九州と同じほどの面積で、東シナ海の南に位置する台湾は、大きな魅力を秘めた旅先だ。特に開府400年に沸く台南に注目。多様な文化を探訪する旅に出かけたい。
台南の古跡保存運動や修復工事の先頭に立つ行動派の建築史家・傅朝卿さんは大南門の傍らで生まれ、忠義国小、建興国中、台南一中、国立成功大学を卒業。「生まれた場所も学校もすべて史跡指定されている」と語るほど、台南の歴史とともに人生を歩んできた。
「路地裏を歩きましたか? 裏通りは明代、清代、日本統治時代へつながるタイムトンネルです。中国人だろうが日本人だろうが、ノスタルジアに浸れますよ」
複雑に入り組んだ路地は今も古都の生活を支える。
2019年、1060ページに及ぶ労作『台湾建築文化史』を上梓し、建築の分野から台湾の歴史と文化を俯瞰したが、この著作でも、古都の歴史文化遺産が詳細に語られている。
傅さんは、府城400年の節目について感慨深げに話す。「2024年は400年目の到達点でもあり、次の400年への出発点でもあります。人類史にとって400年は瞬きほどの時間ですが、台湾の歴史にとってはとても長く、同時に重要な意味を持っています」
そして次のように続ける。
「台南は、古都として貴重な文化遺産を守りつつも、新たな発展を導入しなくてはなりません」
今後、台南にはどのような役割が期待されているのだろうか。
「つまり、より文化的で、持続可能な都市を目指すということです。それを示すことができれば、台南での活動が、未来への推進力の役割を果たすことになるでしょう」
故郷の台南を世界に発信する建築史家は、史跡の数々を慈愛のこもったまなざしで見つめる。
傅朝卿さん(建築史家)
建築史家。1979年、国立成功大学建築学系卒業。1983年、米国ワシントン大学、1990年、英国エジンバラ大学にて博士号を取得。長年、国立成功大学で教鞭を執る一方、台湾の建築史を世界へ発信する。
取材・文/平野久美子 撮影/宮地 工
●1元(NT$)は約5.2円(両替時・2023年11月20日現在)
※この記事は『サライ』本誌2024年1月号別冊付録より転載しました。
【完全保存版 別冊付録】台湾の古都「台南」を旅する