急ぎ足の観光客だけでなく、地元の「みやこ人」たちからもこよなく愛される京都の「おうどん」。出汁や麺、具材など個性豊かなメニューの数々と、その美味しさの秘訣を紹介する。

明治の宿場町を偲ばせる2代目考案の「車うどん」

本家 田毎(釜揚げうどん)

「車うどん」1820円。うどんには大葉と、煮た小海老を盛り付ける。天ぷらは、海老、蒟蒻、椎茸、さつまいも、茄子、南瓜など。
注文が入ると、天ぷら鍋で次々と天ぷらを揚げていく。カラッとして油っぽくない。

河原町通から寺町通まで続く商店街に店を構える『本家 田毎(たごと)』。創業は明治元年。初代は寺で蕎麦打ちを身に付け、当時商店が軒を連ね賑わった三条通に自店を開業したという。

「宿場だった三条は人通りも多く、また馬車や人力車なども通る道でした。名物の『車うどん』は、それら車にちなんで作られたものです」と店主の堀部和宏さん(51歳)は話してくれた。

釜揚げうどんに10種ほどの天ぷらが付き、うどんの上には車を模した海老が飾られる。秋から初春にかけての寒い日には、特によく注文される品である。

釜揚げうどんは、熱湯で茹でたうどんを、水で締めずに熱々のまま食べるもの。愛知県の岡崎市に発祥の店があるそうだ。

大きな釜でうどんを茹でる。蕎麦は自家製だが、うどんは、親戚筋の「田毎製麺所」のものだという。

『本家 田毎』では、ウルメやサバ、本鰹節などを合わせた混合節と利尻の昆布でとった出汁にかえしを合わせたつゆを、温めて出す。熱いうどんが冷めることがないようにとの配慮だ。

海老や蒟蒻、椎茸、さつまいもなど揚げたての天ぷらにも、特製のつゆがよく合う。

今は三条名店街商店街になった通りに面する店舗。観光シーズンには行列ができることも。 

京都市中京区三条通寺町東入石橋町12
電話:075・221・3030
営業時間:11時~20時
定休日:無休
交通:京都市営地下鉄東西線京都市役所前駅より徒歩約4分

 

取材・文/中井シノブ 撮影/高嶋克郎、竹中稔彦
※この記事は『サライ』2022年3月号別冊付録より転載しました。

 

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