取材・文/ふじのあやこ
昭和、平成、令和と時代が移り変わるのと同様に、家族のかたちも大家族から核家族へと変化してきている。本連載では、親との家族関係を経て、自分が家族を持つようになって感じたことや、親について、そして夫や妻、子どもについて思うことを語ってもらい、今の家族のかたちに迫る。
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株式会社ビースタイル ホールディングスが運営する「しゅふJOB総研」では、「世帯年収とゆとり」をテーマにアンケート調査(実施日:2024年7月25日~2024年8月1日、家周りの仕事について「同居家族はいるが主に自分が担当」または「同居家族と自分で概ね平等に担当 」のいずれかを選択した420人、インターネット調査)を実施。「今あなたのご家庭は、家計にゆとりがありますか?」との問いに対して、ゆとりがあると回答したのは27.1%となった(十分ゆとりがある2.6%、どちらかといえばゆとりがある24.5%)。一方、ゆとりがないと回答したのは65.5%だった(どちらかといえばゆとりがない34.5%、全くゆとりがない31.0%)。
今回お話を伺った由美佳さん(仮名・44歳)は、自身は標準家庭よりもやや裕福な家で育ったと思っていた。しかし、父親の転職をきっかけに家計のゆとりはなくなっていたという。そのことに気づいたのは由美佳さんが大人になってからだった。
避暑地の高級ペンションに泊まることが毎年恒例の家族行事だった
由美佳さんは、両親と3歳上に姉のいる4人家族。実家は地方都市にある分譲マンション。由美佳さんが暮らす地域は団地などが多く、10階以上あるマンションは当時少なかった。家族は由美佳さんが小学校に入学する前にその新築マンションに引っ越ししてきており、同じマンション内には同じような家族構成の人たちが多かったという。
「隣の部屋には同い年の女の子がいて、その子と仲良くなっていつも一緒に遊んでいました。私はその地区の市立の小中学校に進んだのですが、隣の女の子はエスカレーター式の私立のお嬢様学校に進学していました。当時は何も感じなかったけれど、隣の家は私の家より裕福だったんだろうと今ならわかります。その家には、すごく賢そうな鳥のペットがいたり、おやつが豪華だったので」
由美佳さんの家はお盆の時期には家族揃って旅行に行くことが決まり事になっていた。旅行先は国内ばかりだったが、避暑地にあるペンションに泊まることが多かったそう。
「交通の便が悪く、森林をひたすら歩いて向かうような場所にある別荘のようなペンションに泊まることが多かったです。そこはあえて最低限の電気ぐらいしかなくて、自然の音を聞いて過ごすというところでした。子どもの頃はそんな魅力がまったくわからなくて、テレビでアニメが見られないことがとても嫌だった記憶が残っています。おそらく父親の趣味だと思います。やたら不便な場所が多かったのは」
そんな生活が変化したのは、姉が地方の大学に進学するために家を出たとき。当時思春期だった由美佳さんは友だちと遊ぶほうが楽しかったこともあり、旅行がなくなったことをすんなり受け入れる。旅行が中止になった理由として父親が転職したと聞かされたが、そのこともまったく気にしていなかったという。
「姉が家を出たのと同じタイミングで家族旅行がなくなりました。そのときの理由として、母親から父親の仕事が変わったことを聞かされたんです。でも、当時の私からしたら、朝にスーツ姿で出て行って、夜に帰ってくるといういつもと変わらない父だったので、父の仕事が変わったことなんて何も気にしていませんでした。転職前にどんな仕事をしているのかも知りませんでしたし」
【子どもが巣立った後すぐに父方の祖母と同居。次ページに続きます】