日本酒のラベルに記された「15度」という数字を見て、「やっぱりワインなどに比べて、度数が高いのかも」と感じたことはありませんか。実は日本酒は醸造酒の中でも高めのアルコール度数を持つお酒です。その背景には独自の製法があるのですが、近年の新たなトレンドとして、低アルコール日本酒も続々と登場しています。今回は日本酒のアルコール度数について、他のお酒との比較も交えてご紹介したいと思います。

文/山内祐治

日本酒のアルコール度数が高い理由は独自の製法にある

日本酒の度数が高いのは“並行複発酵”という世界のお酒造りのなかでも稀な製法のおかげです。これは米のデンプン(炭水化物)を糖に変える工程と、糖をアルコールに変える工程を一つの容器で同時進行させる技術。ワインの“単発酵”と異なり、より高いアルコールを生成できます。

この製法により発酵段階でアルコール度数は20度前後まで高められ、従来はそこから加水して15〜16度に調整するのが一般的でした。ただし最近は意図的に度数を下げた日本酒も多く登場しています。

日本酒のアルコール度数は何パーセントが標準か

法律上、日本酒は「22度未満」と定義されています。市場に出回る日本酒の多くは15〜16度が標準ですが、近年はそれよりも低いアルコール度数の日本酒が増加中です。

月桂冠の「アルゴ」など10度を切る商品も登場し、ワイン程度(アルコール12度前後)からビール近く(アルコール5度前後)まで幅広く設定されています。近年は、「低アルコール原酒」と呼ばれる商品群も目立っています。これらはアルコール度数を低く保ちつつ、原酒を名乗れる仕込み水の使い方で醸された日本酒たちのことで、制度上の正式区分ではありませんが新しい飲み口として注目されています。発酵段階で度数を抑えながら、しかも加水で薄めないず、技術応用(追水など)により麹の酵素と酵母の働きを巧みにコントロールしています。最近は、日本酒造組合中央会なども「アルコール度数10%以下の低アルコール日本酒」を特集しており、“日本酒=15〜16度が当たり前”という感覚自体が少しずつ更新されつつあります。

ワインのアルコール度数と日本酒の違い

ワインにも様々な種類がありますが、一般的には12.5度が中央値かと思います。白ワインは9度程度のものがあり、一方で赤ワインは13〜14度が多く、日本酒より平均して3〜5度低めです。

ワインの度数は、基本的にはブドウ果汁側の糖度の影響を強く受けます。日本酒のように、完成酒で度数設計を行う発想とは少し違います。冷涼な地域では度数が低く、暑い地域では高くなる傾向です。ただしポートやシェリーなどの酒精強化ワインは蒸留酒を添加するために、アルコール度数は20度近くになるものもあります。

焼酎のアルコール度数は蒸留酒ゆえの高さ

焼酎は蒸留酒のため、醸造酒の日本酒より度数が高く、法令上は連続式蒸留の焼酎は36度未満・単式蒸留焼酎は45度以下と定められており、製品だと20〜25度が一般的です。芋・麦・米焼酎はおおむねこの範囲で、泡盛や特別な焼酎では30度超も存在します。

ただし焼酎の魅力は飲み方の多様性。ロック、水割り、お湯割りで調整でき、実際に口にする度数は日本酒と変わらない、あるいはそれより低くなることも多いのです。25度の焼酎を同量の水で割ればワイン程度のアルコール度数になります。

日本酒でアルコール度数20度以上は存在するか

アルコール度数20度以上の日本酒は確かに存在します。加水しない「原酒」がその代表で、酵母を限界近くまで働かせた結果、20度を超えることがあります。

米宗 育てる純米酒21.9 生もと純米無濾過生原酒」は、22度未満ギリギリを狙った遊び心ある一本。22度を超えると清酒の枠から外れ、雑酒扱いになるため、そのボーダーラインに挑戦した商品です。ちなみに、日本酒のくびきから解き放たれたお酒も実際に京都などで存在しています。「アル添原酒」や貴醸酒、長期熟成酒にも高度数のものが見られます。

ビールのアルコール度数は他のお酒と比べてどうか

ビールは主流な醸造酒の中では度数が低い部類で、日本の一般的なピルスナービールで5度前後が標準です。チェコやドイツのラガービール製法が主流で、軽快な飲み口が特徴となっています。

スタウトやボックなどは7〜8度の高めの商品もありますが、大半は5度台。日本酒の15〜16度と比べると約3分の1で、これが“ビールはゴクゴク飲める”、“日本酒はゆっくり味わう”というイメージの一因となっているのでしょう。

まとめ

日本酒のアルコール度数はワインやビールより確かに高めですが、それは並行複発酵という独自製法がもたらす個性からくるもの。しかしながら、かつては原酒の力強さがもてはやされた一方で、近年は低アルコール商品も増え、選択肢が大きく広がっています。

その一方で、さらに度数の高いウイスキーやジンが流行しているわけですから、日本酒も飲み方を工夫すれば様々な楽しみ方が可能なはずです。ロックや水割りで調整したり、少量ずつ味わったり、低アルコール商品から試したり。自分に合った日本酒との付き合い方を見つけて、この奥深い日本の文化を、より身近に感じていただければと思います。

山内祐治(やまうち・ゆうじ)/「湯島天神下 すし初」四代目。講師、テイスター。第1回 日本ソムリエ協会SAKE DIPLOMAコンクール優勝。同協会機関誌『Sommelier』にて日本酒記事を執筆。ソムリエ、チーズの資格も持ち、大手ワインスクールにて、日本酒の授業を行なっている。また、新潟大学大学院にて日本酒学の修士論文を執筆。研究対象は日本酒ペアリング。一貫ごとに解説が入る講義のような店舗での体験が好評を博しており、味わいの背景から蔵元のストーリーまでを交えた丁寧なペアリングを継続している。多岐にわたる食材に対して重なりあう日本酒を提案し、「寿司店というより日本酒ペアリングの店」と評されることも。

構成/土田貴史

 

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