえないユニークな試みを続けています。「ちょっと変わった日本酒を飲んでみたい」という方には、まさにうってつけの酒蔵です。

(ひじり)」は最近注目が高まっている銘柄で、個性的なスタイルが話題を集めています。「咲耶美(さくやび)」は華やかでジューシー、フレッシュなタイプで、見かけたら迷わず手に取っていただきたいです。希少な銘柄との出合いは、日本酒の楽しみ方をより豊かにしてくれます。

まとめ。群馬の日本酒は、個性と多様性の宝庫

群馬県の日本酒は、その多彩さが最大の魅力です。スパークリングの先駆けとして世界に名を知らしめた「水芭蕉」、フルーティで初心者にも親しみやすい「尾瀬の雪どけ」、インパクト抜群のラベルで話題を集める「macho」、超希少なラグジュアリー酒「礼比」、そして個性派の土田酒造まで、一県の中にこれほど個性豊かなラインナップが揃うのは、全国でも珍しいことです。

首都圏に近い立地から、東京市場のトレンドを意識しながら酒造りに取り組めるという地理的な強みも、群馬の日本酒の革新を後押ししています。一方で、熟成酒では「群馬泉」がぬる燗・お燗で美味しくいただける銘柄として知られており、日本の伝統的な楽しみ方を堪能できます。

群馬のお酒だけで一コース組めるほどのバリエーションがあります。ぜひ一本一本を手に取り、その多彩な世界を飲み比べながら楽しんでみてください。

山内祐治(やまうち・ゆうじ)/「湯島天神下 すし初」四代目。講師、テイスター。第1回 日本ソムリエ協会SAKE DIPLOMAコンクール優勝。同協会機関誌『Sommelier』にて日本酒記事を執筆。ソムリエ、チーズの資格も持ち、大手ワインスクールにて、日本酒の授業を行なっている。また、新潟大学大学院にて日本酒学の修士論文を執筆。研究対象は日本酒ペアリング。一貫ごとに解説が入る講義のような店舗での体験が好評を博しており、味わいの背景から蔵元のストーリーまでを交えた丁寧なペアリングを継続している。多岐にわたる食材に対して重なりあう日本酒を提案し、「寿司店というより日本酒ペアリングの店」と評されることも。

構成/土田貴史

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2026年
6月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

市毛良枝『百歳の景色見たいと母は言い』

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店