取材・文/柿川鮎子
【緊急提言】ペットのコロナ対策、飼主さんへ3つのアドバイス
コロナ対策で人や社会が変化しています。飼い主さんの生活が変われば、飼育されているペットの生活も変化します。休校で子供が家にいるようになり、リモートワークで父親が家庭で過ごす時間が増え、ペットが人と過ごす時間も増えています。これまで留守だった時間に、絶えず人がいるというのは、ペットにとって初めて体験する環境でもあります。

ペットと楽しく遊ぶ時間が増えるのは良いことですが、現在の環境において健康被害をださないようにするために、今回は飼い主さんに、ぜひ参考にして欲しい、ペット飼育の緊急提言です。教えてくれるのは、ひびき動物病院院長の岡田響先生です。

■ペットが感染源と疑われるエビデンスはない

岡田先生が「新型コロナウイルスに関してペットの飼い主さんが知っておきたい3つのポイント」で教えてくれた3月初旬から現在まで約一か月が経ち、ペットと新型コロナウイルスについての話題は日々アップデートされています。

人から犬への新型コロナウイルス感染について、OIE(国際獣疫事務局、正式名称は世界動物保健機関)の見解でも可能性があるとされていますが、「現在、人から新型コロナウイルスがうつった動物が、このウイルスを拡散する役割を担うという証拠はありません。人での発生は、人から人への接触によって引き起こされるものです」とされています。

また、世界小動物獣医師会(WSAVA:World Small Animal Veterinary. Association)は、伴侶動物がコロナに感染している人と接触した場合、その伴侶動物は他の人に病気を伝搬させるか?という点に関し、

「伴侶動物がSARS-Cov-2 に感染するまたは伝搬するというエビデンスは限定的である。伴侶動物が今回の新型コロナウイルスによって病状を示すかどうか分からない。しかも、伴侶動物や畜産動物が人の新型ウイルス感染源と疑われるようなエビデンスは現時点ではない。本件は急激な展開を見せることがあるため、新しい情報が入り次第アップデートされる」 と発表しています。

今のところ、コロナウイルスは「種特異性」が高いため動物種を超えることはあまりないという見解が基本姿勢です。とはいえ、“人との濃厚接触で、もしかしたらうつるかもしれない”という認識がある点も、読み取れます。

■緊急提言その1
感染予防にもなるシャンプーを楽しい時間にして過ごす!

岡田先生も「人からペット、その後にそのペットからさらに人、のような発想よりも、発症した飼い主さんがいる場合では、人からペットへうつることより、人からその周囲の人への影響が心配される方が大きいのではないか?と思います」と言います。

「ペットに付着したウイルスを物理的に洗う作業は、ウイルスを拡げないための予防策になるかもしれません。人の手洗いと同じことです」。

「ドッグランや人間の多い場所へお出かけした後は、犬を洗えれば、汚れと一緒にウイルスも洗い流されるかもしれませんので、洗ってあげることは、家族のためにもなることでしょう。普段のシャンプーも頻度を増やすことは有効だと思います」とアドバイスしてくれました。

忙しかった日々から、家で過ごす時間がが増えた今、ペットと楽しいシャンプータイムを過ごすのはいかがでしょうか。もちろん、お風呂が大嫌いな子もいるので、ストレスを感じないように、遊びの要素を取り入れたシャンプータイムを工夫してみてください。

新型コロナウイルス関連で、東京都獣医師会のホームページ(https://www.tvma.or.jp/index.html)には、洗い方のアドバイスなども載っています。■緊急提言その1 感染予防にもなるシャンプーを楽しい時間にして過ごす!

■緊急提言その2
普段家にいない人にペットのおしっことうんちのチェックをしてもらう!

