歳をとるというのは厄介なものですよね。周りからは、年相応に物知りなどと思われたりして……。うっかり漢字の読み⽅なんか間違えたりしますと、とっても恥ずかしい思いをするなんてこともあるかもしれません。

脳の⽅は、若い時のようにパッパと記憶中枢からひっぱり出せなくなってきているかもしれませんが、「歳をとってきちゃって、なかなか思い出せなくて……」なんて⾔い訳をするようでは、サライ世代の沽券に関わる?

「脳トレ漢字」今回は、「冬冬」をご紹介します。

寒さの中に響く音色に想いを馳せながら、漢字への造詣を深めてみてください。

「冬冬」は何と読む?

「冬冬」の読み方をご存じでしょうか?

正解は……
「とうとう」です。

『新選漢和辞典』では「とんとんと門をたたく音」とあります。現代ではあまり見かけない表現ですが、古典文学や漢文の世界では、音を視覚的に表現する手法として重宝されていました。

なお、同じ「とうとう」という読み方でも、「到頭」や「等等」とは意味が全く異なります。「到頭」は「ついに」という意味で、物事の結末を表します。一方、この「冬冬」は純粋に音を表現する言葉なのです。

「冬冬」の由来

では、なぜ「冬」という字が音を表すのでしょうか。これには、「擬音語」としての漢字の使い方が関係しています。門をたたく音「トントン」に対して、音が似ている「冬」(トウ)という字が当てられたのです。

「冬」という漢字の成り立ちを見てみましょう。「冬」の上部は「終」の初文で、糸の結び目を表し「終わり」を意味します。下部の「冫」(にすい)は氷を表します。つまり、一年の終わり、すべてが凍てつく季節を表しています。

張り詰めた氷のような空気の中で、音が「冬…冬…」(トウ・トウ)と響き渡る。

本来は単なる音の当て字であったとしても、漢字そのものが持つ冷たく澄んだイメージが、門をたたく音に一種の厳かさや、空気を震わせるような鋭さを付加しているように感じられませんか?

日本語の面白いところは、このように「音」で選ばれた漢字であっても、私たちがその字面から勝手にイメージを膨らませ、言葉に新たな色彩を与えてしまうところにあります。

音を表す漢字の豊かさ

日本語には「ドンドン」「トントン」といったカタカナやひらがなで表記される擬音語が数多く存在します。しかし、漢字で音を表現する文化は、文章に独特の重みと風情を与えてくれます。

「冬冬」以外にも、例えば「蕭蕭」(しょうしょう)は風の音、「潺潺」(せんせん)は水の流れる音を表します。こうした表現は、ただ音を伝えるだけでなく、その場の雰囲気や情景までも読み手に想起させる力を持っています。

***

いかがでしたか? 今回の「冬冬」のご紹介は皆様の漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 音を文字で表現する日本語の奥深さを、改めて感じていただけたら幸いです。

来週もお楽しみに。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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