ふぐ刺し、ふぐちり、焼きふぐ、創作料理…。さまざまな「福」を呼ぶ魚をたらふく食す。
全国には様々なふぐの調理法と食べ方がある。薄切りの刺身であるてっさから鍋のてっちり、焼きふぐや珍味まで。ワインとの相性も知り、ふぐを取り寄せて自宅でも楽しみたい。
近鉄今里駅から歩いて6分ほど。飲食店などが立ち並ぶ通りにふぐ専門店『あじ平今里』はある。丸く膨らんだふぐを描いた看板が目印だ。店主の三井忠明さん(65歳)は、ふぐを見極めて40年という熟達の料理人。昭和58年に兄と今里で居酒屋を開業し、その10年後に、独立してこの店を開いた。若い頃にふぐ専門店に勤めたことがあり、その経験を生かしたいと思ったそうだ。
30年前から変わらない値段
国内外から客を呼ぶこの店の自慢は、一流店にも引けを取らない上質なトラフグ。料理の値段は30年前からほとんど変えていないというから、常連が増えるわけだ。
「うちで仕入れるのは、佐賀産の3kg前後の大きなトラフグです。ストレスなく水槽で生きたまま運ばれるから、痩せることなく身がしっかりしている。必ず自分で1匹ずつ触って、皮と身の間や筋肉部分の詰まり加減を確認します」(三井さん)
鮮度が高いうちに捌いて調理すると旨みを逃さないという。
店主のお薦めは、てっさ(刺身)や焼きふぐなどをまず味わい、最後にてっちり(鍋)という順だが、冬場は鍋から始めて身体を温めるのもいい。1人前でも、皮が付いた肉厚な身や骨回りの身もたっぷり供される。ほどよく煮えたところで、自家製のポン酢をつけて食す。淡泊だが独特の旨みがあり、弾力ある歯ごたえも心地いい。市場で毎朝仕入れる白菜や春菊も新鮮でシャキッとした食感。
最後は、ふぐの出汁の旨みを余さず味わえる雑炊。煮立った出汁にご飯を入れ、日本酒を加えた溶き卵を回し入れる。客自らつくれるが、女将さんにつくってもらう雑炊は格別だ。ふぐの美味しさを改めて実感できる。
あじ平今里
大阪市生野区新今里7-2-5
電話:06・6753・3301
営業時間:17時~22時(最終注文21時)
定休日:月曜
交通:近鉄今里駅から徒歩約6分 80席。
三井さんが薦める招福スポット
御幸森天神宮
※この記事は『サライ』本誌2024年1月号より転載しました。(取材・文/中井シノブ 撮影/伊藤 信)