桶狭間古戦場跡の織田信長像。

ライターI(以下I):2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』放送開始まで、1週間となりました。前週の当欄では、秀吉、秀長のサクセスストーリーは、同時に織田信長のサクセスストーリーでもあると言及しました。

編集者A(以下A):ということで、秀吉、秀長の物語は、通常本能寺の変までは織田信長中心のストーリーになります。『豊臣兄弟!』の時代を詳しく知るには、織田信長の軌跡をなぞるのが早道ではあります。15年ほど前の話になるのですが、『完本 信長全史』(『ビジュアル版逆説の日本史第4巻』小学館)の取材で、織田信長の関連史跡を網羅したことがあります。「この眺望を見ずして、信長の天下布武を語るなかれ!」とキャッチを付した岐阜城から望む濃尾平野の絶景は、忘れることができません。

I:その本は私も見ましたが、本当にあらゆる場所を巡っていますね。

A:印象深かったのは、織田家発祥の地である「越前劔(つるぎ)神社」(福井県越前町織田)でしょうか。南北朝時代に斯波氏が越前を領して、越前劔神社の神官だった織田家の先祖が、斯波氏の家来になったのです。その斯波氏が尾張の守護も兼ねたことで、織田家は、越前から尾張に移り住むという流れです。

I:フィギィアスケートの織田信成さんも参拝されたり、江戸時代に大名だった織田家の子孫も人生の節目には参拝するなど、今も織田家とつながりを持っているのが印象的でした。

A:信長も見た風景を体感するという意味では、信長の時代にもあって、今も続いている津島天王祭が白眉です。女房衆を伴って信長も見物したという祭で、数多くの提灯を灯した巻藁船が水に浮かぶ幻想的な情景が、今も目に焼き付いています。その取材時に津島神社の禰宜の方が興味深い話をしてくれました。『完本 信長全史』から引用します。「室町から戦国にかけて、津島御師と呼ばれた参詣世話役の神官が全国をめぐって津島牛頭天王信仰の布教をしていました。この御師らが持ちかえる情報から各地の情勢を把握していたことが、織田氏の力の源泉だったと思います」――。この話は「なるほど」と思いましたし、その時は「もしかしたら藤吉郎も津島御師だったんではないか」とも思いました。

小栗旬さんの織田信長への期待

I:大河ドラマ『豊臣兄弟!』は、永禄2年(1559)から物語は始まるようです。

A:信長(演・小栗旬)が舅の斎藤道三と対面するエピソードは 天文22年(1553)ですから、とっくに過ぎているという設定ですね。翌年の永禄3年には、織田信長、藤吉郎(演・池松壮亮)、小一郎(演・仲野太賀)の3人の運命が大転換する「桶狭間の合戦」が控えています。前述の『完本 信長全史』の取材では、沓掛城、大高城、丸根砦、鷲津砦、丹下砦、中島砦、善照寺砦、鳴海城、桶狭間古戦場を実際に巡りました。

I:とてもマニアックな取材ですね。

A:尾張の鳴海城城主の山口教継が今川義元側に寝返ったために、信長は鳴海城を取り囲むように中島砦、善照寺砦などをもうけたということですね。善照寺砦の現況は、児童公園のような佇まいでしたし、中島砦は住宅街にあり、探すのが難しかった記憶があります。

I:でもそれぞれの砦の近くに駐車場がなかったり、公共交通機関でつながっていなかったり、「桶狭間史跡巡り」の難易度は高くないですか? 私は秀長らの生家があった中村から清洲城まで歩いてみようと思っています。だいたい6kmちょっとくらいですし。

A:ああ、それは実施した際にはレポートしてください。

●編集者A:書籍編集者。かつて編集した『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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