取材・文/ふじのあやこ

近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。

「結婚した人と添い遂げること。このことが母親への一番の親孝行だと、何があっても離婚してはいけないという思いがどうしても離れなくて」と語るのは、美穂さん(仮名・39歳)。彼女は現在、都内にある自宅で旦那さんとの2人暮らし、専業主婦をしています。共通の知り合いを通じて知り合った美穂さんですが、初対面の時からとにかくおしゃべり好き。早口で思ったことをストレートに表現する印象を受けました。

物心がつく前に両親は離婚。祖父母との5人暮らしで貧しい思いをしたことはなかった

美穂さんは千葉県出身で、母親と3歳上に姉、3歳下に妹のいる4人家族。両親は小さい時に離婚をして、それからはずっと祖父母と同居していたと言います。

「両親が離婚したのは、私が幼稚園に通っていた時なのでまったく覚えていないんです。父親のことも記憶に一切なくて。姉がうっすらと父の残像を覚えているだけですね。私の家には父親の写真が一枚もないんです。アルバムの中は不自然なほど母親と私たちばかり、祖父母の写真も少ししかありませんでした」

女手一つで小さな子供を3人も育てることは相当苦労したのではないかと伺ったところ、意外な回答がありました。

「記憶が残っている時にはすでに祖父母と同居していて、4人暮らしの記憶はなくて。記憶のスタートから、平屋の大きな一軒家で暮らしていて、結構裕福だったんです。母親も働いていませんでしたから。祖父母も私たちには甘々で、一緒に買い物をするといつも好きなものを好きなだけ買ってくれました。私たちは姉妹だったから、習字道具や絵の具セットなどはお古が回ってくることが普通なのに、全員に別々のものを揃えてくれていましたから」

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