日本人の好みに寄せていない「ガチ中華」の店が急増。本場の味を福澤朗さんが実況レポート。

馬子禄牛肉面(マーズルーぎゅうにくめん)(東京・神田神保町)

「蘭州牛肉面」1050円。9種類の麵のうち一番人気の細麵で。麵の量は350gと多め。
厨房に入り、手延べに挑戦する福澤さん。蘭州牛肉麵はイスラム教徒の回族の料理のひとつで、豚肉や酒類を使わないハラール食。

「ガチ中華とは言い得て妙です。日本人の舌に馴染み、浸透した町中華とは異なる本場の味ですね」
 
こう話すのはフリーアナウンサーの福澤朗さん。今話題の「ガチ中華」の店に興味津々だ。
 
日本のラーメンの語源は、中国語の拉麵(ラーミエン)とされ、「拉」とは引っ張って延ばすという意味。中国政府から「中華第一麵」(中華ナンバーワン麵)の称号を与えられたのが甘粛(かんしゅく)省の省都・蘭州の拉麵、蘭州牛肉麵である。

甘粛省を含む中国西北部は小麦の栽培に適した乾燥した地。蘭州では朝食に牛肉麵を食べるのが主流で、市内には多くの店がひしめく。そのなかで100年以上続く名店『馬子禄(マーズルー)』の味を日本で伝えているのが『馬子禄 牛肉面』店長の清野烈さん(46歳)。清野さんは中国留学中に蘭州牛肉麵に魅せられ、『馬子禄』本店で修業。平成29年に日本第一号店を出店した。特に目を見張るのは手延べの技である。瞬く間に極細から平麵、三角麵など9種類の麵をつくり出す。

「白い生地が延びる延びる、もうのびしろしかない! 延ばしては捩じるを繰り返しております。一人前の麵があっという間に! これはもうチャイニーズマジック!」

清野さんの熟練の技を前に、福澤さんの熱血実況が響き渡る。

注文を受けて麵打ちをする清野さん。厨房の様子はガラス越しに見ることができる。

碗の中に5つの要素が調和

蘭州牛肉麵の重要な要素は「一清(イーチン)、二白(アールバイ)、三紅(サンホン)、四緑(ス ーリユー)、五黄(ウーホアン)」といわれる。清(チン)は牛肉や牛骨から取った澄んだスープ、白(バイ)は具の大根、紅(ホン)は香ばしいラー油、緑(リユー)は彩りのパクチーや葉にんにく、そして黄(ホアン)は麵を指す。5つの要素が調和することで深い味わいが完成する。

「うん、八角などのスパイスの香りのスープが沁みます。コシのある麵、牛肉の甘さ、間違いなく体にいい拉麵です」と、福澤さんはうなずきながら麵をすすった。

生地は寝かせず、菜種油を付けながら全身の体重を乗せて延ばしていく。
左から食べ応えのある極太の平麵、細麵、断面が三角形の三角麵。現地ではその日の気分や体調に合わせて麵を選ぶ客が多いという。

馬子禄 牛肉面

東京都千代田区神田神保町1-3-18
電話:03・6811・7992
営業時間:11時~15時、17時~ 20 時30分(スープがなくなり次第終了)
定休日:無休 45席。
交通:地下鉄神保町駅下車、徒歩約3分

●案内人 福澤朗さん(フリーアナウンサー・61歳)

昭和38年、東京生まれ、早稲田大学卒業後、日本テレビ入社。平成17年にフリーとなり、司会業のほか俳優など多方面で活躍。卓球を愛し、たびたび中国も訪れている。

※この記事は『サライ』本誌2024年12月号より転載しました。

『サライ』12月号大特集は『「麵」の大国ニッポン』

取材・文/関屋淳子 撮影/湯浅立志

 

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