文/片山虎之介
おいしいそばを求めて旅を続け、はや25年になる。
数えきれないほどの店を訪ね、そばを食べてきたが、その中で忘れられないそば店が何軒かある。
いずれも個性際立つそばを打ち、どの店が上とか下とか、比較するのは憚られるほどの名店である。
これらの店のそばは素晴らしい。毎日でも食べたいくらいだが、名店のある場所は遠い。「あのそばは美味かった」とつぶやくと、滑らかな喉越しが思い出されて、無性にそばが食べたくなる。
この気持ち、そば好きの方なら、わかっていただけるだろう。
おいしいそばを打つための3つのポイント
そばが食べたくなったとき、私は麺棒を持ち出す。自分で打つのだ。これは、そば好きの皆さんにおすすめしたい最良の方法である。
「素人が打っても、おいしいそばはできない」と思っている方に、そんなことはありません、とお伝えしたい。私が運営しているそば打ち教室には、毎回、「そばを打つのは初めてです」という方がこられるが、一時間半の作業のあと、ほとんどの方が自分の打ったそばのおいしさに感動して帰られる。打ち方さえ正しく覚えれば、そのくらい簡単に、おいしいそばは打てるものなのだ。
おいしいそばを打つためには、以下の3つのポイントを押さえることが肝要だ。
1.良い師匠に習う
2.良いそば粉を使う
3.おいしいそばつゆを合わせる
恐れずにチャレンジしていただきたい。少々、練習が必要であったとしても、それほど大変なことではない。私にできるのだから、誰にでもできることだ。
私の運営するそば打ち教室「蕎麦のソムリエ講座」は、北海道から沖縄まで、日本中から受講生が来てくれる。最近は外国からの受講生も増えている。勘の良い人は、一回参加しただけで、おいしいそばを打てるようになって帰っていく。
出雲そばの打ち方
先日、島根県の出雲そばの名人に、講師としておいでいただき、出雲そばの打ち方を、受講生の皆さんに伝授していただいた。
出雲そばは、日本三大そばのひとつに数えられる有名なそばで、出雲には本当においしいそば店が多い。
良い師匠とは、こういうそば処にある名店のご主人のことを指す。簡単に言えば、出雲そばの打ち方で、出雲そばのそば粉を使って打てば、出雲そばができる。
この回の「蕎麦のソムリエ講座」に参加した方は全員、自分の打った出雲そばのおいしさに感動しておられた。
講師を務めてくださったのは、松江市にある『出雲そば きがる』のご主人だ。
松江市に旅したら、同店を訪ね、本物の出雲そばを味わっていただきたい。
そもそも、そばは究極のグルメである。そば粉と水と人の力だけで打ち上げ、サッと茹でれば完成で、味が決まる。逃げも隠れも、言い訳もできない。シンプル極まりない料理であり、この潔さが、また魅力なのだ。
本当においしいそばとは、そういうそばである。
そば好きの皆さん、お近くに、良い師匠を見つけた方は、ぜひ、そば打ちを始めていただきたい。
近所に見つからない方は、ちょっと足を伸ばして、片山虎之介のそば打ち教室「蕎麦のソムリエ講座」にお出かけください。
必ず、おいしいそばが打てるようになって、お帰りいただきます。
「蕎麦のソムリエ講座」の内容は、以下のURLをクリックして、ご覧ください。
https://nihon-soba.jp/hozonkai/2019/08/24/5389/
※松江から出雲そばの名人に来ていただいたのは、松江そば組合・松江そば文化ブランド化推進協議会のご協力によるものです。
松江そば組合HP(https://matsue-soba.net/)
松江そば文化ブランド化推進協議会HP (https://matsue-soba.net/brand/)
文/片山虎之介
蕎麦専門のWebマガジン『日本蕎麦保存会jp』(https://nihon-soba.jp/)編集長。蕎麦好きのカメラマンであり、ライター。伝統食文化研究家。著書に『真打ち登場! 霧下蕎麦』『正統の蕎麦屋』『不老長寿の ダッタン蕎麦』(小学館)、『ダッタン蕎麦百科』(柴田書店)、『蕎麦屋の常識・非常識』(朝日新聞出版)などがある。