取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「ないものねだりばかりで姉妹ケンカを続け、両親には長年迷惑をかけちゃっていましたね」と語るのは、真美さん(仮名・36歳)。彼女は現在、関西の飲食店でパート勤務をしながら、1人の娘を持つ兼業主婦です。細くて小柄でかわいらしい雰囲気のある女性で、実年齢よりもかなり若く見えます。
仲良し夫婦の性格は正反対。優しく温厚な父親に、1円も細かくチェックする母親
真美さんは大阪府出身で、両親と双子の妹がいる4人家族。父親はサラリーマン、母親は専業主婦で、小さい頃は平日に父親と顔を合わせることがなかったと振り返ります。
「両親は同い年で、夫婦ケンカをしていた記憶もあまりないほど仲良しでしたね。目の前でイチャイチャされることはなかったというか、父親は仕事が忙しくて、小さい頃は平日なんてほとんど会っていませんでした。たまに夜中にトイレで起きると、深夜なのに父は決まって何かを食べていました。私に物心がついた時から父親はずっと太っていて、これが原因かと小さいながらにもしみじみ思っていましたね(笑)」
仲良しだったものの、両親の性格は正反対。その違いがよくわかるエピソードを教えてくれました。
「父親は温厚で、私たちのわがままもよく聞いてくれていました。大人になってから思うのは、週末くらいゆっくり休みたいということ。なのに私たちは、よく近所の市民プールや、ドライブなど毎週のようにどこかに連れて行けとせがんでいましたね(苦笑)。しんどかっただろうに……。
一方で母親は、まぁ細かい。私たちは母親と買い物に行くと、お菓子の金額が60円~100円くらいに決められていて、小さい頃に消費税が始まったんですが、母の基準が税込み価格で。あの時はたしか記載金額が税抜のままで、まだ自分たちで計算があまりできなかったのに少しでもオーバーしていると棚に戻されて……、容赦なかったですね(苦笑)。おかげで同級生よりも消費税の計算が早くできるようになりましたけどね」
【次ページに続きます】