
どうして人は自分の生きたいように生きられないのか。いつか時間に余裕ができたら……。いつかお金に余裕ができたら……。残念ですが、その「いつか」は永遠に訪れません。
タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出された「こんまり(KonMari)」こと、片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんを世界に押し上げた仕掛け人であり、名プロデューサーの川原卓巳さんの新刊『人生は、捨て。自由に生きるための47の秘訣』(徳間書店)では、その「いつか」を待つのではなく、現状から決別する方法を伝えています。「モノ」「情報」「人間関係」「お金」「固定観念」、あらゆるノイズを捨てれば生き方が定まる、と川原さんは言います。今回は、「やりたいことに向けての捨てる勇気」についてご紹介します。
文/川原卓巳
捨てる。勇気をもって捨てる
現代人はとにかく忙しい。テクノロジーの進化で効率化と時短を手にしたはずなのに、その空いたスキマには、あらたな仕事ややるべきことが次々と入っていく。その結果、ずっと頭と心が落ち着かない。まるで満員電車のようにぎゅうぎゅうの状態になっています。生きている実感もなにもあったものではありません。いまこそ、きっぱりと捨てる勇気が必要なのです。本当に大切だと思うもの以外は、ぜんぶ捨ててしまいましょう。「でも手放すのは怖い。同じものは二度と手に入らないから」そう思う方もいるでしょう。その気持ち、よくわかります。モノであれば基本的にはいつでも買いなおせますが、仕事やチャンス、人間関係はそうはいきません。一度失えば取り返しがつかなくなるかもしれませんよね。
それでもあえて言い切ります。大切だと思えない仕事や人間関係は、勇気を持って捨てましょう。あとで「あの人との関係は、やっぱり大切だったな……」と後悔することも、もしかしたらあるかもしれません。でもそれはそれでいいのではないでしょうか。つねに完璧な選択ができる人なんていない。試行錯誤を繰り返して、自分にとっての「正解」を探していくしかないのです。やってみなければ、正しかったかどうかすらも不明のままです。
失うことを恐れて機会を逃すのではなく、失敗を恐れず捨て去っていく。それこそが、自分が自分らしくあるために必要な生き方の姿勢だろうと思います。その捨て去ったからこそ生まれる余白。その余白があるからこそ新たなチャンスをつかむこともできます。たとえば、本来はあなたにぴったりの機会があったとしても、あなたが忙しそうにしていれば誘われません。知らず知らずのうちに、本来は巡ってくるべきチャンスがあなたの目の前を素通りしているのです。最悪なのは失うことを怖れるあまり、「無駄なもの」どころか、「害あるもの」まで手元に残してしまうケースです。たとえば、
パワハラ上司のもとで働き続ける。
ちょっと苦手な友人とのつき合いをダラダラ続ける。
やりたいことがあるのに、いまの生活水準にこだわって嫌な仕事を続ける。
ほぼ使わないサブスクサービスにお金を払い続ける。
気兼ねや遠慮、見栄に引きずられて、余計なことに多大な労力を費やす。それはいちばん大切なはずの自分の人生を丸ごと捨てているようなものです。もちろん生きていれば、誰しもさまざまな事情を抱えます。子どもを養うため。親の介護のため。そうしたやむを得ない事情で、不本意な仕事や人間関係を続けざるを得ないこともあるでしょう。それはそれです。子どもを大切にする。親を大切にする。そこには不本意な現状を耐え忍ぶだけの意味、価値があると思います。すべてが無意味だと言いたいわけではありません。
でもただの惰性で嫌なことを続けてはいけない。それは人生の浪費でしかない。全力でその状況から脱するべきです。かりに「やはりあれは自分にとって大切なものだった」とあとで気づいたならば、その経験も重要な学びのひとつ。心配しなくても大丈夫。人生は何度でもやり直しがききます。やり直しがきかない人生なんて僕は知らない。ふたたび大切なものを手に入れることだってきっとできるはずです。
* * *

人生は、捨て。自由に生きるための47の秘訣
川原卓巳
徳間書店 1,760円
川原卓巳(かわはら・たくみ)
プロデューサー。
1984年、広島県生口島生まれ。大学卒業後、人材系コンサルティング会社に入社し、のべ5000人以上のビジネスパーソンのキャリアコンサルティングや、企業向けのビジネス構築・人材戦略を手がける。2013年に同社を退職し、近藤麻理恵のマネジメントと“こんまりメソッド”の世界展開をプロデュース。近藤の著書『人生がときめく片づけの魔法』シリーズを世界累計1400万部の大ベストセラーに導いた。2016年に活動拠点をアメリカに移し、「KonMari」ブランドの構築をさらに拡大させるとともに、日本発コンテンツの海外展開にも注力。2021年公開のNetflixオリジナルドキュメンタリー「KonMari “もっと”人生がときめく片づけの魔法(Sparking joy with Marie Kondo)」でエグゼクティブプロデューサーを務め、デイタイム・エミー賞を受賞する。2023年、「川原卓巳 プロデュースの学校」を設立し、グローバルに活躍するプロデューサー人材の育成に取り組んでいる。著書に『Be Yourself 自分らしく輝いて人生を変える教科書』(ダイヤモンド社)、『川原卓巳 プロデュースの学校〈上・下〉』(匠書房)。YouTubeチャンネル『川原卓巳のオモテでする裏側の話』を配信中。
