文/鈴木拓也
中高年に入って「眼鏡や眼科の世話になったことがないのが自慢。でも、最近視力が落ちたかな…」という人ほど、要注意な病気がある。
それが、緑内障だ。
緑内障は、加齢とともに視神経がやせて、視野が狭くなる眼の病気。視野の一部が欠けるというかたちで症状が始まり、最終的には失明に至るという恐ろしいものだ。
10年、20年かけてゆっくり進行するが、40代で発症するも自覚症状がないまま放置し、60代で失明することが実際にあるという。しかも40代で20人に1人が罹患し、年代が上がるにつれ、罹患率は上がってゆく。
「今、何ともない人が危ない」と警告を発するのは、真生会富山病院アイセンターの舘奈保子眼科部長だ。著書の『40代から高まる失明のリスク』で舘医師は、「目に、何らかの不都合を感じ始めてから病院へ行っても、手遅れになることが多い」と続ける。
では、どうすればいいのだろうか?
■年1回の眼科ドック受診を
舘医師がすすめるのは、1年に1回の眼科ドックの受診だ。
通常の人間ドックと違い、ここでは眼に特化した検査を重点的に行う。そして、眼科ドックで重要な検査となるのが「眼底検査」。専用の機器を使い、「眼球の奥にある血管、網膜、視神経の状態を、直接見て、診察」する。緑内障だけでなく、糖尿病網膜症などの目の病気も発見でき、脳梗塞のリスクもわかるという。
■緑内障と診断されたら
検査の結果、緑内障と診断されたら、どのような治療がなされるのだろうか?
舘医師は、緑内障には主に開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障の2種類あると述べ、前者の場合、点眼(目薬)が第一の治療法になると説明する。後者であれば、眼球の中を満たしている房水の出口(隅角)が塞がれているので、ここを広げる治療をまず行ってから、点眼を始める。
これとは別に、隅角が広範囲に詰まり急に眼圧が上がって起こる、急性緑内障発作という病気もある。頭痛、吐き気、目の痛みといった症状があり、手当てが遅れるとそのまま失明の危険性がある。この場合はすぐ眼科に行き、眼圧を下げる治療を行う。
■緑内障とは一生のつきあい
残念ながら、今の医学では緑内障を完治させることはできない。舘医師は、「緑内障とは一生のつきあいですから、その人の体質に合った目薬を選んで、続けていく」と述べ、次のようなアドバイスをしている。
点眼を始めた時には何ともなくても、長く点眼しているうちに、せきが出やすいとか、目の前が暗くなることがあるとか、目の周りがかぶれるなどの異常が現れることがあります。その場合、勝手にやめたり、医師を替えたりしないでください。その薬を出した医師に相談して、薬を替えたり、別の治療を選んだりするようにしましょう。黙って病院を替えると、緑内障のような長期に経過を見なければ分からない病気では、とりわけ治療が難しくなります。
(本書110pより)
緑内障用の点眼は、目にしみるなどつけ心地が悪く、副作用もあって、値段も高い。そのため、途中でやめてしまう人が多いという。そうすると緑内障はどんどん進行してしまう。主治医と相談しながら、途切れなく続けることが肝心だと舘医師は諭す。
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