20世紀後半のフランスを代表する画家ベルナール・ビュフェ(1928-1999)。抽象絵画が主流の中で具象絵画を貫き、鋭く黒い美しい描線によるクールな描写を特徴とする画風は、第二次世界大戦直後の不安と虚無感を原点とし、サルトルの実存主義やカミュの不条理な思想と呼応して一世を風靡しました。

不安に覆われた今の時代に問いかけるような、ビュフェの展覧会が開かれています。(2021年1月24日まで)

ベルナール・ビュフェ《カルメン》1962年、油彩・カンヴァス
ベルナール・ビュフェ美術館蔵 (C)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2020 E3886

本展は、世界一のコレクションを誇る静岡県のベルナール・ビュフェ美術館が所蔵する油彩を中心とした約80点を展観します。
          
本展の見どころを、Bunkamuraザ・ミュージアムの上席学芸員、宮澤政男さんにうかがいました。

ベルナール・ビュフェ《キリストの十字架降下》1948年、油彩・カンヴァス
ベルナール・ビュフェ美術館蔵 (C)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2020 E3886

「回顧展前半の注目作は、無数に交錯する直線とモノクロームの色調で、戦争に打ちひしがれた時代の不安感を描き出した作品《キリストの十字架降下》です。ビュフェは19歳という若さで、フランスの新人画家の登竜門である批評家賞を受賞しました。その年に描かれた本作は、登場人物を現代人に置き換える斬新な発想で描かれたもので、冷めた描写の中に心を揺さぶる奥深さが感じられるのは、戦争と母親の病死という辛い経験があったからでしょうか。

ベルナール・ビュフェ《ピエロの顔》1961年、油彩・カンヴァス、ベルナール・ビュフェ美術館蔵 (C)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2020 E3886

時代の空気を表現することで画壇の寵児となったビュフェは、1958年に妻となるアナベルという美しい女性と出会ったのちは制作に弾みが付き、大画家としての道を歩みだします。本展のポスターに採用したピエロ像は、自らメイクして描いた自画像で、画家としての自信に溢れています。
終章で注目したいのは、ドン・キホーテの一場面を描いた横5メートルの大作です。まさに迫力で観る者を圧倒し、具象画家としての力量を感じさせます。」  

鋭く交差する線でとらえた存在の美!! ぜひ会場でじっくりご鑑賞ください。         

【開催要項】
ベルナール・ビュフェ回顧展 私が生きた時代 
会期:2020年11月21日(土)~2021年1月24日(日)
会場:Bunkamuraザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1 B1F
電話: 03・3477・9111(代表)
開館時間:10時から18時まで(入館は17時30分まで)
休館日:2021年1月1日(金・祝)
※1月9日以降の土・日・祝日のみオンラインによる入場日時予約が必要。
料金及びアクセス:HP参照
https://www.bunksamura.co.jp/museum/exhibition/20_buffet/

取材・文/池田充枝

 

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