普段は学校や仕事で留守にしている静かな家の中で、ペットたちはたっぷり睡眠をとっていますが、最近、コロナ対策で人が自宅にいる時間が増えて、睡眠時間が減ってしまい、ストレスをためてしまう犬猫もいるようです。

「お盆やお正月休みなど、普段の長期休暇などでは、ストレスを疑う体調の変化として、犬は下痢や嘔吐、猫は膀胱炎が続くケースがあります」と岡田先生。トイレの回数が減るとか増えるなど、排泄の異常はストレスのサインのひとつです。おしっことうんちの観察でストレスチェックをしてあげましょう。

「これまでも、夏休みに親戚の子どもが来て、寝ている猫をかまい過ぎてストレスをためてしまった、などという話も聞きます。これから長期間、家族が家で過ごすことを考えると、犬や猫のために静かで安心できる睡眠場所なども、一定時間は確保することが大事だと思います。子供たちにはペットを静かに見守る時間や、睡眠の大切さなども教えてあげてください」

「一方で、普段から家に絶えず誰かがいて欲しい性格のペットもたくさんいますね。そんな子たちにはあまり該当しないことかもしれませんが、いつもペットのお世話をしていない家族にとっては、今が良い機会だと思いますので、尿や便の観察をしてみてくださいね」と岡田先生はトイレチェックを薦めてくれました。

特に猫のトイレチェックは重要

特に猫のトイレチェックは重要

■緊急提言その3
犬の飼い主さんへ お散歩も遊びも3密(密閉、密集、密接)を回避!

飼い主さんが大好きな犬にとって、家に人がいる環境は楽しく快適です。特に普段、あまり家にいないお父さんや子供たちは、遊び相手にピッタリ。おうちのなかでじっとしていられない状況でも、お散歩などは楽しく遊べる良い機会ですが、やはり屋外での遊び方には注意が必要です。

全ての行動の大事な基本は3密を避けること。そして手洗い、うがい、マスクも忘れずに。屋外だから大丈夫、と思いたくなりますが、気のゆるみは危険です。今は多くの人が少しずつ努力をし合う必要があります。

ドッグランやお散歩でも、飼い主さんはマスクをつけた方が良いでしょう。飼い主さんどうしが密接しないように、工夫してください。そして、ひと遊びしたら早めに帰宅し、洗える部分はお湯や水で洗い流してください。ペットを拭いたタオルはすぐに洗濯するようにしましょう。もちろん、飼主さんの方も手洗い、うがいはこまめにしてください。■緊急提言その3 犬の飼い主さんへ お散歩も遊びも3密(密閉、密集、密接)を回避!

狂犬病予防注射などで動物病院に行く時期にもなりました。動物病院の待合室も、危険な3密にならないように、待合室ではなく、自家用車の中で順番を待つなど、感染予防を心掛けましょう。横浜市では狂犬病の集合注射は数日のみ実施して、中止になりました。

「私もうっかりマスクを忘れてしまうことがあり、人のことを言える立場ではありませんが、今は大人が子供に良い見本を見せることができる時間があります。ペットのお世話や遊びなどを通して動物と向き合う時間が増えることからも、大人がいつも以上に気を遣い実行することで、家にいる子供たちも大切なことを考えたり感じたりすることが増えるのではないでしょうか?」

「また、コロナから家族を守る行動のほか、今だからこそできる前進するための行動は何か?を考えると、この機会にペットのダイエットに取り組むなど、新しい目標へ向かうことも、良いかもしれませんね」。

「志村けんさんの死去が報道された後、当院の診療中、ある飼い主さんから、『私は子供に、もし新型コロナウイルス感染したら骨になるまで会えなくなるからね、って言っています』と言われて、結構ドキッとしました。感染しないようにすることは、もちろん、自分のためですが、家族やペットのためでもあります。自分にできることは何か?を考えて、自分も襟を正さないといけないと、飼主さんから教えられました」と岡田先生。

コロナ被害がまだ続き、これからペットとの暮らしがどのように変化していくか、誰もが模索しています。自宅にいる時間がたっぷりある、普段とは違う生活はまだ続きそうです。3つのポイントを踏まえて、ふたたび、明るい日常を取り戻せるよう、できる備えはしておきましょう。

岡田響さん(ひびき動物病院院長)取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390
http://www.hibiki-ah.com/

 

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

 

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