日本の甲冑は、大鎧、胴丸、腹巻、当世具足などの様式がありますが、これらは金工、漆工、染織など複数にまたがる工芸作品の集合体です。
日本人の工芸技術の高さ、そして美意識を表した総合芸術といえる鎧。特に平安時代から南北朝時代にかけて作られた大鎧は、最も格式が高いとされます。
春日大社国宝殿で開催の「究極の国宝 大鎧展―日本の工芸技術の粋を集めた甲冑の美の世界―」は、現在国宝に指定されている甲冑類18点のうち、半数の9点が出展される二度とない規模の展覧会です。(7月5日~9月7日)

兜鉢高11.2cm、胴高34.7cm 島根・日御崎神社
前期展示
画像提供:東京国立博物館 Image:TNM Image Archives
本展の見どころを、春日大社国宝殿の学芸員、渡邉亜祐香さんにうかがいました。
「日本の甲冑で最も格式高く「式正の鎧」とも称される大鎧。本特別展ではその大鎧の中でも絢爛豪華な飾金物が付された大鎧に注目しており、また奈良はかつて甲冑の一大生産地であったことから、<甲冑のふるさと・奈良>も重要なテーマとしています。
南北朝時代以前制作の飾金物が付された大鎧は4領しか伝存していませんが、このすべてを本展では展示します。また春日大社伝来甲冑と奈良甲冑師との関係やその特質を、当社の甲冑を中心に奈良甲冑師の他の作例と合わせて展示してご紹介いたします。

平安時代(12世紀)岡山県立博物館蔵
後期展示
一番の見どころは、甲冑や刀剣などの武器武具の愛好家の間で東西横綱と称されている、東の横綱・櫛引八幡宮所蔵 赤糸威鎧(菊一文字の鎧兜)と西の横綱・春日大社所蔵 赤糸威大鎧(竹虎雀飾)の2領が史上初めて並列で展示されるところです。また国宝指定の甲冑類の半数が一堂に会する点も極めて稀で、これだけの名鎧が揃う展覧会はおそらくこれで最後になる、といっても過言ではないと思います」

兜鉢高12.8cm、前胴丈36.5cm、総重量28.9kg
奈良・春日大社蔵
通期展示

兜鉢高11.5cm、胴丈33.3cm、総重量34.6kg
青森・櫛引八幡宮蔵
通期展示
外国の鎧マニアから熱い視線をそそがれる、日本の工芸美の粋を集めた甲冑!! その頂点ともいえる本展にぜひ足をお運びください。
【開催要項】
究極の国宝 大鎧展―日本の工芸技術の粋を集めた甲冑の美の世界―
会期:2025年7月5日(土)~9月7日(日)
前期7月5日(土)~8月3日(日) 後期8月9日(土)~9月7日(日)
※前・後期で展示替えあり
会場:春日大社 国宝殿
住所:奈良県奈良市春日野町160
電話:0742・22・7788(春日大社)
公式サイト:https://samurai.kasugataisha.or.jp/
開館時間:10時~17時(受付終了16時30分)
休館日:8月4日(月)~8月8日(金)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