約25年前に作られた応援歌が心にしみる理由
――今回、リリースしたミニアルバムに収録された楽曲『旅人よ~The Longest Journey』は、「Windows95」の翌年・1996年にリリースされました。これは、テレビ番組『進め!電波少年』で、お笑いコンビ・猿岩石が、ユーラシア大陸を半年間かけてヒッチハイクで横断し、ロンドンまで目指すという企画において、猿岩石を励ますために作られたことでも知られています。
これは、僕が純粋な気持ちで作った応援歌なのです。『Runner』は応援の定番曲になっていますが、『旅人よ~The Longest Journey』こそが真の応援歌。
これは、過酷な挑戦をし、苦しみながら進んでいく彼らに寄り添い、ひたすら応援する曲です。猿岩石に歌うために、僕と河合(パッパラー河合)さんは、インドまで行き、彼らを探しました。そして、デリーの公園で猿岩石のふたりを見つけて、この曲を目の前で歌うことができたのです。そのときに、有吉君(有吉弘行さん)が泣いてくれた。
今年、再リリースをしたのは、コロナ禍で苦しんでいる人がものすごく多いことです。終わるとも知れないヒッチハイクの旅を続けた彼らと、今の状況はどこかかぶるところがある。この曲は、ひとりひとりの苦しみに、寄り添えるのではないかと感じたのです。
――「頑張れ」とか「夢を持て」などの言葉が一切登場しない応援歌。それが心にしみこんできます。
「頑張れ」という言葉を発してしまうと、そこで“応援する側・される側”という線引きができてしまうと感じるのです。作曲当時、猿岩石への応援する気持ちはそうではなかった。心を寄せ、応援し続けるという気持ちを伝えたかったのです。
歌詞に、「36.5度のカラダでのりこえなければならない」とあるのですが、コロナ禍になって、多くの人が1日何回も自分の体温を測っています。そのたびに、コロナ禍を生きていることに気付く。今の時代にピッタリな曲ですよね。
――コロナ禍においては、多くの人が時代に晒され、互いが応援し合っています。
そうそう、今回のミニアルバムには、つかの間の恋を歌った『リゾ・ラバ-resort lovers-』をアップデート。リモート時代の恋愛をテーマにした『リモ・ラバ-Remote Lovers-』も収録しました。
90年代半ばから、インターネットの登場、多チャンネルなどが発展し、多様化が進んでいきました。それが、コロナ禍でグッと一つになった。みんなの苦しみや、その中にある喜びを、このアルバムでは追求できたと思います。
【還暦を経て健康を維持し続ける秘訣や、人生100年……どころか「人生125年」と言い切る理由とは? 次回に続きます】
取材・文/前川亜紀 撮影/乾 晋也