牛乳や卵など、栄養価の高い材料で作られ、小麦粉やバターも使わないことから、カロリーも低め。
プリンが昔から家庭で作られてきた背景には、調理法が簡単という理由だけでなく、栄養価的にも優れた一面があったからだ。
今回、本誌のため特別に秘伝のレシピを公開してくれるのは岐阜で洋菓子店『プルシック』を構える所浩史さん。開発に携わった『パステル』の「なめらかプリン」で一時代を築き、プリン一筋30年以上、業界で「伝説のプリン職人」とも称されている。
指導 所浩史さん(パティシエ・61歳)
プルシック
生クリームは冷たい状態で
所さんはプリン作りの面白さをこう語る。
「極論すれば、牛乳と卵と砂糖を混ぜて固めるだけでプリンは作れます。それを美味しくするためにはいろんな方法がありますが、とにかく手軽に素早く作れるのがプリンのいいところです」
詳しく以下で解説するが、所さんのプリンは、卵黄の凝固力だけで固めるため、家庭ではLサ
ズの大きな卵黄がお勧め。また、作り方にもひと手間かけている。
「昔は牛乳と生クリームとバニラビーンズを合わせて60度まで温め、卵黄とグラニュー糖を混ぜ合わせたものに加えていました。今はバニラビーンズの香りをより強く出すために、牛乳とバニラビーンズだけで沸騰させています。生クリームに熱を加えると、脂肪の粒同士がくっついて大きな粒となる。これが口当たりを悪くするので、生クリームは冷たい状態で使うように変更しました」
伝説の味にぜひ挑戦してほしい。
【材料】(容器6個分)
●カラメル
グラニュー糖90g、熱湯30cc
●プリン生地
牛乳200cc、生クリーム(脂肪分45%)200cc、卵黄3個(Lサイズが好ましい)、グラニュー糖45g、バニラビーンズ(マダガスカル産)1/4本
※写真のバニラビーンズは実際の量とは違います。
【容器】
容量は90〜120cc程度でやや大きめも可。素材はガラス瓶や耐熱プラスチック、陶器など。ガラス瓶が最も早く冷え、美味しくなる。
【作り方】
1. カラメルを作る。鍋に入れたグラニュー糖90gを弱火にかける。「かき混ぜすぎると結晶化して塊になってしまいます。溶けた部分に溶けていない部分を少量ずつ加えて巻き込むイメージで溶かします」
2. 全体が色づいて色が濃くなり、鍋全体に泡があがってきたら火を止め、少しずつ熱湯を注ぐ。
3 .よく混ぜ、そのまま容器に注ぐ。
4 .バニラビーンズをさいて中の種をそぎ取る。
5. 牛乳200ccにさやと種を入れておく。
6 .プリン生地を作る。卵黄3個とグラニュー糖45gを泡立て器で混ぜ合わせる。「素早く混ぜないとグラニュー糖が卵黄の水分を吸ってダマになります。卵黄の隙間にグラニュー糖を入れていくイメージで卵黄を均一に細かくすることが大切」
7. 6に冷たい生クリーム200ccを加えて混ぜる。
8. 5のバニラビーンズを加えた牛乳を沸騰させてバニラの香りを抽出する。
9 .7に8を少しずつ加えていく。
10 .目の細かい万能こし器で9の生地を裏ごしする。
11. 表面の泡を取り除く。
12. 容器に注ぎ入れる。
13. 12の表面をアルミホイルでしっかりフタをして、鍋で沸かした湯の中に器を並べる。湯量は容器の3分の1から半分くらいが目安。
14 .鍋にフタをして最初は強火で沸騰させ、すぐに少し弱火にして8分蒸す。
15. 湯煎から器を取り出して粗熱を取り、3~4時間冷蔵庫で冷やしてできあがり。
16 .ヨーグルトのような口当たり抜群のなめらかさ。
取材・文/飯島千代子 撮影/山下亮一、高嶋克郎、鈴木暁