尾戸焼は約350年前、土佐藩の藩窯に創始した。江戸時代には四国・土佐の国焼きとして広く知れ渡ったが、明治に入って藩の力が収束するとともに、その技は民営のいくつかの窯に引き継がれることとなった。今もその伝統を受け継いでいるのが高知市内の能茶山に窯を構える谷製陶所である。
「家の隣に工房があって、子供のころから焼きものが身近にありました」と話す5代目当主の谷 信一郎氏は、中学時代から陶芸に触れ、今ではこの道35年以上。親子二代で高知県認定「土佐の匠」との称号を得た名工だ。
白土で作陶する徳利とぐい呑みは、薄鼠色の肌に呉須という青藍色の顔料で絵柄を描く。陶肌に浮き立つ草花の絵柄は、工房のある能茶山の草花を摘み、手本にして描かれる。陶肌に桃色の窯変が現れるのも特徴で、ひとつひとつ表情が変わりおもしろい。
今回紹介する徳利は底が平らでどっしりとした「舟徳利」で、釣り人が揺れる船の上でもこぼさず酒を飲むために作られたとされる。ちびちび飲むのによい1合サイズだ。
赤茶の陶肌に白と青が淡く色づく、底が独楽のように尖る「べく杯」は、酒を飲み干すまで卓に置けない。まさに酒を愛する土佐ならではの酒器だ。
南国・土佐の杯で一献どうぞ。
【今日の逸品】
尾戸焼の酒器セット
谷製陶所
6,480円~(消費税8%込み)