高度成長期に誕生した「チキンラーメン」は国民の大きな支持を受け家庭に浸透、その製法は「カップヌードル」の開発へ応用された。


ラーメンの歴史で、その大衆化に大きな役割を果たしたのがインスタントラーメンの登場である。その名は「チキンラーメン」。昭和33年(1958)の発売以来、66年間も愛されている超ロングセラーだ。インスタントラーメンは、外食でしか食べられなかったラーメンを身近な日常食にした。
「チキンラーメン」は日清食品の創業者である安藤百福の発明品である。ラーメンを家庭で食べるためには、保存性があり、簡単につくれ、安全で衛生的であることが条件だった。保存のためには麵を乾燥させればよかったが、戻るまでに時間がかかるのが難点だった。
それを解決したのが「瞬間油熱乾燥法」だ。麵を油で揚げることで水分が抜ける。かつ、麵に細かな孔(あな)があくため湯をかければそこから水分が浸透し、短時間で元に戻る。安藤が、夫人が家で天ぷらを揚げているのを見て着想を得たという、この乾燥法こそ、インスタントラーメンを誕生させた最大の「発明」だった。

逆転の発想で難問を解決
瞬間油熱乾燥法は、その13年後に発売された新商品の開発にも活かされた。昭和46年(1971)発売の「カップヌードル」だ。麵の製法は「チキンラーメン」とほぼ同じ。違うのはカップに入り、その場で食べられることである。
カップに麵をスムーズに収めることに苦労したが、カップを麵にかぶせて収納するという逆転の発想で難問を解決。また、カップ内の麵は中間で保持されるため輸送中に壊れず、容器の強度も増すという利点も生んだ。「カップヌードル」はラーメンをいかにしてカップに収めるかという点において、画期的な発明品だった。
安藤百福が数々の着想を実現することで新たな麵の世界が広がり、今日、世界中でインスタントラーメンが食べられている。




災害時などに駆けつける「キッチンカー」

カップヌードルミュージアム 横浜

が体験できる。
神奈川県横浜市中区新港2-3-4
電話:045・345・0918
開館時間:10時~18時(最終入館17時)
入館料:500円
休館日:火曜(祝日の場合は翌日)、年末年始
交通:みなとみらい線みなとみらい駅下車、徒歩約8分。JR・市営地下鉄桜木町駅下車、徒歩約12分
取材・文/宇野正樹 取材協力・写真/日清食品
※この記事は『サライ』本誌2024年12月号より転載しました。
取材・文/鹿熊 勤 撮影/寺澤太郎
