取材・文/池田充枝
俳句ブームといわれる今日、俳句をたしなむ人たちの間で俳聖と讃えられる存在の芭蕉。松尾芭蕉(1644-94)は、江戸前期に活躍した俳人です。
元禄2年(1689)3月下旬、芭蕉は江戸を出立して、松島・平泉を巡り、出羽の各地を遊歴しました。その後、越後・越中・加賀・越前を経て、8月下旬に美濃大垣へと至ります。
この旅をもとに、元禄7年(1694)の4月に紀行文『おくのほそ道』が編まれました。
今年は芭蕉が奥の細道の旅に出てから330年。これを記念した展覧会が開かれています。(9月29日まで)
本展では、芭蕉の筆になる書画や、芭蕉を敬慕する者たちの作品を展示し、俳諧にまつわる美術を紹介します。
本展の見どころを、出光美術館の学芸員、金子馨さんにうかがいました。
「今年は、芭蕉が奥の細道の旅に出て330年の節目を迎えます。これを記念して、出光コレクションの中から芭蕉の自筆作品を厳選し、10年ぶりに展覧会を企画しました。
本展の見どころは、何といっても、約20件もの芭蕉作品をご覧いただけることです。他館の名品もお借りして、多様に展開する芭蕉の書の魅力をお伝えするとともに、芭蕉の真髄を捉え直す機会にしたいと思っています。
絵画作品では、『旅路の画巻』(柿衞文庫蔵)が必見です。『旅路の画巻』は、芭蕉の最晩年に描かれた作品で、芭蕉の思い描いた旅の情景が描かれている点で大変貴重な作例といえます。本作品は柿衞文庫に所蔵される名品ですが、関東で目にする機会は少なく、出光美術館でも『没後三百年記念 芭蕉』展以来、26年ぶりの展示となります。
そのほか、門人たちの俳諧作品や俳画をはじめ、与謝蕪村の描いた『奥之細道図』(下巻、東京国立博物館蔵、重文)など、芭蕉を敬慕した者たちの書画作品も特集展示し、芭蕉や俳諧にまつわる多彩な美術をお楽しみいただきます。
空前の俳句ブームを迎えている今だからこそ、芭蕉ファンだけでなく、俳句ファンにも、芭蕉の句作はもちろんのこと、書画にも親しんでいただけたら幸いです。皆様のご来館をお待ちしています」
芭蕉の筆跡に滲む俳味、俳人の旅路の思いを辿る展覧会、心が洗われます。
【開催要項】
奥の細道330年 芭蕉
会期:2019年8月31日(土)~9月29日(日)
会場:出光美術館
住所:東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
http://idemitsu-museum.or.jp/
開館時間:10時から17時まで、金曜日は19時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし9月16日、9月23日は開館)
取材・文/池田充枝