文/鈴木拓也
長く生きて医療機関に通う回数が増えてくると、医者も千差万別であることが分かってくる。
なかには、首を傾げたくなる医者もいるし、腕は立つが苦手な医者もいる。病気さえ治ればいいとは思っても、やはり反りの合う医者に診てもらいたいのが本音である。
そうした医者の見つけ方、付き合い方のコツを教えてくれるのは、秋津医院の秋津壽男院長だ。秋津院長は、著書『医者とのつきあい方大全 医者のトリセツ』(春陽堂書店 https://www.shunyodo.co.jp/shopdetail/000000000904/)のなかで、さまざまなアドバイスをしている。
今回は、その一部を紹介しよう。
もしも主治医を変えたいのなら
通院先は近所だし、設備も整っているので不満はないが、理由があって主治医を変えたい場合、どうすればいいのだろうか?
相手も人間。面と向かって、「別の先生にしたい」と言ったら、角が立つ可能性はある。
秋津院長は、外来診療医担当表をチェックして主治医がいない日に行き、受付で次のように切り出すことをすすめる。
「いつも診てくださる先生が今日いらっしゃらないのは分かっているのですが、ちょっと体調がすぐれないので診ていただけますか」
病院側としては、担当の医者がいないからとそれを断ることはできないので、いつもとは別の医者が対応にあたる。もしその医者がよければ、以後は新たな主治医として担当してくれる。
仮に前の医者にそのことが伝わっても、「ちょっと風邪っぽくて病院へ行ったら、先生のいらっしゃらない日で……」などと答えれば問題なしだという。
あるいは薬を変えたいのなら
では、主治医ではなく、処方されている薬を変えたい場合は、どうすればいいのだろうか?
患者側として薬を変えたくなる理由は主に、「薬が効かない」のと「週刊誌にこの薬は危ないと書かれていた」が主なのだそう。
服用を続けても効かないのであれば、ストレートに担当の医者に言ってかまわないという。もう1つの理由の場合も、正直に言って差し支えないが、伝え方はちょっと工夫する。
「週刊誌にこの薬のことがいろいろと書いてあって心配になってしまったので、変えてもらうことは難しいですか?」
というふうに。
他方、変えるのではなく、減らすあるいはやめたい場合は、ちょっと注意が必要。医者としては「あなたのカラダのためを思って処方しているのに、それもおかまいなしだなんて……」と受け取られかねないからだ。
ただ、最近は高齢者の多剤併用が問題になっているし、厚労省の指導方針も薬を減らす方向へと舵を切っている。
そこで、言い方としては、例えば、
「今、私は朝八個、昼三個、夜二個薬を飲んでいるのですが、こんなにたくさんあると飲むのも大変なんです。少し減らすのは難しいですか?」
「少しの間、血圧の薬をお休みしたいのですが、どうでしょうか?」
などと、しかとした理由を伝えることで、医者は納得し、むしろ協力的になる。
ほかの医者の悪口を言ってはいけない
秋津院長は、「医者が一番嫌がる」患者の言動についても述べている。
やはりというべきか、上で述べたような意思疎通もなく、勝手に薬を減らしたり中断したりというのは、筆頭に挙がる「NG行為」。この点は、心しておこう。
ちょっと意外に思えるのが「よその医者の悪口を言う」。実は、意外に多いのだそうだ。
悪口を聞かされる医者としては、「よその病院ではウチの悪口を言っているに違いない」と、どうしても考えてしまう。それだと、コミュニケーションは疎遠となり、治療の質にも影響しかねない。患者としては、一時的な鬱さ晴らしになったかもしれないが、結局は自分が損してしまう。
ということで、他院の悪口は「厳禁」と秋津院長は諭す。逆に「あそこの整形外科、すごく感じが良かったですよ」といったほめ言葉なら大歓迎。これなら、医者に嫉妬の念をわかせることもなく、むしろ気分がよくなって、互いの関係も良好になる。
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本書を読むと、医者との円滑なコミュニケーションが意外なほど大事で、それが治療の良し悪しにも関わってくることがよくわかる。今の主治医と、何となくぎくしゃくしていると感じているなら、一度読んでみることをおすすめしたい。
【今日の健康に良い1冊】
『医者とのつきあい方大全 医者のトリセツ』
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。