マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を考察するシリーズ。今回は、DX(デジタルトランスフォーメーション)についてです。
なかなか進まないDX
「DX」という言葉が企業で飛び交うようになったのは、2018年12月に経済産業省が「産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進」が始まってからです。ところが現場では、DXの意味もわからないまま「ディーエックス」に取り組んでいる企業もよく見られます。
経済産業省によると、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」がDXの意味とのこと。
参照:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html
これから先、「どのように組織として勝っていくのか」を戦略的に考えたうえでないと、DXは機能しないということです。まとめると、下記のようになります。
【DXの手順】
1.実現したい未来=経営ビジョン(5年後・10年後にどのような会社にしたいか)を描く
2.経営者が自社の理念やパーパス(存在意義)を明確にする
3.現在の状況と目指すべき状況の差を埋めるために解決すべき課題を整理する
つまり入り口を「ITの導入」から考えてしまうと、目的をもたないDXが横行してしまいます。これがDXの意味もわからずに「ディーエックス推進」をしてしまうことの弊害です。
中小企業の経営者が、未来へ向けて決めるべき理念やパーパス実現の進め方
DXを考えるうえでは、理念やパーパスを明確にすることが重要です。パーパスとは、簡単に言えば、社会へ貢献し市場で勝つための目的設定ともいえるでしょう。
パーパスを立てる際に大切なのは、今まで培ってきた技術や経験・知識を活用して、企業にどのような新しい価値を見出すかです。変化する社会や市場の中で、どの位置で社会に貢献できるかを考えることが大切なのです。
パーパスを設定後は、KGI・KPIとして具体的な指標にパーパスを落とし込んでいきましょう。目標を立ててはじめて現状との差分を洗い出すことができます。経営者と従業員との認識の差を減らすためにも定量化して進めましょう。
定量化することで、差分を明確にできます。人は自身の目標(理想)に達していないことで問題意識が生じます。逆に、差分が明確にならない限りは課題が明確にならないということです。
「定量化し、差分を明確にし、理想との差分を埋めるための行動を取る」
こうすることで、理想へと少しずつ近づいていくことでしょう。お気づきのとおり、この不足を埋めるタイミングでDXという手段が出てきます。データやデジタルを活用し、理想のビジネスモデルや理想の経営へと近づけていく。これこそがDXの考え方なのです。
まずはここからDXを始めよう
実際にDXを進めるという決断が出された場合にぶつかる壁が「DX人材がいない」という問題です。DXを進めるためには「DX人材が必要なのではないか?」とつい考えてしまう方も多くいらっしゃることでしょう。
ですが、DXを進める際にDX人材は必要ありません。必要なのは下記の3つだけなのです。
1.言語化すること
2.変化を恐れないこと
3.責任者を立てること
言語化すること
DXを進めていく上で不可欠な試みが「言語化」することです。業務の中には、言葉にしづらい業務というものが存在します。例えば、営業です。営業は営業担当者の匙加減で報告内容を決めてしまうことがあります。ところが、人によって報告内容が違うなどの状態ではDXは進みません。
ですから、人によって異なる業務であったとしてもとにかく言語化することが大切です。報告内容であれば、何を報告しているのかを事実をもとに情報収集をします。感情的な内容や理由よりも先に、事実を収集することが大切です。
変化を恐れないこと
人口減少していく日本において、少ない人数で効率よく未来へ向けて進化していくことは、マインドも含めたパラダイムシフトが必要になってきます。ですので、変化を恐れずDXに取り組むことが必要になってきます。
また、変化を恐れている人材も含めてDXを進めることも大切です。例えば、仕事を抱え込むことで組織内で存在意義を獲得しようとするベテラン人材がそれに該当します。ベテラン人材のなかには自分にしかできない仕事をもっていることで、それが既得権益化している場合もあります。したがって、DXなどができない理由を挙げることが多いのです。
こうしたときには、事実を集めましょう。何をいつまでにどうしているのかを言語化させることで、多くの業務はDXの対象になります。変化を恐れている人材に対しても平等に接して改革を進めていくことが大切です。
責任者を立てること
DXのようなプロジェクトを進めるうえで必要なのは、DX人材ではなく責任者です。責任者を1人立てることで、前述した事実収集や既得権益の予防が可能になります。多くのプロジェクトが頓挫してしまうのは、誰に責任があるのかが明確になっていないからです。
期日と責任、権限を明確にすることで「DXができない」状態をなくします。DXを進めるためには責任者が不在にならないよう、誰に任せるのかを正しく決定する必要があります。
中小企業のDXには、営業のDXが不可欠
営業と言うと、「商品やサービスを売る」と言うイメージを持つ人が多いと思います。しかし、今の時代、商品やサービスは様々あふれています。ネットで調べても情報が多すぎて選ぶのも難しい時代です。
今の営業のやり方を考えると、「市場や顧客のニーズを調べて把握すること」が、まず重要になってきます。
どのターゲットにどのサービスを提供していくのか、またどのように広告していくか、マーケティングの要素が重要となってきます。
つまり、営業担当者が取引先で得ている情報を社内で共有し、会社として時代にあった商品やサービスを提供し続けることが重要です。また、国内にとどまらず海外に活路を見出すなど市場の設定もキーになってきます。その時に一番顧客に近い営業担当者が個人で情報を抱えていればどうでしょうか。会社としてはその営業担当者から情報があがってこなければ会社としての戦略も打てません。
営業担当者が持っている情報をデータ化して共有することで、会社としての強みや戦略をベースに勝つ仕組みをつくることができます。とはいえ、規模が小さいほど属人化する傾向になり一部の優秀な営業担当者の責任が大きくなっていることがあります。しかし、この状態は優秀な人に会社の命運を依存している状態であり、大変危険な状態といえるでしょう。
営業をリアルにデータ化して活用することで、生産性をあげるだけでなく、チームとして勝っていく体制をつくることができます。会社の売上・利益を上げていくためには、個人の成長も必要ですが、チームとして、どのように成長していくかが大事です。情報を集め活用していくことが変化が速いからこそ求められます。
DXは、何かデジタルツールを導入することではなく、データ化してデジタル技術を活用して分析・戦略を立て、会社が持つ様々な資産や経験値を利用して、生産性をあげていくことです。
経営者が自社の理念やパーパスを明確にして、未来ビジョンをつくることがスタートとなります。その理念にしたがい、社員全員が同じ方向を向くためにDXは有効な手段です。
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