文/中村康宏
がんは日本人の死因トップで、3人に1人はがんで死にます。つまり、あなたの家族のうち1人は、がんで亡くなる可能性があるということです。
現実がそうである以上、「自分もしくは自分の家族が、がんになったら?」と考えておくことは大切です。病気の発見は突然やってきますが、自分や家族がそれぞれにどう生きていかなければならないか、と向き合うのには時間がかかるものだからです。
万が一のとき「想定していなかった……」と動揺しないために、これからお話する「がん患者に起こりうる“4つの負担”」について、予めぜひ知っておいてください。
そのとき、あなたはどう生き、どう支えたいと思いますか?
がん患者に降りかかる「4つの負担」
がんになると、心理的・身体的なダメージのみならず、経済的・社会的な影響も同時に伴うものです。これらを順に解説していきましょう。
(1)心理的負担
がんと告げられるのは衝撃的なことで、心に大きなストレスをもたらします。病名を耳にした後の数日間は、「まさか自分が、がんになるはずがない」「何かの間違いに決まっている」などと、認めたくない気持ちが強くなる人がほとんどです(※1)。
さらに、心理的ダメージは病気の経過中ずっとつきまとう問題です。がん体験者の悩みや負担に関する包括的調査によると「何も手につかない・何もできない」「こわい」「心残り」「情けない」「もどかしい」など、心の悩みと向き合わなければならなくなります(※2)。
(2)身体的負担
がんの身体的症状は、[1]がんそのものが起こす症状、[2]がんに随伴する症状、[3]がんの治療によって起こる症状、の3種類があります。
[1]がんそのものが起こす症状・・・がんや転移・浸潤(しつじゅん)が存在するそれぞれの臓器の症状が生じます。例えば、食道がんで食道が細くなってしまうと、食べたものが胃に移動できなくなり、何を食べても吐いてしまう、という症状が起きます。
その他、肺がんであれば、がんにより肺の組織や血管が傷つけられ、血を吐いてしまうことがあります。
また、がんによって臓器の機能が破綻し、それによって新たな障害・病気が生じることがあります。例えば、膵がんができると、膵臓でインスリンを作る働きが悪くなり、結果として糖尿病を発症することがあります(※3)。
[2]がんに随伴する症状・・・がんは正常細胞より増殖スピードが早いので、代謝のスピードが早まります。そうすると食事を今まで通りに取っていても急に体重が減ることがあります。
その他、がんまたは転移巣から離れた場所で起こる症状として「腫瘍随伴症候群」というものが存在します。腫瘍随伴症候群はがん患者全体の8%に生じるとされていて、原因不明の発熱、原因不明の神経症状(意識障害、麻痺、しびれ、脱力)、原因不明の筋痛・関節痛・浮腫などが生じます(※4)。
[3]がんの治療によって起こる症状ある部分に起こる症状・・・がんの治療(抗がん剤・放射線治療・免疫治療など)は、がん細胞以外の正常な細胞も破壊されるため、全身に様々な症状がおきます。例えば、吐き気、だるさ、口内炎、脱毛、食欲低下、下痢、手足のしびれなどの症状の他に、肝臓・腎臓・骨髄への影響など症状を伴わない臓器障害などさまざまです。
最悪の場合、抗がん剤投与によるアレルギー反応や心筋障害による心不全、免疫力低下による感染症などで命を落とすこともあります(※5)。
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