写真はイメージです。

4月からの新しい環境や人間関係に馴染もうと、無意識に自分を演じたり、周囲に期待される役割に合わせようと無理を重ねたりしていませんか。その張り詰めた緊張の糸が、ゴールデンウィークの大型連休を挟むことでふっと緩み、隠れていた疲労が一気に表面化する可能性があります。

そんな5月に感じる心身の重さは、あなたが無理をして周囲に適応しようと走り抜いた証拠です。いわゆる「五月病」と呼ばれる状態は、高ぶった心の熱をやさしく冷まし、あえて省エネ運転に切り替えるときが来たというサインなのです。今回は、そんな自分を労い、心穏やかに過ごすためのヒントを紹介します。

五月病は心が発している休息の合図

新しい職場や役割、あるいは生活環境の変化は、自分が思う以上に神経をすり減らしています。この時期の心身の重さは、心が限界を迎える前に出している防衛反応の1つなのです。

なお、五月病は医学的な正式名称ではなく、病院では「適応障害」や「抑うつ状態」と診断されることもあります。名称にかかわらず、この重だるさは、心が限界を迎える前に出している大切なサインとして捉え直すことが必要です。

五月病のメカニズムとは

どうしてもやる気が出ないとき、私たちはつい自分を責めてしまいがちですが、これは性格の問題ではありません。4月に新しい環境へ適応しようとフル回転し続けた結果、脳と神経がオーバーヒートを起こしている可能性があります。

私たちの心は、未知の環境に身を置くだけでもストレスを感じやすく、無意識のうちに大量のエネルギーを消費します。五月病とは、エネルギーをこれ以上消耗させないように脳が安全装置を作動させて、強制的に休息を命じている状態と言えます。それが今の重だるさの正体なのです。

やる気が出ないのは、気合が足りないからではなく、あなたの心が正しく危機を察知しているからです。

心と体が発しているサイン

次に、五月病の症状をみていきます。五月病の症状は人それぞれですが、以下のような変化として現れることが多いとされています。

・朝、起きるのがひどく億劫に感じる
・仕事や家事に対して、これまでのような意欲が湧かない
・疲れやすく、寝ても疲れが取れた実感が持てない
・思考力が低下し、簡単な判断に迷うことがある
・食欲が落ちたり、逆に過食気味になったりする

これらのサインは、どれも脳が「今は省エネモードで過ごしてほしい」と伝えている証拠です。ご自身の状態と照らし合わせ、無理を重ねていないか確認してみてください。

動けない自分を肯定する

無理にエンジンをかけ直そうとして、さらに焦りを募らせる必要はありません。今は、エンジンを切らずに静かに待機するアイドリング状態で過ごすことを、自分自身に許可してあげてください。

今は無理に動こうとせず、ただそこにいるだけで十分だと自分を認めてあげることが、回復への第一歩となります。この期間は、日々の生活や仕事をなんとかこなしている自分を評価し、過剰な期待をかけずにやり過ごすことが大切です。

期待を横に置いて、自分を甘やかす過ごし方

常に期待に応えようと頑張ることを習慣にしてきた人にとって、何もしないことは勇気がいるものです。しかし、今は効率や成果を横に置いておくことで、心の回復は早まります。

1.静かに五感を休める

1日のうち数分でもいいので、テレビやスマホなどの情報を遮断する時間を作ってみてください。私たちは休んでいる時間でも、無意識のうちに目や耳から入ってくる大量の情報に反応し、神経を使い果たしています。

静かな場所でただお茶を飲んだり、窓の外を眺めたりするだけで構いません。外からの刺激を減らし、五感を休ませてあげることで、オーバーヒートした脳の熱が少しずつ引いていきます。

2.やるべきことの棚卸し

日々の仕事や家事、予定についても、今は最低限のことだけをこなせればよしとしましょう。これまで当たり前にやってきた習慣のなかで、今は休んでも支障がないものはないか、スケジュールを確認してみてください。

自分を追い込まないコツは、今日できなくても困らないことは後回しにすることです。予定を白紙にする時間を意識的に作ることで、心にゆとりが戻ってきます。

具体例:新しい環境に馴染もうと奔走したHさんの場合

ここでは、守秘義務に配慮し、複数の相談内容を統合・再構成したモデルケースをご紹介します。

Hさんは4月の異動をきっかけに、「早く新しい部署に貢献しなければ」とやる気を出して頑張っていました。周囲の期待に応えようと、休日も仕事の段取りを考えるなど、常に心はオンの状態が続いていたと言います。

しかし大型連休が明けた頃、朝起きようとしても体が鉛のように重く、仕事中も集中力が途切れることが増えました。集中力が続かずにいつもの作業に時間がかかる自分を責めていたHさんですが、あまりの体調の悪さに不安を感じ、心療内科を受診することにしました。

医師から「新しい環境に適応しようと過剰にエネルギーを使い果たした結果、抑うつ状態に近いサインが出ている」との説明を受けたことで、Hさんは初めて「自分の努力不足ではなく、脳がこれ以上の負担を抑えようと安全装置を作動させている状態」なのだと気づくことができました。

その後、カウンセリングを併用しながら自分を甘やかすことを許可したことで、「何もしなくても、自分はここにいていいんだ」と安心感を得られるようになり、少しずつ心のエネルギーが戻り始めているそうです。

今の休みがこれからの力になる

今の重だるさを怠けと捉えるのではなく、これまで走り続けてきた自分を労うための休息の合図だと考えてみてください。自分を甘やかすことを許し、心に少しずつ余白が戻ってくれば、日々の生活も次第に無理なく回るようになっていきます。今の時間を経ることで、これからの毎日をより自分に合ったペースで過ごしていけるようになるでしょう。

文・構成/藤野綾子
精神保健福祉士、産業カウンセラー、EAPメンタルヘルスカウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定II種の資格を持つ。大学に通い直し、心理の国家資格取得に向けて勉強中。教育施設、就労移行施設などでカウンセラー研修、実務も続けている。

 

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