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頭を後ろにそらすだけで、手軽に上半身を鍛えられる「逆腹筋」の基本

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2025/6/14

文／鈴木拓也

腹筋運動といえば？

こう聞かれたら、ほとんどの人は、仰向けで上体を起こす運動を思い浮かべるだろう。まさに、これこそ腹筋鍛錬法の定番。特に体づくりを頑張っている人なら、必須の筋トレメニューとしているはず。

ところが、この腹筋運動は「椎間板や靭帯に過剰なストレスを与えてしまう」「ヘルニアの原因となり、痛みやしびれが起こる」など、無視できない問題がある点を指摘するのは、理学療法士の中村尚人さんだ。

これはなにも、中村さんの独自見解ではなく、スポーツ生理学の世界では実は常識。鍛錬効果はあるにはあるが、リスクも大きいので推奨はされていないのだ。

代わりに中村さんがすすめるのが、みずから編み出した「逆腹筋」。著書の『逆腹筋の教科書』（KADOKAWA　https://www.kadokawa.co.jp/product/322404001129/）で、その方法と効果が解説されている。

今回は、この逆腹筋の基本を紹介しよう。

立った状態で頭を後ろにそらす

逆腹筋は、従来の腹筋と逆に、頭を後方へそらす腹筋運動。立って行う点でも特徴的だ。

中村さんによれば、これで鍛えられる原理は、「自分の上半身を重りにした自重トレーニング」。上半身をそらした際に、そのまま後ろに倒れてしまわないよう腹筋の力が働き、筋刺激となる。腹筋のみならず、脇の下の前鋸筋や背中にある脊柱起立筋なども鍛えられ、非常に効率のいい鍛錬法だという。

ほかにも効用がいくつか挙げられているが、見逃せないのが「円背（えんぱい）」の予防。円背とは、猫背が腹筋や背筋の衰えによって悪化し、背骨が前に倒れたままとなる状態を指す。放置すると、転倒、誤嚥、圧迫骨折のリスクが高まるなど、いいことはない。この対策にも逆腹筋が効果的とのこと。

中村さんは、逆腹筋を、「現代社会に生きる全日本人がやるべきトレーニング」と力説する。

まずは硬くなった胸の筋肉をほぐす

気持ちが高まったところで、具体的な方法に移ろう。逆腹筋は、「お腹を伸ばして胸をそる」動きができなくてはいけない。しかし、少なからずの人は、前かがみ姿勢などで胸の筋肉が硬くなっており、うまくそれない。

そこで、胸をほぐすのが先立って必要となり、そのための準備体操を以下の要領で行う。

１. 右手で左の胸（大胸筋）を下から押さえながら持ち上げる。
２. 左ひじを深く曲げて、ひじで大きく円を書くように、後ろ回し、前回しを各３～５回行う。
３. 息を吸いながら胸を開く意識で、左腕をできるだけ大きく後ろへ回し、吐きながら正面まで回す。３～５回行う。このとき、視線は常に手先に向けて行う。１～３を逆側も同様に行う。
（本書78～79pより。一部筆者加筆）

基本の逆腹筋にチャレンジ

準備体操が終わったら、いよいよ逆腹筋のスタート。本書には何パターンか記されているが、ここでは「基本の逆腹筋」を取り上げたい。これは、１日何回でも行ってよく、時間も就寝前を除けば、いつでもOKだ。特に、起床後、外出前、長時間同じ姿勢で仕事・作業をした後がおすすめのタイミングとなる。

１点だけ注意事項があり、すべり症の人は症状が悪化するリスクがあるので、かかりつけ医に相談の上、慎重に行うこと。

基本の逆腹筋のやり方は、以下のとおり。

１. 両足を腰幅で平行に開いて立つ。重心はかかとに置く。太ももの前側がゆるむ位置まで、両手で太ももを後ろに押す。このとき、かかとに重心を置き、そのままキープしておく。
２. 両手を太ももから離し、脇に自然に下ろす。両足の指すべてをそらせて、床から上げる。
３. 頭の後ろで親指を下に向けて両手を組む。両手で首と後頭部を左右から包み、頭を引っこ抜くように両手で持ち上げる。
４. 両手で頭を引き抜くように力を入れたまま、息を吸いながら、頭を後ろに少し傾けて、頭頂をできるだけ遠くに伸ばす。このとき、両ひじを天井方向に押し出しながら行うとうまく動ける。２～５呼吸キープ。
５. 息を吐きながら上半身を元に戻す。１～５を１～５回繰り返す。その後、５～10分は「うすいお腹」「広がった胸」「まっすぐな首」をキープしたまますごす。
（本書82～85pより。一部筆者加筆）

＊　＊　＊

本稿では割愛したが、逆腹筋のフォームの写真（および動画サイトへのリンク）が本書にある。さらに、有酸素運動を組み合わせた「逆腹筋×HIIT」や、アライメント（骨の配列）を正常にするトレーニングなど、盛りだくさんの内容になっている。日頃の運動不足を痛感している方は、トライしてみてはいかがだろうか。

【今日の健康に良い１冊】
『逆腹筋の教科書』