取材・文/関屋淳子
今年、建国150周年を迎えて何かと話題になっているカナダ。今回ご紹介するトロントは、カナダの東部、オンタリオ州の州都で、カナダでは最大、北米ではニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴに次ぐという大都市です。
日本ではどちらかというと、留学やワーキングホリデー先の人気都市として有名ですが、観光面についてはあまり知られていません。そこで今回は、前回に続き、知られざるトロントの食の魅力についてご紹介します。
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トロントは移民の街。その影響もあり、この街ではイタリア料理やアルゼンチン料理など様々なグルメを堪能できます。
牡蠣やサーモン、ブルークラブなどのシーフード、ボリューム満点のビーフやラムなどの肉料理はいずれも美味。
高層ビルの上にあるレストランで、ハーバーフロントやダウンタウン、煌く夜景を見下ろしながらの優雅な食事もおすすめです。
料理の前にはカクテルの注文をお忘れなく。トロントニアン(トロントっ子)はカクテルがお好きです。食後にもっと飲みたいという方は、バーやクラブで楽しんでください。街中には雰囲気がいい店が多く、夜遅くまで開いています。
ダウンタウンの船着き場からは、オンタリオ湖を周遊する45分間のランチクルーズが出ています。船は蒸気船を模したもので、日本語のオーディオガイドも搭載されています。
船は、CNタワーやビル群が並ぶダウンタウンを望みながら、オンタリオ湖にあるトロント島の方向へ向かいます。トロント島はオンタリオ湖に浮かぶ小さな島々のことで、トロントニアンにとっては週末を過ごす緑豊かな憩いのエリアなのです。
ゆったりとしたクルーズを愉しみながらいただくランチは、前菜やサラダ、メインはサーモンというメニュー。運航会社のマリポサクルーズでは、ディナー付き3時間クルーズも実施し、人気が高いとのことです。
トロントの地元民が集う市場が、200年以上の歴史を持つ「セントローレンス・マーケット」です。元市庁舎だった建物を用いた市場で、2012年にはナショナル・ジオグラフィック誌で“世界一のフードマーケット”に選ばれました。
新鮮な野菜や果物、肉、魚介類、チーズ、スパイスなどが並び、さらにランチを楽しめるお店もあります。カナダ土産の定番のメイプルシロップのほか、手作りマスタードの専門店もあり、味見をしてから購入できます。週末には別棟でファーマーズマーケットも行われています。
ミッドタウンのヨークヴィルという地区は、東京でいえば表参道や青山のようなところ。ファッションに敏感な人が集い、世界的に有名なファッションブランドの路面店が並んでいます。
トロント出身のデザイナーのお店やカシミヤ専門店、コンシェルジュがいる紳士用品のセレクトショップ、さらに高級感のあるショッピングモールなどもあり、気になる店を見つけたら、ちょっと足を踏み入れてみるのも楽しいものです。
街並みもとてもお洒落で、日本でも人気のミュージシャン、ジャスティン・ビーバーもよく出没するとか。
ダウンタウンの南東に位置するディスティラリー地区は、その名が示すように、かつてウイスキー工場があったところ。ヴィクトリア時代の産業建築物が40棟以上残り、ギャラリーやカフェ、レストラン、雑貨店、ブティックなどが入っています。
各店舗は工場の雰囲気そのままで、一部にはかつて使われていた機械なども置かれ、往時の面影を残しています。ちょうど横浜の赤レンガ倉庫と似た雰囲気があります。
ここでのおすすめはチョコレート専門店の「SOMA」。店内に甘い香りが漂います。
ここで日本酒のお店を発見しました。その名もオンタリオ酒「泉」。仕事で日本に来日したカナダ人が日本酒に魅せられて、北米の米とトロントの水を使って、この場所で醸造しているのだそうです。6年前のオープン当初は長野の杜氏を呼んで酒造りをおこなっていたということで、本格的な味です。
日本料理の普及とともに、ここトロントでも日本酒が人気だそうで、地元客も多く来店しているようです。元ウイスキーの蒸留施設で日本酒の醸造なんて、ぴったりですね。
知られざる魅力いっぱいのトロントの街。次の旅先として、検討してみてはいかがでしょうか。
【参考リンク】
トロント観光局 http://www.seetorontonow.com
※日本語サイトもあります>> http://seetorontonow.jp/(日本語)
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。