日本や世界各地の風景を詩情豊かに描き出し、昭和の国民的画家と謳われた東山魁夷(1908-1999)。平成から令和に移っても、魁夷の作品は人々を魅了し続けています。

魁夷は、東京美術学校で日本画を学んだのち、ドイツに留学。戦前戦中の苦難の時代を経て、戦後は風景画家として活躍。静謐で叙情性あふれる独自の境地を確立しました。

日本の春夏秋冬の折々を美しくうたいあげた東山魁夷の作品を集めた展覧会が開かれています。(2021年1月24日まで)

東山魁夷《春静》
1968(昭和43)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

本展では、「四季」と「風景」をテーマに、魁夷作品を中心に、魁夷の師・川合玉堂や結城素明ほか山田申吾、加藤栄三、山口蓬春、杉山寧らゆかりの画家たちの作品も展観します。

本展の見どころを、山種美術館館長の山﨑妙子さんにうかがいました。
「今回、特にご覧いただきたい作品は、第一に東山魁夷の描いた横幅9メートルを超える大作《満ち来る潮》です。

東山魁夷《満ち来る潮》
1970(昭和45)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

皇居宮殿を飾る魁夷の壁画を見た当館初代館長の山﨑種二(やまさき・たねじ)が、ひろく人々が鑑賞できるように、と同種作品を依頼しました。まさに日本の海のイメージと日本絵画の装飾性が凝縮され、魁夷の日本美への回帰を象徴する作品といえるでしょう。

第二に、魁夷によって同時期に制作された《年暮る》をはじめとする『京洛四季』連作です。作家・川端康成の言葉をきっかけに着手されたもので、古都の風情と繊細な季節のうつろいが見事なまでに表現されています。

東山魁夷《年暮る》
1968(昭和43)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

これらを中心に近代・現代の画家の優品を通じて、日本人が自然と向き合い培ってきた季節への敏感な意識を感じていただければ幸いです」

日本人に生まれたことを誇りに思える作品群に感動する展覧会です。ぜひ足をお運びください。

【開催要項】
特別展 東山魁夷と四季の日本画
会期:2020年11月21日(土)~2021年1月24日(日)
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
開館時間:平日10時から16時まで、土・日・祝日10時から17時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし1月4日、11日は開館)、年末年始(12月28日~1月2日)、
1月12日(火)
料金及びアクセス:HP参照
http://www.yamatane-museum.jp

取材・文/池田充枝

 

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