人材育成などの場面において、「コーチング」や「ティーチング」といった言葉を聞くことも多いかと思います。それでは、あなたはコーチング、ティーチングといった言葉を正しく理解しているでしょうか? マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」で、コーチングやティーチングについての理解を深めましょう。

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あなたは、コーチングやティーチングという言葉を聞いたことはあるでしょうか。

どちらも人材育成や面談などのシーンで使われることが多いワードです。どちらも同じような言葉のように思えますが、意味や目的は全く異なります。

本記事ではコーチングとティーチングの違いや、それぞれの指導手法を有効活用する方法も紹介していきます。

ぜひ参考にしてみてください。

コーチング・ティーチングの違いは?

コーチングは、受け手が自らの力で答えを導き出せるようにサポートする手法です。そのため、コーチングの目的は「受け手の成長」にあります。

一方、ティーチングは、上司がこれまでに積み上げてきたノウハウを部下に指導する手法のことです。そのため、ティーチングの目的は「スキルの伝授や教育」にあります。

このように、コーチングとティーチングは同じような意味のように見えて、その目的が違えば方法も大きく異なるのです。

コーチングのメリット

コーチングのメリットは以下の3つです。

・主体的で思考力のある人材を育成できる
・モチベーションの維持につながる
・潜在的な可能性を引き出せる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

主体的で思考力のある人材を育成できる

コーチングは受け手が自ら考えて答えを導き出す手法なので、主体的で思考力のある人材を育成できます。

キャリアを長期的に見た時に、自主的に答えを導き出せる人材に育成することは、非常に有益でしょう。

モチベーションの維持につながる

自分自身で考えて仕事をするようになると、自己決定感が満たされて、仕事に対してやりがいを感じるようになります。そのため、コーチングは部下のモチベーション維持につながると言えるでしょう。

部下のモチベーションが高いままキープされれば、メンタルヘルスなどの手間をかける必要性もなくなります。

潜在的な可能性を引き出せる

コーチングは部下の潜在的な可能性を引き出すことができます。

自主的に考えさせることで個性が生まれ、それが部下の才能を引っ張り出すのです。個性ある人材を育成できれば、会社に大いに貢献できるようになるでしょう。

ティーチングのメリット

ティーチングのメリットは以下の3つです。

・短時間で大切な情報やスキルを伝授できる
・大勢を一度に育成できる
・チーム内で共通認識を持たせられる

それぞれ詳しくみていきます。

短時間で大切な情報やスキルを伝授できる

ティーチングは、上司が部下に直接的に答えを指導するので、短時間でスキルを伝授できます。そのため、直近で必要なスキルを学習させたい時に有効な手法だと言えるでしょう。

スピード感をもって人材育成することができます。

大勢を一度に育成できる

ティーチングであれば講演会形式で指導できるので、大勢の部下を一気に育成することもできます。そのため、規模の大きい企業ではティーチングによる指導が効果的です。

また、新入社員全体に対する指導としてもティーチングは有効だと言えます。

チーム内で共通認識を持たせられる

ティーチングは上司のノウハウをそのまま部下にインプットさせられるので、チーム内で共通認識を持たせることが可能です。企業理念やビジョンを指導したい時に有効な手法だといえそうです。

