マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。

ITやAIが進化するなか、この技術革新は今日の働き方に大きな変革をもたらしています。コロナの影響もあり、従来の枠組みを超え、フリーランス活動や副業、リモートワークやフルフレックス……ITやAI技術は新たな、そして多様な仕事の形態を可能にし、個々のライフスタイルや専門性に合わせた柔軟な働き方を実現しました。

しかし、一方で一人一人の働き方の自由度が格段に高まったことにより、リーダーの観点からは、部下を管理しにくい、チームの一体感が生まれないといった、マネジメントの課題も浮き彫りになっています。

今回は、フルリモートやフルフレックスを題材に、多様化する働き方に対応するためのマネジメントのポイントを考察していきます。

リモートワークはダメなのか? 高度化するマネジメント

当時Twitter(現X)を買収したイーロン・マスクは、Twitterの全体会議でこのように言い放ちました。

・リモートワークは原則禁止で、基本的にはオフィスにいる状態にする
・週40時間以上の出社を義務付け、例外を認める場合はイーロンの承認が必要
・この考えに同意できないのであれば退職を勧める

イーロンの主張としては、「オフィス内にいた方がコミュニケーションが活性化し、生産性が上がる」というものでしたが、日本でもテレワークが当たり前となってきているこの時代において、このイーロンの判断には懐疑的な意見も多く、世界的なテック企業のトップの発言は物議を醸し、世界中から注目されました。

ただ、AppleやGoogleでもリモートワークを推奨しないという動きも出たことから、この出来事はテクノロジーの進化がもたらした働き方の多様化によってマネジメントの難易度、そして重要度がさらに高まったことを示すものとなりました。

しかし、テクノロジーの進化は止まりません。AI技術はリモートワークをさらに推進、発展させると予測されます。仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を活用した仮想オフィス環境が、リアルタイムでのコラボレーションや学習を可能にし、地理的なディスアドバンテージが取り除かれ、柔軟でグローバルな働き方が一般化するでしょう。

これからのリーダーはこのような流れを的確に捉え、テクノロジーの利便性を最大限活用し、チーム力を高めるマネジメントが求められるのです。

活用するしかない! フルリモート・フルフレックスのメリット

では改めて、自由度の高い働き方のメリットを整理してみましょう。

メリット1:柔軟な働き方

リモートワーク、フルフレックスの最大のメリットは、働く場所や時間の柔軟性です。移動時間が不要となるため、その時間を有効に活用することができます。

メリット2:生産性の向上

集中しやすい環境を自分で作り出すことができるため、生産性も向上しやすくなります。オフィス環境とは異なり、業務を中断される要因が少なくなることから、集中力が高まりやすく、効率的に仕事を進めることができます。

メリット3:従業員満足度の向上

このような働き方は従業員のワークライフバランスを改善し、満足度も向上させます。柔軟な働き方が可能になることで、従業員は家庭やプライベートな時間を大切にしながら働くことができます。これにより、従業員のストレスが軽減され、メンタルヘルスが向上します。満足度の高い従業員は長期的に企業に貢献しやすく、離職率の低下にもつながるのです。

このように明らかに利便性が高まるリモートワークやフレックスを使わない手はありません。これらのメリットが噛み合えば、これまで実現できなかった成果を上げることが可能になるでしょう。

見えざるデメリットも…良かれと思ったマネジメントが思わぬ結果を引き起こす

ただし、このような多くの人が実感しているであろうメリットがある一方、やはり表裏一体、どんな方法論にも副作用とも言えるデメリットが存在します。これらをしっかりと意識した上でマネジメントを行うことが重要になってきます。次にこのような働き方のデメリットとマネジメントのポイントを整理していきましょう。

デメリット1:チームの一体感、結束力の低下

まず、多くのリーダーが直面するマネジメントの課題がこちらでしょう。物理的な接触回数、コミュニケーションの量が少なくなるほど、チームの一員であるという意識、一体感が希薄化します。これにより一人一人の業務が噛み合わず、組織の目的に対する推進力も低下してきます。一人一人が連動し、他のチームメンバーに波及効果を与えてこそ組織化する効果が生まれますが、この状態ではチーム力向上は期待できません。リーダーはメンバーが物理的に離れていても、チームの一体感を醸成し、一人一人を連携させなければならないのです。

