【私のお気に入り~第104回】
料理家・宮川順子さんのレシピエッセイ『料理嫌いだった私が「365日×15年」毎日台所に立ち続けた理由』
この本は料理本ではありますが、正確にいえば料理の哲学書です。
「人間のからだはすべて食べたものだけでできている」を命題に、何を調理するか、それをどう食べるかを、ご自分の家庭を見つめながら、じつに具体的に書いてあります。
難しいことを易しく、易しいことを面白く、面白いことを深く述べた名著です。そう、<いのちのレシピ>が書かれた料理書といえばよいでしょうか。
著者で料理家の宮川さんは最後に「家庭料理は愛情です」と結論付けていらっしゃいますが、15年の歳月をかけて、ひたすら基本を繰り返し、そして失敗から多くを学び取った技術があるからこその「愛情」なんですね。ただ料理に「こころ」を込めればいいというもんではありません。
野球のイチロー選手が、バッターボックスに立って、どんなに「こころ」を込めても、バッティングの技術がなくてはヒットを打てないのと同じです。
読み終えて、いつか、宮川さんの「いのちのレシピ」による料理をいただきたくなりました。
■料理嫌いだった私が「365日×15年」毎日台所に立ち続けた理由(1,400円+税、ぴあ刊)