最近は随分と便利な世の中になったもので、スマートフォンが通訳をしてくれる時代になりました。若い頃は流暢に英語を使えるようになりたいと思って、一生懸命勉強したことが懐かしく思い出されます。そんな若い頃を思い出しながら、もう一度英語の勉強をしてみるのもいいのではないでしょうか?
さて、今回紹介するのは「happy as a clam」です。
目次
「happy as a clam」の意味は?
「happy as a clam」の由来と「貝」のイメージ
「happy as a clam」ってどんな時?
最後に
「happy as a clam」の意味は?
「happy as a clam」を訳すと、「clam」はハマグリやアサリなどの二枚貝、「as」は(~のように)ですが……、そこから転じて
正解は……
「とても幸せ」という意味になります。
「happy as a clam」とは、「とても幸せで安心している状態」を表すフレーズです。『ランダムハウス英和辞典』(小学館)には、「((米話)) とても喜んで[満足して]」と書かれています。
例えば、
「She was happy as a clam after a long day at the park. 」(彼女は公園で一日過ごした後、とてもうれしそうだった。)
というように使われます。
「happy as a clam」の由来と「貝」のイメージ
この表現は、19世紀初頭のアメリカから広まったとされています。当初は「Happy as a clam at high water.」(満潮時のアサリのように幸せ)というフレーズでした。
満潮時の水位が高い時、貝は水の中にいます。その間は捕食者から身を守りやすく、静かで安全なひとときを過ごします。このイメージから、安心して幸せな様子を表現するようになったようです。今では、フレーズの前半部分「happy as a clam」が広く使われています。
さまざまな種類の二枚貝は、食において重要な役割を担っています。海の生き物たち、たとえば、アザラシやセイウチ、タコなど。また、鳥類にとっても貝は貴重な食糧です。日本ではアサリ、ハマグリ、シジミが一般的に食されていますね。ヨーロッパ、アメリカ、インドなどでもさまざまな種類の二枚貝が料理に取り入れられています。
こうした背景から、満潮時に敵から逃れ、静かに穏やかな時間を過ごす貝の様子を想像して、「happy as a clam」というフレーズは、心配のない、幸せな状態をあらわすようになったようです。
「clam」を使った他の表現も紹介
一方で、同じ「clam」(二枚貝)を使った、「clam up」という表現もあります。これは(黙り込む、口をつぐむ)という意味です。また他にも似たフレーズに「shut up like a clam」(貝のように黙る)もあります。どちらも「happy as a clam」の心配のないとても幸せな様子とはずいぶん異なります。
たとえば、
「He has been shut up like a clam ever since he failed his exam.」(彼は試験に失敗して以来ずっと黙っている)
というように使われます。
日本語にも、「貝になる」という似た表現がありますね。これは、「かたく口を閉ざす、黙る」という意味で、比喩的に用いられています。
一方で、中世以降の日本では、ハマグリは2枚の殻がぴったりと合わさり、他の殻とは合わない特性があることから、夫婦円満の象徴とされていました。江戸時代に大名の娘が嫁入り道具として持参した貝桶(貝合わせ遊びの貝を入れておくための入れ物)は、現在でも雛人形の飾り道具として目にすることがあります。
他方で、ハマグリの夫婦円満のイメージとは反対に、百人一首では報われない恋を表現する暗喩として登場します。「貝」と「甲斐」を掛け合わせ、恋をしても「甲斐がない」という意味でたびたび詠まれていました。
「幸せ」と、殻を閉じることによる「沈黙」という相反するイメージが共に「貝」にあることは、おもしろいですね。
「happy as a clam」ってどんな時?
先日、あるユニークな図書館でひとときを過ごしました。そこでは入館時に携帯電話の電源を切って棚に預け、鍵をかけてから図書室に入ります。
館内では美しい装丁の本に見惚れたり、いつも読まないジャンルの本を手に取ったり、窓の外に広がる景色を眺めたりしました。本の中に引き込まれ、心が自由に飛び回ります。気づけば自然と微笑んでいました。
まさに「happy as a clam(貝のように穏やかな幸せ)」なひとときでした。静かな空間で本と向き合う時間は、思っていた以上に豊かなものとなりました。
最後に
「clam」から生まれた「幸せ」と「沈黙」のイメージ。英語や日本語以外のことばには、どんな響きやイメージがあるのだろう? そんなふうに、世界中の言語が奏でる音色や、言葉の裏に隠れた意味を想像してみたくなりました。
忙しい日々の中で、みなさんそれぞれが 「happy as a clam」 幸せに包まれる瞬間と出会えますように。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com