今年も終わりに近づき、新年を迎える準備で忙しい人も多いのではないでしょうか? 新年を迎える前には年越し蕎麦は外せません。できれば美味しいお蕎麦で年を越したいもの。
そこで今回はこれまで『サライ.jp』でお届けした、蕎麦専門のWebマガジン『蕎麦Web』編集長・片山虎之介さんの記事の中から、美味しいお蕎麦屋を見分ける方法をご紹介します。お品書き、「もり蕎麦」、「かけ蕎麦」など、見分けるポイントをチェックしてみてください。
お店の情報は、電話番号や価格などのデータが変更になっている場合がありますので、ご確認のうえおでかけください。
1:お品書きからは、様々なことが読み取れる
片山虎之介さんによると、お蕎麦屋のお品書きは店の履歴書であり、家系図であり、詳細なロードマップだと言います。
まずメニューの最初にどの献立が書いてあるかが重要。もり蕎麦なのか、ざる蕎麦なのか。お品書きの最初にざる蕎麦が書いてある店は、メニューの順位からいって、より安価なもり蕎麦がないということ。
その反対に、最も安いもり蕎麦に、いくつかのバリエーションがあるお店もあります。店主の蕎麦にかける意気込みが、この一事から伝わってくるのです。
2:美味しいお蕎麦屋かどうかを目利するコツ
そのお店の蕎麦が、美味しいか、あるいは少々問題があるかは、外観を見ただけで判断することは難しいもの。片山さんはあまり格好の良いお店は敬遠しているそうです。理由は、これまでに何度も入ってみて、失敗した経験があるから。
では、どういうお店ならいいかというと、繁華街から外れたところにある小さなお蕎麦屋や、女性客で混んでいるお店は美味しいところが多いそうです。また、産地がいろいろと明記してあるお店の店主はいろいろ研究しているはずで、美味しいお蕎麦を出してくれる可能性は高いそうです。
3:蕎麦職人の技術と感性が否応なしに味に現れる「かけ蕎麦」
片山さんによると「かけ蕎麦は、店の側からすると“怖いメニュー”」なのだそうです。なぜなら、作った人の技量が見えてしまうから。東京のある老舗蕎麦店の名人として名高かった主人は、かけ蕎麦の注文が入ると、わざわざ厨房に「しっかり作るように!」とひと声かけて職人の気持ちを引き締めたというぐらいです。
汁の味は繊細で、どんなに良い材料を使っても、作る人のさじ加減ひとつで良くもなり、悪くもなり、さらに蕎麦の麺は熱い汁が苦手です。客に出すタイミングを見極め、温度、食味をコントロールしながら作業を手際よく提供しなければなりません。どんなかけ蕎麦が出てくるかでお店の良し悪しが見えてきそうですね。
一杯の「かけ蕎麦」で店主の技量がわかってしまうのはなぜか?【片山虎之介の「蕎麦屋の歩き方」第27回】
4:近くにあったら訪ねてみたい「自宅蕎麦屋」
蕎麦打ちの趣味が、だんだん上達して腕前がプロの領域に肉薄してくると、その力を発揮する場が欲しくなるのが人情。そういう人が、自宅を店舗として使う小さな蕎麦屋が増えています。片山さんはそうしたお店を「自宅蕎麦屋」と呼んでいます。
日本各地にありますが、多くの自宅蕎麦屋では材料は風味の良さを優先して選ぶため、蕎麦の美味しいところが多いそうです。
「自宅蕎麦屋」の楽しみ方【片山虎之介の「蕎麦屋の歩き方」第5回】
5:蕎麦は美味しいことに加えて、量が少ないことも、粋である
大正3年に創業した東京・浅草の『並木藪蕎麦』の初代、堀田勝三さんは、「江戸っ子は、すしと蕎麦で、腹をはらしちゃいけないよ」が口癖だったそうです。かつて大衆食であった蕎麦を、高級な趣味食として売り出して成功した「藪蕎麦」。量が少ないことも、粋であるためには重要なのです。
いくら空腹でも、蕎麦好きたるもの、見苦しくガツガツしてはいけない。きれいに最後の一本まで箸でつまんで、食べ終わったら、さりげなく品書きを手にとり、種物を追加注文すればよいのです。
名店といわれる老舗蕎麦店の「ざるそば」はなぜ量が少ないのか?【片山虎之介の「蕎麦屋の歩き方」第37回】
6:蕎麦は、時間の経過とともに、食味が変化していく
例えば、一枚のもり蕎麦が運ばれてきて、最初に一口食べたときと、最後の一箸を口に運ぶときとでは、味、食感が大きく変わってしまいます。最後の一箸にすくい上げられた蕎麦は、ほぼのびた状態。とくに十割蕎麦の場合は、のびのびの状態に。
片山さんのおすすめの蕎麦の味を最大限に引き出す食べ方は、
1、早く食べること
2、薬味を使うなら大根おろしにすること(これは好みだが、おすすめは大根おろしである)
3、量を多く食べるときは、二枚に分け、時間差で味わうこと
せっかく美味しいお蕎麦屋を選んだなら、美味しく食べきれるようにしたいですね。
蕎麦は食べ方で味が変わる【片山虎之介の「蕎麦屋の歩き方」第17回】
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年越しに欠かせないお蕎麦。美味しいお蕎麦を食べて、気持ちも新たに新年を迎えたいものですね。
文/編集部