奈良・興福寺の起源は、藤原氏の祖・鎌足の重篤な病の平癒を願って夫人の鏡王女が、鎌足の念持仏であった釈迦三尊像を本尊として建立した山階寺といわれます。

山階寺はいくたびかの移転を経たのち、鎌足の子である藤原不比等によって現在地に遷して名称も興福寺と改められ、現在に至っています。

興福寺の至宝といえば、日本彫刻史上、最高傑作と称される運慶による彫像群です。写実的な表現と大胆無比な造形で、世界的にも絶賛される運慶。運慶とその一門が持てる手腕をいかんなく発揮した興福寺の仏像たちは、時を超えて観るものを圧倒します。

国宝 弥勒如来坐像(部分) 運慶作
鎌倉時代・建暦2年(1212)頃
奈良・興福寺蔵 北円堂安置 撮影:佐々木香輔
国宝 弥勒如来坐像 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃
奈良・興福寺蔵 北円堂安置 撮影:佐々木香輔

東京国立博物館 本館特別5室で開催の「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」は、東京・上野の博物館に鎌倉復興当時の北円堂の内陣を再現する、二度と観られない展覧会です。(9月9日~11月30日)

国宝 興福寺北円堂 堂内 撮影:佐々木香輔

本展の見どころを、東京国立博物館の学芸研究部保存科学課保存修復室室長、児島大輔さんにうかがいました。

「北円堂は興福寺境内の北西の地に奈良時代に建立されました。堂内に9軀の仏像を安置したと伝えます。

その後、平安時代に二度の火災に見舞われました。二度目の火災が治承4年(1180)の平家による南都焼討です。この未曽有の災禍から鎌倉時代に復興されたのが現在の国宝・北円堂です。

国宝 興福寺北円堂 外観 撮影:佐々木香輔

この時、造像を担当したのが仏師運慶(生年未詳~1223)でした。運慶は一門の仏師たちを率いて9軀の仏像を復興しました。このうち両脇侍菩薩像は行方が知れませんが、弥勒如来坐像と無著・世親菩薩立像は北円堂に現存し、四天王像は中金堂に安置される像を旧北円堂像とする説が有力です。

国宝 無著菩薩立像 運慶作
鎌倉時代・建暦2年(1212)頃
奈良・興福寺蔵 北円堂安置 撮影:佐々木香輔
国宝 世親菩薩立像 運慶作
鎌倉時代・建暦2年(1212)頃
奈良・興福寺蔵 北円堂安置 撮影:佐々木香輔

本展はこの弥勒像、無著・世親像、四天王立像の国宝仏像7軀によって、鎌倉復興期の北円堂を再現いたします。日本彫刻の最高傑作である7軀の運慶仏だけで構成される展覧会会場は、運慶が構想した至高の空間を復元的に再現することになります」

国宝 四天王立像(持国天)(部分)
鎌倉時代・13世紀
奈良・興福寺蔵 中金堂安置 撮影:佐々木香輔
国宝 四天王立像(多聞天) 
鎌倉時代・13世紀
奈良・興福寺蔵 中金堂安置 撮影:佐々木香輔

東京の地で拝観が実現する興福寺北円堂の奇跡!! ぜひ会場に足をお運びください。

【開催要項】
運慶 祈りの空間―興福寺北円堂
会期:2025年9月9日(火)~11月30日(日)
会場:東京国立博物館 本館特別5室
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://tsumugu.yomiuri.co.jp/unkei2025/
開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
休館日:9月29日(月)、10月6日(月)・14日(火)・20日(月)・27日(月)、
    11月4日(火)・10日(月)・17日(月)・25日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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