マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。今回は、識学的観点から「レジリエンス」を学びましょう。

「レジリエンス」とは、逆境や困難な状況に直面しても、柔軟に対応し、立ち直ることができる力のことを指します。個人、企業がレジリエンスを高める方法を「識学マネジメント」の観点からお伝えします。

危機・困難を捉える“意識”づくり

コンサルタントである私が最初にお伝えしていることの中に、「識学はマネジメント理論であるが、魔法ではない」ということがあります。識学の書籍を読んでもらえば、翌日からスタッフ全員が突然変わる、ということはありませんよ、ということです。

学んだことを「実行して、すぐに成功する」ではなく、学んだことを「挑戦して失敗を繰り返す」こと、その反復で意識が変わり、思考が変わり、徐々に出来上がってくるものです、としております。ビジネスに限らず、スポーツや勉強、料理なども同じことですし、当たり前のことかもしれません。

そのため、マネジメントとして必要な心構えは、「どれだけ失敗する(させられる)土壌があるか」ということです。言い換えると、危機・困難は成長するためのチャンスである、という意識が前提としてあること。

識学はまさに危機・困難にあえて向かって、正しい意識で捉えるための「レジリエンスを高めるメソッド」であると言えます。

まずは反復をさせればいい?

レジリエンスを発揮するためには、以下のような要素が重要と考えます。

1.PDCA(PlanDoCheckAction)の習慣

予定(Plan)したことが想定通りにいかないことがあるかもしれません。困難、逆境に遭遇しても、まず期日までの結果にたどり着く(Do)ことに集中し続ける習慣作りが必要です。週次会議、日報を型通りに管理(Check)を繰り返すことで、不足を認識し、改善を重ねた行動(Action)ができます。

2.不足を認識させる

何が原因で未達になったのか、その「不足」を認識する必要があります。環境や市場、人手不足など様々な外的要因もあるかもしれませんが、そのような言い訳を認めてあげることは成長につながりません。自分の能力不足、行動不足など、次にできる方法を探す力をつけさせないと、結果的にその部下は評価されないのです。上司側の役割は成長の機会を奪わないように管理することです。

3.上司との位置関係の明確化

逆境に遭遇しても、部下が自分で考えたことを好き勝手に実行してはいけません。「結果がでれば、それでいい」という思考になってしまいます。上司へ確認し、上司が承認したことを実行する。上司、部下、それぞれ責任を果たすという関係性を明確にすることで、自己評価や無駄な感情を排して上司の指示に従って行動することができます。正しいチームワークともいえます。

4.変化への対応力

世の中は常に変化しています。環境の変化を柔軟にとらえ、新しい行動の変化を起こすことができる対応力が必要です。朝礼暮改という言葉がありますが、集団は常に変化することを求められています。「また変わった」「どうせすぐに」などと思うかもしれませんが、「変える決断をすること」もマネジメントの責任です。

以上のように、レジリエンスを発揮するためには、反復させるだけではなく、部下側をどれだけ「集中させる」ことができるかが上司側のマネジメント力で重要だと考えられます。

常に経過を見てあげる必要があるか?

マネジメントが部下の集中力を管理すべきとなると、常に部下を見ておかなければならないという発想になりがちです。

しかし、常に指示される、介入されると、部下側は「指示待ち」「考えなくなる」という状態になり、マネジメント側も時間が足りなくなります。逆境や困難を迎えた際に「最近は見てくれなくなった」、「指示が来なくなったので、やらない」などの言い訳を生んでしまうことも想定されます。お互いにとって「独り立ちした」という基準設定を作るための具体的な訓練例は下記の通りです。

1.PDCAの反復
・部下に対して、「明確な数値目標を設定し、期限を定めて」達成を意識させる
・目標未達の場合は、その原因を分析させ、達成できるための次の行動変化を考えさせる作業を繰り返し行う

2.不足を認識させる
・目標未達の際に、感情的ではなく自動的に評価が下がることを明確に伝え、組織に所属する以上は、「他のスタッフを含めて平等である」ことを示す
・部下が自ら行動を変化する考えになるよう、やり方を指示するのではなく、待つこと

3.上司との位置関係の明確化
・上司が部下に対して「完全な指示権限、かつ結果の責任を持っている」ことを示す
・部下は上司の指示に従うという関係性を強化し、逆境に遭遇しても、上司の指示に従って行動できるよう訓練する

4.変化への対応力の育成
・できる部下においても「新しい取り組み」を課し、その都度、部下の行動変化を促す
・変化への恐怖を感じさせずに、柔軟に対応できるよう、部下の能力に合わせて訓練する

これらの訓練を通して、部下のレジリエンスを高めていくことが重要です。

上司は、部下それぞれの能力や状況に合わせて、適切な難易度や期間設定を行う必要があります。また、上司自身の責任を果たすために部下に指示するので、必然的に惑わせないポジション取りが必要です。「上が言うから」「私も違うと思うのだけど」などのようなワードは部下を惑わせてしまいますのでNGです。

結果を管理し、評価を得られるための「会議運営」

変化への対応力を評価・管理する方法として、識学理論の観点から「会議運営」の重要性をお伝えしております。決して長い会議や回数を多くする訳ではありません。

会議においては、最終的なゴールは部下が評価を得られる結果を得るためのものです。変えられない「過去」の話は原因分析にとどめて、常に「未来視点」になるようなマネジメントを心がけてください。ポイントは以下の通りです。

・すべてのスタッフが最初からできる訳ではありません。「できなかったことが、できるようになる」マネジメントを行うために、まずはスモールステップでも構いません。期日までに完了できそうか、を上司が判断しながらスピードを調整することです。

・上司からの指示に対して、部下側が自分で考えた行動で変化を起こしているかを確認します。行動の変化は部下側から上がってくる必要があります。

・部下が結果を出せないことで評価の低下や、組織からの排除されるかもしれない、といった必要な恐怖を感じ取れているかを確認します。必要な恐怖を認識できている部下は、変化への対応力があると評価できますが、一方で「未達でもしょうがない」、「自分のポジションは確立されているはず」というような恐怖を感じ取れていない部下は、変化への対応力が不足していると判断できます。

会議運営で必要なことは以上の通りです。未達になりそうな場合は「必要な権限はないか?」、「集中できる目標の再設定」を確認することも忘れないでください。期日を迎える前の「集中力の低下」、や「言い訳探し」を排除することにつながります。

恐怖には「必要な恐怖」と「不必要な恐怖」がある

逆境や困難を迎えた際に「恐怖」を感じることは、人間として当たり前の感情です。一方で、この恐怖を感じられていない場合には、組織としては「居心地がいいだけ」「緊張感がない」という、解決が難しくなる問題が遅かれ早かれ出てくると言えます。

マネジメントは、困難を乗り越えた先に得られる成長実感を伝えることが必要です。そのため、成長において必要な恐怖と不必要な恐怖、その仕分けをマネジメントが明確にしてあげればよいのです。

飲みに行って盛り上がって解消する、愚痴を傾聴して元気づける、ご褒美をちらつかせて……など様々な方策もありますが、成長できる環境を与え続けるしかありません。 恐怖を感じない人、目標を簡単にできてしまっている人には、さらにワンランク上の目標設定を行うことがマネジメントの仕事であることを忘れないでください。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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