姿勢が腰痛に影響をおよぼす場合があります。
腰痛になりにくい姿勢の基本は背骨のニュートラルポジション。
今回は、前回(https://serai.jp/health/1168532)に引き続きニュートラルポジションを維持するためのエクササイズについて解説します。
前回のおさらい 背骨や骨盤を支える筋肉のバランス
人間の身体は、骨を柱にして筋肉で支えるような構造をして姿勢を保っていますが、とくに重力に対して直立姿勢で身体を支える筋肉を『抗重力筋(こうじゅうりょくきん)』と言います。
抗重力筋は、無意識に姿勢を保持しているときに働いています。
主な抗重力筋には、脊柱起立筋群・腹筋群・腸腰筋・大殿筋・大腿四頭筋・ハムストリングなどがあり、身体の各部前後に張り巡らされ、互いに伸び縮みをしながらバランスを取っています。
とくに背骨や骨盤は、
A.腹筋群・大殿筋・ハムストリンググループ
B.脊柱起立筋群・腸腰筋・大腿四頭筋グループ
の2つのグループで前後のバランスを保っているのですが、この部分のバランスが崩れてしまうと、姿勢に大きな影響をおよぼし、腰痛などの原因になることがあります。
筆者の体感としては、Aの腹筋群・大殿筋・ハムストリンググループが弱ってしまって腰痛をおこしているケースの方が多いように見受けられます。
ニュートラルポジションとは?
背骨やそれを支える前後の筋肉のバランスが整って、良い姿勢を保てる状態をニュートラルポジションと言います。
本記事冒頭の画像(下)の中央が骨盤と背骨(腰椎)の前後のバランスが取れたニュートラルポジション(正常型)、左は骨盤が前傾した反り腰姿勢(骨盤前傾型)、右は骨盤が後傾した猫背姿勢です。
ニュートラルポジションを獲得するためのエクササイズ
ニュートラルポジションを獲得するためのエクササイズとしては、
1)緊張した筋肉をストレッチする
2)弱った筋力を回復するトレーニング
の2つの方向性があります。
今回は弱った筋力、とくに体幹インナーマッスルも含めた腹筋群の筋力を回復し、腰の反りを改善してニュートラルポジションを獲得するエクササイズをご紹介します。
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/)では、腰痛改善の基本エクササイズとして指導をしています。
以下を参考におこなってみてください。
自宅で出来る!腰痛トレーニングDVD(https://re-studio.jp/dvd/)より
※以下の画像では専用のポールに乗っておこなっていますが、床に寝たままおこなっても同じような効果があります。
1.床にあおむけになり両膝を立てた姿勢をとります。
2.そこから腹式呼吸の要領で、鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、口をすぼめて天井に息を吹きかけるようにしっかりと吐き切っていきます。
この時に、おへその下あたり(下腹部)をへこますようにしながら息を吐いていきます。
下腹部をへこますようにしっかりと息を吐ききることで、腹横筋に力が入るようになります。
息を吸うのは軽く、吐くときはお腹の底からしっかりと吐き切るようにしましょう。
3. 息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締める
2ができたら、今度は下腹部(腹横筋)と肛門(骨盤底筋)を同時に締める練習をします。
腹式呼吸で息を吐き切りながら、下腹と肛門を同時に締めるように力を入れてみましょう。
うまくしっかり吐き切りながら肛門を締められると、下腹部に強く力が入り、固くなるのがわかります。
またこの時に背中や腰や脚は力を抜いてください。
背中や腰や脚に力が入ってしまうと、かえって痛みを起こしやすくなりますので注意してください。
4.息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締め、恥骨を引き上げて腰を丸め、床に押し付ける。
恥骨を引き上げるとは、みぞおちの方に向けて腹筋で引き上げるようにすること(下画像オレンジ矢印)です。
これによってとくに下部腹直筋に力が入ります。
すると骨盤は後傾方向に回転します(黄色矢印)が、この動作によって腰の反りを改善し、ニュートラルポジションを獲得、維持できるようになります。
これらのトレーニングを1日30回を目標におこなってみましょう。
いっぺんに30回でも構いませんし、10回ずつ朝昼晩のように分けても構いません。トータルで30回が目安です。
30回以上できるようなら、やればやるほど効果は出ます。
しかし、腰や背中、脚などに余計な力みがあると、かえって痛みを起こすことがありますので、その点はご注意ください。
また効果が出てくるまでには少し時間がかかります。2週間から1か月程度は根気よくトレーニングを続けてください。
このトレーニングをおこなうことで痛みが出る、または痛みのためにこのトレーニング自体ができないようでしたらやめてください。
この記事があなたの腰痛改善の一助になれば幸いです。
以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。
腰痛を解消するためにトレーニングすべき3つの部位とその順番【川口陽海の腰痛改善教室 第120回】(https://serai.jp/health/1149253)
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拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html