今日ご紹介するのは、大阪は北区堂島浜にある韓国料理店『ほうば』さんです。韓国料理、とはいっても、そのイメージを覆すほどに見事な料理を食べさせてくれます。
まずなにより、この店では「焼肉」と「キムチ」はそもそも登場しません。
はじめに15種ほどの野菜料理、ナムルが運ばれてきます。家庭料理がベースになっているとはいえ、その質の高さ、仕事の丁寧さ、味わいの豊かさ、どれも比類がありません。
そのあと、「煎」いわゆる「チヂミ」(今回は「フカヒレ」のチヂミでした)に続き、さらに「あわび」のおかゆ、「バチコ(なまこの内臓)とはまぐり」のスープと続きました。
このスープがすごい。いきなりバチコの香りが直撃してきて、一口スープを口に含むと、途端に海へ飛び込んだ感覚に襲われました。塩気があるのに、塩味は強くなく、底に沈んでいるはまぐりをいただくころには、潮の味は引き、穏やかな海になっていました。
こんなスープ、中国料理でもフランス料理でもいただいたことがありません。
主菜は骨付き牛肉と大根、茄子の炒め。辛めのソースが全体を包みますが、辛さが目立たず、素材の滋味が溢れたひと皿でした。
御飯と一緒にいただくと、これが美味いの、なんの! こんな品格のある韓国料理は、この『ほうば』以外ではちょっと味わったことがありません。
■ほうば
住所/大阪市北区堂島浜1-2-1 2F
電話/(06)6456-0080
営業時間/17:00~23:30(L.O.21:00)
定休日/木曜日(不定休有り)
http://houba.jp/
文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。