ここでのポイントが「チームルールの徹底」です。

リモートワークやフレックスが促進されるほど、メンバーは自分の都合のいいように業務を進めていきます。自分の好きな場所で好きなタイミングで業務を行なっていいのですから当然です。しかし、そのことが結果として「チームルール」の優先度を下げることにつながり、同一チームの意識を低下させるのです。

人は同じものを共有することで同一コミュニティーの意識が高まります。サッカー日本代表を応援するときに、みんなで青のユニフォームを着て応援することで一体感が高まる光景はイメージしやすいかと思います。一方、逆に共有する何かがなければ一体感は醸成されないのです。

ここで効果を発揮するのが「チームルール」なのです。リーダーはチームが目的に近づくために必要不可欠なチームルールを設定、共有、機能させることで、一人一人の業務を連動させるとともにチームの一体感を醸成させることが求められるのです。

デメリット2:コミュニケーションロスの増大

次に、気をつけたいポイントがコミュニケーションロスです。職場で時間を共有していれば、何か問題が起こった際、当事者間で話をすることですぐに解決できるようなことでも、働く場所、時間が異なることによって、文章に書き出し、社内SNS等で共有するといった作業の必要性が発生します。言った言わない問題の撲滅には有効かもしれませんが、重要度の低いやりとりが何度も続き、お互いの時間を奪っている可能性も否めません。

ここでのポイントは、その文章が伝える側、伝えられる側の認識が一致する表現になっているかどうかです。

例えば、「すぐに書類を提出してください」と言われても、「すぐに」の認識は人によって異なりますし、提出しなければならない理由も分かりません。このような伝え方であれば、伝えられる側の仕事の優先度は上がりません。この場合であれば、具体的な提出期限や提出が必要となっている理由を明確に記入する必要があるでしょう。メンバーとの効率的な連携は組織運営では必須条件であるため、コミュニケーションに必要な要素をリーダーが定義し、定期的にチームコミュニケーションが円滑に行われているか確認が必要です。

デメリット3:マネジメントコストの増大

そして、もう一つ意識したいことは、業務効率化を図るために推進したはずのリモートワークでマネジメントコストが増えていないかどうかです。

リーダーはチーム全体の結果に対して責任を持つ立場です。そのため、離れているメンバーがどのように業務を行なっているかは当然気になるところでしょう。ただし、だからと言ってメンバー一人一人がどのように業務に取り組んでいるかを全てチェックしようとすると、究極的にはメンバーの人数×業務時間が必要となり、リーダーのマネジメントに費やす時間はいくらあっても足りません。よって、メンバーのどの部分を管理(マネジメント)するのかが非常に重要になり、また、その管理方法によってメンバーのパフォーマンスも大きく変わってくるのです。

結論からお伝えするとメンバーがゴールに向かう経過(プロセス)の管理はNGです。

リーダーがメンバーの業務のやり方に対して細かく口を出すような経過介入を頻発するとメンバーは「指示待ち」の傾向が高まります。また、その指示に従ってうまくいかなかった場合は、そのことを上司の指示のせいにするような免責思考が強まります。

よって、メンバーの役割、それに対する目標またKPI(重要業績評価指標)を明確に設定し、その目標(KPI)に到達するまでのプロセスをメンバー自身に考えさせ、責任を持って実行させることが重要になります。それにより自責思考が高まり成長が促され、リーダーの思考を超えるような創造的思考も期待できます。そしてもちろん、マネジメントコストは最小化することができるのです。

まとめ

いかがだったでしょうか。テクノロジーは想像を遥かに超えるスピードで進化を遂げ、それによってこれからも働き方は大きく変化をしていくでしょう。しかし、あくまでそれは手段に過ぎません。どんなツールも使いこなせなければ宝の持ち腐れとなってしまいます。

今一度、メンバーの働く環境、自身のマネジメントがチームのパフォーマンスを最大化させているか見直してみるのもいいでしょう。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
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