また、新規事業を起こす際の最初の指導でも有効でしょう。

コーチングのデメリット

コーチングのデメリットは以下の3つです。

・長期的スパンでしか効果が出ない
・大勢を同時に育成できない
・コーチングに関する知識やスキルが必要

それぞれ詳しく見ていきましょう。

長期的スパンでしか効果が出ない

コーチングは長期的スパンでしか効果が出ません。そのため、スキルをすぐ身に付けさせたい時などには、コーチングはほとんど役に立ちません。

ティーチングとは異なり、コーチングは部下のポテンシャルをゆっくり引き出す手法だと考えた方が良いでしょう。

大勢を同時に育成できない

コーチングは基本的に1on1で指導するため、大勢を同時に育成できません。そのため、多くの部下をコーチングで育成しようと思うと、膨大な時間を必要とします。

大勢を同時に育成したい場合は、ティーチングを採用しましょう。

コーチングに関する知識やスキルが必要

コーチングは、コーチングに関する知識やスキルを兼ね備えた上司が行わなくてはなりません。

マネジメントスキルの高い上司が望ましいと言えますが、上司の全員が優秀であるケースは稀です。そのため、コーチングは属人化しやすく、上司によって質が異なるという問題が生じる可能性があります。

ティーチングのデメリット

ティーチングのデメリットは以下の3つです。

・教える側の能力以上は伝授できない
・受動的な考えが染み付いてしまう
・潜在している考えを引き出せない

詳しく見ていきましょう。

教える側の能力以上は伝授できない

ティーチングは、上司のノウハウをそのまま部下に伝授する手法です。そのため当然の話ですが、上司が保有している知識やノウハウ以上のことを部下に伝授することはできません。

クリエイティブな能力を養わせるのであれば、コーチングの方が効果的な可能性があります。

受動的な考えが染み付いてしまう

ティーチングは部下に対して答えを直接指導してしまうので、部下は思考する必要がありません。

それが部下にとって当たり前になってしまうと、受動的な考えが染み付いてしまい、主体的な行動ができなくなる可能性があります。指示待ち人間、上司の言うことしかできない部下になってしまうので、結局上司が手間をかけることになるかもしれません。

潜在している考えを引き出せない

ティーチングは上司の考えを部下に指導する手法なので、部下の考えは全く配慮されません。

そのため、部下の潜在的な考えを引き出すことができず、それが大きな機会損失になる可能性があります。

コーチングが有効なケース

ここでは、コーチングのメリットを最大限活用できるケースを紹介していきます。

能動的に能力を引き出したい場合

部下の能力を能動的に引き出させたい場合にコーチングは有効です。能動的に能力を引き出せるようになれば、自分自身で能力を発揮できるようになっていくでしょう。

部下一人で勝手に成長していくので、伸びしろも大きく、長期的に会社に大きく貢献するようになります。

長期的スパンで深く思考を引き出す場合

コーチングは部下が一人で自主的に成長していくため、長期的スパンで深く思考を引き出したい場合にコーチングは有効です。直接的にスキルを指導するわけではないので時間はかかりますが、長期的に見た時の利益は大きいと言えるでしょう。

また、部下のペースに合わせてゆっくりと指導することで、部下自身のオリジナリティも出ます。

ティーチングが有効なケース

ここではティーチングが有効なケースを紹介していきます。

対象者の現状の能力が乏しい

ティーチングは、対象者の能力が乏しい場合に有効です。

実際、コーチングを実施しても対象者の能力が乏しければ、潜在能力を引き出せても大した人材になりません。それであれば、まずは対象者の基礎能力をティーチングで育成して、それからコーチングで長期的に指導するというのも悪くない選択でしょう。

特に新人研修など、社会人基礎力がまだまだ足りない対象者に、ティーチングは有効です。

障害対応などの緊急性が高い場合

システムの障害対応など、緊急性が高い場合にティーチングは有効です。

ティーチングでは上司一人のノウハウをすぐ伝達させることができるので、短時間で指導が完了します。

非常時のエラー対応やクレーム対応などの際は緊急性も高く、またやるべき内容も決まっているため、ティーチングによる指導が有効でしょう。

コーチングの効果を高めるポイント

コーチングの効果を高めるポイントは以下の3つです。

・信頼関係を構築する傾聴力
・自発的な気づきを与える質問力
・行動・成長の変化に対する承認

それぞれ詳しく見ていきましょう。

信頼関係を構築する傾聴力

コーチングは1on1での指導になるので、部下との信頼関係を構築することが大切です。そして、信頼関係を構築するためには、部下の考えを引き出すための、上司側の傾聴力が必要になるでしょう。

