マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。

識学が2022年5月に発表した調査レポート(五月病に関する調査)によると、83.3%の方が五月病で業務に影響があったことが判明しました。五月病で「業務に集中できなくなった」 という回答が55.3%。原因は「社内・社外の人間関係」が最多、会社をやめたいと思った人 60.0%という結果でした。皆さまの中にも「優秀な若手が結果を残せず苦しんでいる」、「入社したばかりの社員が会社を休みがちになった」と頭を悩ませている方はいらっしゃいませんでしょうか。

今回は、部下が五月病にならないマネジメントとマインドセットについてお伝えいたします。

五月病とは?

4月に異動した社員や入社したばかりの新人にとって、5~6月は集中力が低下しやすい時期と言えるでしょう。環境の変化が精神的負担となり、心身の不調を引き起こす可能性があるからです。これがいわゆる「五月病」となります。厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」では、五月病について次のように定義しています。

ゴールデンウィーク(春の大型連休)を過ぎた頃に注意が必要なのが、「五月病」です。新入社員や人事異動など環境変化のあった方が、新しい環境への適応がうまくいかず、なんとなく体調が悪い、やる気が出ないなど心身に不調があらわれる状況を言われています。五月病は正式な病名ではありません。医学的には、「適応障害」、「抑うつ状態」などの病気と関係があるとされることが多いです。

「こころの耳」https://kokoro.mhlw.go.jp/

また、目標を明確にするということは、目標に到達するまでの期間と工程を分解して、途中のゴールを設定することにつながります。「〇年〇月の模擬試験で〇点をとる」「打率3割。県予選で〇〇高校に勝つ」などです。ビジネスに置き換えれば、KPI(重要業績評価指標)の位置づけです。まずはKPI達成に集中することで、最終目標の到達確度を高めていくのです。

五月病が起きる理由

なぜ、環境の変化で五月病になるのでしょうか。
この理由には、(1)目標が不明確であること(2)人間間関係の悩みという二つが挙げられます。

目標が不明確であるとは、要するに何をしたらよいか分からず迷っている状態のことです。部署や役職、業務内容が新しく設定され、今までやってきたことができなくなると、不安に襲われてしまいます。この状態は大きなストレスですが、子どものように泣きながら助けを求めるまねは、大人にはできません。

人間関係の悩みとは、他人の目を気にし過ぎるあまり仕事に集中できなくなってしまう状態です。識学ではこれを「不必要な恐怖が発生している」と表現しています。

人間関係に悩みやすい人や「他人からどう思われているか」が気になって仕方がない人は少なくありません。そうした人にとって、親しい仲間に囲まれていたチームを移り、新しい人間関係を築こうとするのは大変です。

人間関係の悩みは、目標が不明確だと助長されてしまいます。自分がすべき仕事に最大限集中できているのであれば、人間関係など気にしている暇はないでしょう。集中できていない環境がより周囲の視線が気になる等の意識状態を作り出します。では、こうした状態を防ぐために、上司は具体的にどのような対策を取ればいいのでしょうか。

目標設定と不必要な恐怖の排除

上記、(1)目標が不明確であること、(2)人間間関係の悩みを防ぐために必要なのは、上司による管理です。

管理とは、部下一人ひとりに期限付きの目標を設定し、期限を迎えたら達成可否を確認する。達成時は新しい目標を与え、未達成時には達成に向けてどう行動変化していくのかを部下に考えさせる。この一連の流れを指します。

こうすることで、目標に向けて走り出した社員が迷わないように上司が導くのです。弊社識学では、1週間に一度、設定目標を確認するための会議を開くことを推奨しています。

また、社員の人間関係の悩みをはじめ、「不必要な恐怖」も上司側で取り除いてあげましょう。以下のようなイメージです。

「他者からの評価はあなたにはコントロールできないものです。相手のためを思ってしたつもりの行動でさえ、人によっては親切でなくお節介と受け取ります。あなたは目標を達成することにだけに集中してください。結果に対する評価は上司がしっかりと行いますから」

理想のリーム状態

一人ひとりの目標を明確に設定し、不必要な恐怖を取り除く。識学では、この二つを常に意識しながらマネジメントを行うことを推奨しています。

「同僚と仲良くするな」と言うつもりはありません。ただ、上司が「社員同士仲良くしましょう」というスローガンを掲げると、ルール違反した同僚や部下に対し、「指摘したらチームの輪を壊すかもしれないから黙っておこう」と社員が考えたり、ミスが発生した際に「あなたのせいじゃないよ」と社員同士で責任の所在をあいまいにさせようとしたりする恐れがあります。仲良くすること自体が目的化してしまうわけです。

理想は共通の目標があって、そこに向かって結果を残しながらお互いに何でも言いたいことが言える間柄。例えるなら、映画も大ヒットした人気バスケットボール漫画『SLAM DUNK(スラムダンク)』の湘北高校のようなチームです。

優秀な社員でも放任はNG

「優秀な社員に管理は必要ない。管理することで伸び伸び仕事ができず、能力を発揮できなくなる」

そのように考えている上司もいるでしょう。しかし、どんなに優秀な社員であっても管理は必ずしてください。管理とは、部下のやり方にいちいち口出しするという意味ではなく、あくまで目標に向けて走り出した社員の迷いを取り除くためのものだからです。

あるシステム管理会社で実際にあった五月病の事例を紹介します。

その会社には、若手のエースと呼ぶべき社員がいました。社長はその社員を信頼していたために一切管理をせず放任していました。ある時期からエース社員が精神的に体調を崩してしまいました。しかし、経営者は放任していたがゆえに、その異変に気付けませんでした。そして、顧客から緊急対応を求められたとき、その社員は呼び出しに応じられなかったのです。顧客は激怒し、契約を打ち切ってしまいました。これは「エース社員だから」という理由で放任していなければ防ぐことができた事故です。

このような事態が発生してから、再発を防ぐ目的で社員に「悩みはないですか」と、頻繁に1on1ミーティング等を通じてヒアリングする上司がいます。しかし、これはお勧めしません。なぜなら、悩んでいないときに「悩みがないか」と聞かれたら、社員が無理やり悩みをつくり出し、上司側の意思決定に誤りが生じる恐れがあるからです。

上司がすべきことは「いつでも相談していいですよ」というアナウンスを発し続け、必要であれば相談窓口を設けることです。

五月病から社員を守るために

社員は会社という安全な枠組みの中にいるのだと思えるからこそ、思い切り目標に向かって集中できます。皆さんは是非、社員に会社というのは安全な枠組みなのだという環境認識をさせてあげてください。結果的にそれが、五月病から社員を守る仕組みになるはずです。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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