天候を気にせず、気軽に名店の味が楽しめ、個性的な店が集まる地下街は、都会の「オアシス」であり地域の魅力が凝縮された「観光地」でもある。その楽しみ方を案内する。

メイチカと歩み65年。明治期創業の老舗が生んだひつまぶしの新形態

明治38年に創業した『廣寿司本店』は、名古屋駅に地下街のメイチカが誕生すると同時に、ここに出店した。100年以上の歴史を持つこの老舗が、令和3年に新発売したのが「ひつまぶしサンド」だ。名古屋めしのひつまぶしの新形態として、観光客の人気を集めている。店長の鬼頭宏和さん(47歳)は開発の経緯をこう振り返る。

「ひつまぶしサンド」550円。うなぎをすし飯で挟むという斬新なアイデアの新形態。

「コロナ禍で飲食店から客足が途絶えた際、名古屋の地下街も壊滅的な状況に陥りました。何とか地下街に足を運びたくなるような新名物を作りたい、しかも気軽にテイクアウトでも食べられる名古屋めしを提供したいと考案しました。ひつまぶしは調理に時間がかかり、うな重のようなお弁当もなかったので、観光客だけでなく、地元客からも大きな反響がありました」

ひつまぶしサンドは、うなぎですし飯を挟み、海苔で包んで食べるという新形態。うなぎは秘伝のタレで香ばしく蒲焼きにしてある。ひつまぶしと大きく異なるのはすし飯で食べる点。さっぱりと片手で持って食べることができる。鬼頭さんが続ける。

「最後に出汁のジュレをのせ、ひつまぶしのように味わいの変化を楽しむこともできます」

うなぎの頭や骨から取った出汁のジュレがのせてあり、味わいの変化が楽しめる。

ハレの日の名古屋めし

名古屋で、『廣寿司本店』の名物料理といえば、真っ先に「穴子の切寿司」が挙げられる。国産の穴子と尾張の郷土食材の角麩を合わせ、甘辛い濃厚なタレを絡めた押し寿司のことだ。同店ではこれも1貫から注文できる。

「穴子の切寿司」740円。伝統の甘いタレが穴子や角麩に染み込む。穴子は毎朝、職人がさばき、旨味が引き出されるように煮る。

「穴子は毎朝、社長が自ら市場で買い付け、新鮮なものを提供しています。地元では、この切寿司を何世代にもわたって、家族の集まりやハレの日に食べるというお客様もいらっしゃいます」

名古屋の地下街では、新感覚の名物グルメから老舗の定番まで、新旧の名古屋めしが堪能できる。

廣寿司本店

愛知県名古屋市中村区名駅3-14-15メイチカ
電話:052・583・1331
営業時間:11時〜21時30分(21時最終注文)
休業日:年中無休

※この記事は『サライ』2023年3月号より転載しました。

『サライ』3月号の大特集は『日本の「地下街」を歩く』。
雨や風を気にせず名物を気軽に食べ歩き、土産も充実、アートな空間が広がる地下街の魅力と楽しみ方をご紹介します。

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