小一郎に刀を渡す藤吉郎(演・池松壮亮)。(C)NHK

ライターI(以下I):『豊臣兄弟!』の第3回です。藤吉郎(演・池松壮亮)、小一郎(演・仲野太賀)の父である弥右衛門(演・小林顕作)が登場しました。大河ドラマで弥右衛門が登場するのは、1965年の『太閤記』以来ではないでしょうか。『太閤記』はほとんど映像が残っていないので、資料ベースでしか確認ができないのですが、須永宏さんという俳優がキャスティングされています。

編集者A(以下A):藤吉郎、小一郎兄弟は異父兄弟ともいわれてきました。1996年の大河ドラマ『秀吉』でも異父兄弟説が採用されました。藤吉郎にとっては継父、小一郎にとっては実父の竹阿弥を演じたのは財津一郎さん。藤吉郎と折り合いが悪いという設定で、よく喧嘩していましたね。異父兄弟説だけではなく、もともと同父兄弟説もありましたので、本作では同父兄弟説を採用したことになります。

I:その弥右衛門の手柄を横取りしていたのが前週に登場した城戸小左衛門(演・加治将樹)という設定でした。藤吉郎は父の仇を取りたいと小一郎に持ちかけます。

A:武士道とかまだない時代ですから、あるいは、そんなこともあったのかもしれません。「殺るか、殺られるか」というのが戦国のリアルだったという解釈なのでしょう。

これが本当の「猿芝居」

猿真似で信長(演・小栗旬)をからかう藤吉郎。(C)NHK

I:今週私が印象に残ったのは、信長(演・小栗旬)が鉄砲で藤吉郎を狙い、藤吉郎が猿を真似た動作で飛び回り、信長の標的にされた場面です。

A:秀吉は「希代の人たらし」というのが定番ですが、まさに「人たらし」を象徴する場面になりました。普通あんなことやります? 古くからの家臣らはプライドが邪魔をして絶対にあんなことやりませんよね。藤吉郎は、鉄砲の弾に当たったと見せかけて、信長が心配する素振りを見せるや、「これが本当の猿芝居」とニカっと笑みを浮かべました。まさに天性の人たらし。

I:信長の振る舞いというのは、現代では完全に「パワハラ」として「アウト!」なのだと思いますが、その信長の心を捉える藤吉郎ってやっぱり凄い! という場面になりました。

A:「現代ではアウト!」と今おっしゃいましたが、当時もアウトといえばアウトなんですよね。いったんは信長に服属して、後に離反した武将が目立ちます。荒木村重、松永久秀、そして織田家中で出世頭だった明智光秀も信長のやり方に我慢できずに反旗を翻します。それぞれ、トータス松本さん、竹中直人さん、要潤さんが演じることが発表されていますが、彼らの心情をどう描いてくるのか、なぜ、藤吉郎は耐えられたのか。要注目です。

I:個人的にはトータス松本さんの荒木村重を楽しみにしているのです。

A:視聴者を満足させられるだけの「尺」を荒木村重に用意してくれるのかどうか――。ちょっと厳しめの視点で注目していきたいと思います。

もうすぐ桶狭間! 松平元康が登場

金陀美具足を身に着けた家康(演・松下洸平)登場。(C)NHK

I:さて、戦国時代最大級のジャイアントキリングとして知られる桶狭間の戦いが間もなく起きようとしています。桶狭間合戦の前段を描く場面ということで、松平元康(演・松下洸平)が登場しました。ここで元康が着用していたのが「金陀美(きんだみ)具足」。大高城に兵糧を入れる際に着用していたと伝承される具足です。金溜塗の豪華なもので、2023年の『どうする家康』でも松本潤さんが着用していた具足になります。

A:『どうする家康』では第1回からこの具足を着用していました。この具足は静岡市の久能山東照宮に蔵されているもので、いまも実際に見ることができます。久能山東照宮には家康の遺愛品が数多く収蔵されていますが、『徳川家康の名宝』(小学館)にほかの家康の名宝とともに掲載されています。

I:さて、いよいよ桶狭間合戦ですね。

A:『完本 信長全史』(小学館)に掲載されているマップによると、今川義元(演・大鶴義丹)が駿河の今川館から出陣したのが永禄3年(1560)5月12日。13日に掛川城、14日に引馬城(浜松市)、15日に吉田城(豊橋市)、16日に岡崎城、17日に知立城、18日に沓掛城(豊明市)に入城しています。松平元康が大高城に兵糧を入れたのは5月18日。この時に松平元康が兵糧を運んだ大高城は、名古屋市緑区にあります。

I:『豊臣兄弟!』では、今川義元が塗輿に乗って移動し、その途上で蹴鞠を愉しむという余裕の行軍をしている場面が描かれました。

A:塗輿は、公家や将軍、大名などが乗っていた格式の高い乗り物ですが、今川義元は守護大名ですので、塗輿に乗ることが許されていた身分でした。権威を誇示するための塗輿ですが、新興勢力の信長からすれば、「それが何か?」という感じだったのかもしれません。

I:さて、大河ドラマ歴代の今川義元役は下記の通りです。錚々たる面々が義元を演じています。「公家風義元」だったり「海道一の弓取り風義元」だったり、作品ごとに異なる義元像が描かれています。

『太閤記』1965年 三国一郎
『天と地と』1969年 根上淳
『国盗り物語』1973年 花柳喜章
『おんな太閤記』1981年 新みのる
『徳川家康』1983年 成田三樹夫
『武田信玄』1988年 中村勘九郎(後に十八代目中村勘三郎)
『信長 KING OF ZIPANGU』1992年 柴田侊彦
『秀吉』1996年 米倉斉加年
『利家とまつ 加賀百万石物語』2002年 佐々木睦
『功名が辻』2006年 江守徹
『風林火山』2007年 谷原章介
『おんな城主 直虎』2017年 春風亭昇太
『麒麟がくる』2020年 片岡愛之助
『どうする家康』2023年 野村萬斎
『豊臣兄弟!』2026年 大鶴義丹

A:かつては公家風の義元が多かったりしましたが、最近はあまりないですね。大鶴義丹さんも蹴鞠を所望していましたが、公家風ではありませんでした。

I:いったいどんな桶狭間が描かれるのでしょうか。

蹴鞠を所望する今川義元(演・大鶴義丹)。(C)NHK

●編集者A:書籍編集者。かつて編集した『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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