どんなに上司が良いことを喋っていても、部下の口から考えを引き出すことができなければ、コーチングの意味がありません。上司は自らの聞く姿勢を重視して、コーチングを実施するようにしましょう。

自発的な気づきを与える質問力

コーチングは対象者の自発的な気づきが重要になるので、それを引き出すための質問力も大切です。

「はい」か「いいえ」だけの質問ではなく、「5W1H」を中心に質問するといいでしょう。

また、「もし〇〇だったらどうする?」という「IF」の質問も有効です。

行動・成長の変化に対する承認

対象者の潜在能力を引き出すためには、褒めて伸ばすスタイルで指導するのがいいでしょう。

そうすることで対象者は自身の行動・成長の変化からくる承認欲求が満たされるため、自分からどんどん成長しようとします。対象者に何か成長が見られたら、しっかり褒めたり意見したりするのがいいでしょう。

ティーチングの効果を高めるポイント

ティーチングの効果を高めるポイントは以下の3つです。

・教わる側の能力を適正に判断する
・教えた後の能力を適正に判断する
・フィードバックとセットで実施する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

教わる側の能力を適正に判断する

ティーチングする前に、まずは対象者の能力を適正に判断しましょう。

「この人にはどのような能力が欠けているのか?」というのを事前に把握することで、必要な項目だけを強調させることができます。

教えた後に理解できているか確認する

ティーチングした後は、対象者がしっかり理解できているかを確認するようにしましょう。理解度をチェックするための試験を設けるのも一つの手です。

また、指導したことを定着させるために、定期的に試験を設けるのもいいでしょう。

フィードバックとセットで実施する

基本的にティーチングは上司の考えをそのまま指導する手法なので、部下からのフィードバックがありません。

そのため、試験を設けるなどの何かしらのフィードバックが得られる仕組みが必要になります。

コーチングの具体例

ここではコーチングの具体例として「コーアクティブ・コーチング」と「インテグラル・コーチング」を紹介していきます。

コーアクティブ・コーチング

コーアクティブ・コーチングとは、コーアクティブ・コーチによるコーチングのことを指します。

コーアクティブ・コーチは世界最大のコーチ養成機関である米国CTI認定資格の「Certified Proffesional Co-Active Coach(CPCC)」を取得しているコーチのことです。

そして、コーアクティブは「協働的」という意味であり、コーアクティブ・コーチングはコーチとクライアントが対等なパートナーとして互いに力を合わせるという特徴があります。

これは上司と部下の関係だけでなく、世の中のあらゆる人間関係に応用可能です。

学校における先生と生徒の関係、親子の関係、友人同士の関係など、コーアクティブ・コーチングはさまざまな領域で応用できるので、「パートナー」を意識して日常生活に取り入れてみてはどうでしょうか。

インテグラル・コーチング

インテグラル・コーチングはカリフォルニア州発祥のコーチングメソッドです。

インテグラルには「統合」という意味があり、インテグラル・コーチングは個人の全人格的な成長を支援する狙いがあります。これは、アメリカの思想家であるケン・ウィルバーが提唱した「インテグラル理論」に基づいたILPと呼ばれる自己成長メソッドを、1on1コーチングに適用させたものです。

他のコーチングメソッドに比べると、インテグラル・コーチングは包括的な内容となっているため、強靭な人材を作り上げることが可能だと言われています。

まとめ

現在、コーチングも、ティーチングも社員の育成方法として重要視されています。また、上記を実現するための手法「1on1ミーティング」などの指導方法もまた、重要視されています。

【この記事を書いた人】
識学総研 編集部 株式会社識学内にある、コンテンツを企画・制作する編集部です。 『「マネジメント」を身近に。』をコンセプトに、マネジメント業務の助けになる記事を制作。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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