50代は、「今後いったい自分はなにをして生きていくのか」「そもそもなんのための人生なのか」について、立ち止まって考える絶好のチャンス。
『50代にしておくべき100のリスト 令和版』(榊原節子 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、そう主張している。日本薬科大学客員教授、ハリウッド大学院大学客員教授であり、ライフスタイルアドバイザー、ファイナンシャルアドバイザーとしても活動する人物である。
いま立ち止まって考えるということは、言ってみれば「人生の棚卸し」。たしかに「人生100年時代」だと考えると、そんな棚卸しは何度か必要になってくるかもしれない。だからこそ、あの世に旅立つまでの後半の戦略を練り、実り豊かな人生設計を立てるべきだというのだ。
現在の仕事に満足していますか? もっと別の自分があるはずだと感じることはないですか? 思い切って起業しますか? 健康の問題が出始めていませんか?
次の仕事、ボランティア、趣味にしろ、健康対策にしろ、定年まで待っていては遅いのです。今すぐ行動を起こしましょう。そのための自分の棚おろしにかかりましょう。「ああ、いい人生だった」と言って死ねるように。(本書「プロローグ これからの人生、どう生きるか考えてみましょう」より引用)
「定年まで待っていては遅い」と言われるとドキッとしてしまうが、たしかにそのとおりなのかもしれない。
ちなみに著者は本書において、自身が考えた「歳を重ねても楽しく生きる工夫」を紹介している。
(1)新しいことを始める
若いころは、気軽に新しいことが始められるもの。ところが歳を重ねると、興味のあることに食いつくことも少なくなる。
「そういえば、このごろ新しいことを始めていないよな……」と気づいたら、新しいことを始めるといいのではないでしょうか。(本書26ページより引用)
著者自身も常に新しいことを考え、実行するようにしているそうだ。
(2)プロジェクトの達成より、その過程を楽しむ
著者はもともと手早いことが自慢だったものの、歳とともにスローペースになって間違いも増えたのだという。
そこで開き直ることにしました。プロジェクトの達成のためにはがんばりますが、他人の助けを借りたり、以前よりゆったりしたペースでやったりしています。(中略)何よりも、やっている時間を嬉しがることにしました。(本書28ページより引用)
その結果、なにをするのも楽しくなったのだとか。「プロセスを楽しむ」ことは思っている以上に重要なのだろう。
(3)日常の小さなことに感動する、喜ぶ
仕事で大きな商談をまとめたり、難しいプロジェクトを完成させたり、子どもが入試に受かったりすれば、もちろん幸福を感じることだろう。
だがその一方、「パートナーからやさしいことばをかけてもらった」など、日常の小さなことにも相応の意味があるはずだ。しかも日常の楽しいことを見逃してしまうことも少なくないかもしれない。
ですから私は、「そよ風がいい香りだ」「このタンポポの色は素晴らしい!」など日常の小さなことに感動し喜べるように、練習しています。(本書29ページより引用)
(4)自分のためより、ほかの人のため、社会のためを心がける
歳を重ねるとともに、「自分のため」より「他の人のため」「社会のため」を心がけたほうが楽しくなると著者は言う。もちろん若いときでも同じだろうが、いまのほうが余裕はあるはず。生活や子育ての負担が減り、時間ができてきたいまだからこそ、「ほかの人のため」「社会のため」を意識すべきだということだ。
私自身、少し余裕ができた段階で、「他人のため」を考えているほうが幸せを実感できることに、やっと気づきました。ボランティアをやっている人を見ても、当事者のほうが断然楽しげですよね。
「人間は得ることで生計を立て、与えることで人生を築き上げる」と言ったのはイギリスの名宰相チャーチルです。(本書30ページより引用)
(5)どんな自分になりたいかを考える
元気なうちは、自分の夢の追求、地域の仕事、家族の世話など、することはいくらでもあるだろう。だが、もし寝たきりになったとしたら、それらはできなくなってしまう。
しかし、そんなときでも「どんな自分になりたいか」に焦点をあてたらどうでしょう。人生修行は死ぬまでできるのに気づきました。「歳をとることを修行する」が最大のプロジェクトと思ったらどうかなと考えています。(本書31ページより引用)
* * *
どれも、当たり前のことかもしれない。しかし当たり前だからこそ、真剣に考える機会も少なくなっていくのではないだろうか? 本書に目を通し、改めてこれらについてじっくり考えてみれば、これから進むべき道がうっすらと見えてくるかもしれない。
だとすれば、そこを目指せばよいのだ。
『50代にしておくべき100のリスト 令和版』
榊原節子 著
ディスカヴァー・トゥエンティワン
本体価格:1,400円(税抜)
2020年1月発売
文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。