選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
スウェーデンが世界に誇るア・カペラ・ヴォーカル・アンサンブル、ザ・リアル・グループが8年ぶりに放ったオリジナル・アルバムが『エレメンツ』である。
1984年にスウェーデン王立音楽アカデミーで出会った仲間たちによって結成されて以来、今年で34年。その間に何度かメンバーチェンジを繰り返しているが、女2人、男3人の編成による、安定した低音をベースにしながらオーロラのように美しく広がっていく声のハーモニーの魅力は不動だ。
ポップス的な楽しさ、北欧的な品の良さと哀愁、クラシック音楽的な精緻なハーモニー。そのすべてが、ジャズ的なスウィング感のなかで共存していること。それが彼らの本質だが、今回のアルバムでは、彼らの定番曲に加え、新曲8曲が実に面白く、多彩で聴きごたえがある。それにしても、寒い国の合唱音楽は、どうしてこんなにも心暖まるのだろう。(※こちらから試聴できます)
【今日の一枚】
『エレメンツ』
ザ・リアル・グループ
発売/スパイス・オブ・ライフ
電話/0557・88・3520
商品番号/SOLRG-0015
販売価格/2400円
文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2018年4月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。