おでんの世界は多彩になり、「出汁」の違いだけでも選択肢の幅は広がっている。未知なる味わいの「出汁」を楽しめる厳選した7軒を紹介したい。
名古屋発、鶏串専門店ならではの濃い旨み
鶏だしおでん さもん(東京・中目黒)
飲食店がひしめく中目黒の高架下。名古屋に本店を構える『鶏だしおでん さもん』の開け放たれた扉の向こうに、大きなおでん鍋が鎮座する。この光景を目にすると、足を止めずにはいられない。白濁したスープは鶏ガラにニンジン、長ネギ、生姜(しようが)など数種類の野菜を加え、半日以上煮込んだ鶏白湯(とりパイタン)出汁。相性がいいのはやはり鶏串で、煮立たせないギリギリの温度で煮込むという。
「こうすると鶏肉が固くなりにくく、薄味でも旨みが染み込むんです」と店長の小川陽さん(34歳)。
その言葉通り、鶏むね肉もふわっとした食感になり、噛むほどに出汁と鶏肉の旨みが口の中いっぱいに広がる。ピリッとした辛みの柚子胡椒で味わうのもおすすめだ。
〆の一軒にももってこい
〆(しめ)には「すだちのおでんだし茶漬け」(620円)を。すだちの酸味がアクセントになり、出汁の最後の一滴まで飲み干したくなる。
午後4時の開店に合わせて訪れる客がいる一方で、2軒目、3軒目に立ち寄る人も。屋台風の店内だけに、サクッと味わい、吞んで楽しむのが粋な振る舞いだ。
鶏だしおでん さもん
東京都目黒区上目黒3-5-31 中目黒高架下
電話:050・5596・4797
営業時間:16時〜翌1時(金曜・土曜、祝前日は〜翌3時、最終注文/料理は閉店1時間
前、飲み物は30分前)
定休日:無休
交通:地下鉄日比谷線中目黒駅より徒歩約2分 18席+立ち吞みスペース。
取材・文/永田さち子 撮影/泉 健太
※この記事は『サライ』2022年12月号より転載しました。