九州と同じほどの面積で、東シナ海の南に位置する台湾は、大きな魅力を秘めた旅先だ。特に開府400年に沸く台南に注目。多様な文化を探訪する旅に出かけたい。

1665年の創建。台湾で最も古い台南の孔子廟。礼器、楽器、書籍などを収めた大成殿の修復プロジェクトにも傅さんは関わった。

台南の古跡保存運動や修復工事の先頭に立つ行動派の建築史家・傅朝卿さんは大南門の傍らで生まれ、忠義国小、建興国中、台南一中、国立成功大学を卒業。「生まれた場所も学校もすべて史跡指定されている」と語るほど、台南の歴史とともに人生を歩んできた。

「路地裏を歩きましたか? 裏通りは明代、清代、日本統治時代へつながるタイムトンネルです。中国人だろうが日本人だろうが、ノスタルジアに浸れますよ」

複雑に入り組んだ路地は今も古都の生活を支える。

明清代、侵入者の防止目的でわざと狭く複雑に造られた路地。静かに歩こう。

2019年、1060ページに及ぶ労作『台湾建築文化史』を上梓し、建築の分野から台湾の歴史と文化を俯瞰したが、この著作でも、古都の歴史文化遺産が詳細に語られている。

長年の研究をまとめた『台湾建築文化史』。図説が豊富。1800元(台湾建築史学会刊)。ほか著書多数。

傅さんは、府城400年の節目について感慨深げに話す。「2024年は400年目の到達点でもあり、次の400年への出発点でもあります。人類史にとって400年は瞬きほどの時間ですが、台湾の歴史にとってはとても長く、同時に重要な意味を持っています」

そして次のように続ける。

「台南は、古都として貴重な文化遺産を守りつつも、新たな発展を導入しなくてはなりません」

今後、台南にはどのような役割が期待されているのだろうか。

「つまり、より文化的で、持続可能な都市を目指すということです。それを示すことができれば、台南での活動が、未来への推進力の役割を果たすことになるでしょう」

故郷の台南を世界に発信する建築史家は、史跡の数々を慈愛のこもったまなざしで見つめる。

傅朝卿さん(建築史家)

建築史家。1979年、国立成功大学建築学系卒業。1983年、米国ワシントン大学、1990年、英国エジンバラ大学にて博士号を取得。長年、国立成功大学で教鞭を執る一方、台湾の建築史を世界へ発信する。

後ろの忠義国小学校の前身は1940年創立の忠義国民小学校。自身の卒業校でもある。「未来につなげるデザインと戦前の建物を合体させて修復しました」と語る傅さん。
広大な敷地は東側が学問の府である「国学」、西側が孔子を祀る「文廟」の区割りとなっている。往時の教室である明倫堂は右手(東側)にある。

取材・文/平野久美子 撮影/宮地 工

●1元(NT$)は約5.2円(両替時・2023年11月20日現在)

※この記事は『サライ』本誌2024年1月号別冊付録より転載しました。

【完全保存版 別冊付録】台湾の古都「台南」を旅する

72ページ総力取材。完全保存版別冊付録。
『サライ』2024年1月号【別冊付録】は『台湾の古都「台南」を旅する』。

 

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