【にゃんこサライ 第2回】
トイレ環境の見直しポイントは「広さ」「安定感」「頭数+1」の3つ
空前の猫ブームといわれる昨今。でも、猫の生活や行動パターンについては、意外と知られていないことが多いようです。人間や犬の行動に当てはめて考えて、まったく違う解釈をしてしまっていることも少なくありません。昔から猫を飼っているから、猫の性格や習性を熟知していると思っていても、じつは勘違いしていたということが結構あるようです。
そこで「にゃんこサライ」では、動物行動学の専門医・入交眞巳先生(日本獣医師生命科学大学)にお話を伺いながら、猫との暮らしで目の当たりにする行動や習性について、専門的な研究に基づいた猫の真相を解明していきたいと思います。
私は大学の獣医学部で教える傍ら、ペットクリニックでも診察をしています。猫の飼い主さんからのS.O.S.で最も多いのが、「うちの子の粗相をなんとかしたい」というものです。粗相、つまりトイレの悪い癖についてということなのですが、これ、猫について充分わかっている方でも、悩みの種のひとつとして「あるある!」と頷いてしまう向きも多いのではないでしょうか。
猫の粗相でお悩みの方に、まず挑戦して頂きたいこと。それは、トイレ環境の見直しです。前回もお伝えした通り、トイレ環境を猫好みに改善するだけで、かなり多くの粗相問題が解決されるのです。ポイントは大きくわけて3つあります。
1.足のせポーズは要注意
少なくとも猫の体の1.5倍の大きさがあれば、トイレの中でスムーズに体の向きを変えることができ、入念に砂かけができて猫の満足度も高まります。猫がトイレの縁に前肢や後ろ肢をかけて用を足している姿は、見ようによってはキザですが、当の猫にとってはトイレが狭くて仕方なくそういう姿勢になってしまっている可能性もあります。
また、最近は、砂が飛び散るのを防ぐことができるカバー付きのトイレが人気ですが、狭いトイレ面積の上、カバーまでついていると動きにくいですし、臭いもこもる原因にもなります。このカバー付きのトイレは、猫にとってはどうにも居心地が悪いみたいです。入口から顔を突き出して、縁に手を当てて踏ん張っているようなら、まずはカバーを外して様子を見て、どうにも狭そうであれば大きなトイレに変えることも検討したほうがよさそうです。大きなトイレの上にかかるカバーであれば、問題を感じない猫は多いようです。
2.安定感は重要ポイント
猫は4本の細い肢で体を支えています。地面に接している肉球と呼ばれるぷくぷくと柔らかい肌の部分の面積は狭く、でこぼことした砂の上では踏ん張りづらいのです。ですから、安定感があって、小さな手でもかきやすい細かい砂の方が猫にとっては安心だし使いやすいようです。子猫の頃から大粒タイプの砂を使い慣れている猫もいますが、猫によってはあてがわれたものを仕方なく使っていてストレスを感じている場合もあるかもしれません。
3.トイレの数はできれば頭数分+1
トイレの数は、最少でも飼い猫の頭数分は用意することをお勧めします。スペースに余裕があれば、余分に1つあればなお良いです。「猫のトイレをたくさん家に置くのは嫌だなー」というお気持ちはわかります。でも、猫はとってもキレイ好き。複数のトイレがあれば、ひとつが汚くなっても、もうひとつのトイレがあるのでそちらで用を足すことができます。
排泄するためにわざわざ座布団の上に行ったりする必要もないわけです。複数の猫がいるお宅では、ひとつのトイレがふさがれていたり、ジャイアン気質の同居猫にトイレに行くのを邪魔されるような状況であっても、別のトイレがあればそちらに行くこともできます。複数のトイレを置くことは、トイレをめぐるトラブルを減らすことにもなるので、粗相の心配も減るわけです。
猫もこのあたりは人と同じです。幼かったころ、私も自宅にトイレが複数あるほうが、朝のトイレにおける妙な気兼ねがなくて家族にはいいなー、と思ったものです。トイレの設置場所は、それぞれの家や部屋の構造や環境、猫の性格にもよりますが、できれば猫のお気に入りの場所の近くに置いてあげるのがいいでしょう。リビングなど人が集まって騒がしいような場所では猫としても気が散って用を足しづらいし、お気に入りの場所から遠く離れていると、行くのが面倒になったり、我慢できずトイレにたどり着く前に他の場所で用を足してしまったりする危険があります。